金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JULY

28

新聞購読のお申込み

【新春特別インタビュー⑦】大貫工業所社長・大貫 啓人氏「売れるものをつくり、境地まで突き詰めることが大事」

売れるものをつくる 物価の高い国で勝負 境地まで突き詰めることが大事 〜海外展開〜

 1964年生まれ、茨城県出身。大学卒業後、87年大貫工業所に入社。営業で新規得意先を次々と開拓する一方で、得意先とのやり取りを通じて金型技術を身に付け、96年社長に就任。もともとプレス金型の専業メーカーだったが、プレス加工にも取り組み始めた。「技術研究型企業」を目指し、他社では対応できない複雑形状や難加工技術に挑戦している。

 販路、人材、商習慣への対応など、日本の金型メーカーが海外展開する上での課題はいくつもありますが、最も重要なのは、「売れるものを作る」もしくは「売れるものを探す」ことだと思います。当たり前の話ですが、海外展開しても売れるものが無ければ、意味が無いですからね。

 当社は、2017年にスイスの光学機器メーカーから受注を獲得したのを機に、欧州を中心に海外展開を進めています。徐々に受注を増やし、現在の海外売上は、月数百万円まで拡大しました。足元でもEV関連の部品や音響関連機器などの引き合いがあり、開発が進んでいます。

 最初のきっかけは、10年ほど前に出展したドイツ・ミュンヘンの展示会です。ブースには、強みである自動車向けのコネクタ部品や深絞り部品などの精密プレス加工品を展示しました。すると、多くの人がブースに足を止め、「これをプレス加工できないか」と図面を見せながら聞いてきたのです。当社の技術が売れると感じた瞬間でした。

 当社は、もともと「技術開発型企業」を目指して、精密プレス金型の設計・製作、プレス加工を手掛けてきました。これまでにも切削からプレスへの工法置換を可能にする独自技術を開発し、大幅なコスト削減やリードタイム短縮を実現しました。高性能なプレス加工機や金型加工機はもちろん、測定機や検査機器など試験設備も充実させ、クラックや組織破壊のメカニズムなどをタイムリーに解析することができる体制を整えています。

 欧州に進出して特に感じるのは、機械加工の技術は圧倒的ですが、プレス加工はそうでもないということ。当社の研究開発力や技術力は、欧州でも通用するし、勝ち目があると感じています。

 ただ、これは自分たちで海外に出て、実際の反応を見ないと分からないことです。その一つとして海外の展示会に出展するというのは有効な手段です。それも共同ではなく、単独で。その方が市場の反応が掴めるし、何が良くて何がダメなのかがよく分かります。

 もう一つ、当社が海外展開で大事にしているのが、日本よりも物価の高い国や地域で勝負するということです。欧州では仕事の単価が日本の2~5倍。最初に欧州を視察したときも驚きました。従業員2人の加工メーカーが、最新鋭のマシニングセンタを5台も設備していたのですから。そうした投資が可能なのは、収益性が良いからに他なりません。今後は欧州のさらなる拡大に加え、北米展開も検討しています。

 海外展開も技術開発も成功するまでにそれなりの時間がかかります。当社も海外で初めて受注するまでに6~7年かかりました。ここで大事なのは、失敗してもやり続けることです。境地まで突き詰めて他ではできないものを身に付けないと強みにはなりません。逆にそれができれば、世界でも戦えるはずです。

金型新聞 2021年1月10日

関連記事

新日本工機・中西 章社長「ものづくり力向上を支援」

「30年間お客様とものづくりを改善し続けられる存在でありたい」—。そう話すのは一昨年に新日本工機の社長に就任した中西章氏。ライフサイクルの長い大型機械が強みなだけに、「長期間にわたって、顧客のものづくりをサポートするのは…

【この人に聞く】テクノア社長・山﨑耕治氏「システムにおける中小企業の専門医として導入検討時の不安を取り除く」

 一品一様の世界である金型産業は生産や技術面で人に頼ることが多く、デジタル化が喫緊の課題。そこで生産管理システムで生産性向上や経営のサポートに取り組んでいるのがテクノア(岐阜県岐阜市)だ。金型など中小企業向けで多品種少量…

【金型応援隊】ジーシステム 改善重ね導き出した生産システム

多台持ちで生産効率化 ジーシステムはプレス金型用プレートなどの研磨加工を手掛ける。車の電動化や5Gの広がりを背景に電子部品向けの需要が拡大している。於保信一郎社長は、「さらに効率化して生産性を高め、需要に応えていきたい」…

鋳造に独自の新工法
マツダ

特集 次世代車で変わる駆動部品の金型鋳造に独自の新工法  次世代自動車の技術は電動化に限らない。注目されるのがエンジンの進化だ。燃費性能を追求する新型エンジン「スカイアクティブ」。多くの自動車メーカーが電動化に力を入れる…

【インタビュー】リヒト精光 鋼に命を吹き込む技術

鋼に命を吹き込む技術 『鋼に命を吹き込む』を合言葉に、プレス金型やプラスチック金型、ダイカスト金型ほか、半導体向け金型など幅広い型種の長寿命化に貢献する技術集団がリヒト精光(京都市南区、075-692-1122)だ。同社…

トピックス

関連サイト