長年、工作機械や放電加工機メーカーのOEMやODMを手掛けてきた東洋機械製作所。鋳造から機械設計、製作、塗装、組立までを手掛ける能力の高さから多く機械メーカーの製品の設計や製造を請け負ってきた。そんな同社が35年ぶりに自…
【金型の底力】サムテック 結果や成果を出し切ることが重要
熱間鍛造の一貫生産 社員と共に成長へ


「挑戦は常に行っているが、挑戦すると失敗もある。それを皆で共有し、次へ進むことが重要だ」と話すのはサムテックの阪口直樹専務。熱間鍛造事業を主力に、型設計・製作、鍛造ライン(羽曳野工場など国内14ライン・海外5ライン)を持ち、月間420万ピースの鍛造品を生産。主に、ホイールハブユニットベアリングや四輪駆動用カップリング、クラッチハブやプーリーなどトランスミッションから伝導装置、足回り部品の丸物に特化した鍛造品を手掛け、年間生産量は8万トン(国内)、売上高は230億円(海外含む)を超え、自動車産業を支える企業の1つだ。
同社の特長は自社開発した閉塞熱間鍛造などの精密鍛造技術で、ホイールハブユニットベアリング外輪の鍛造では外バリを出さず、材料歩留まりを向上させ(10~15%)、大幅にコストダウンするなど技術の開発に注力。直近はプロペラシャフトやハブユニットベアリングの仕上げ切削を行い、型製作から鍛造、仕上げまで一貫生産体制を構築。これまで見えなかった鍛造の課題解決に取り組み、自動車メーカーなどから受注も増加。プレス機の増設や金型設備の強化など成長に結びつけている。
「自動車業界は休むと誰かが抜いていく。常に新製品や改善に取り組まないと続けられない」と阪口専務は業界の厳しさ、向上心の重要性を語る。熱間鍛造の大きな課題は金型費と型寿命。寿命を延ばすには鍛造時の荷重軽減が1つの方法で、熟練技能者の絶妙な荷重加減や金型の工夫が大きい。「荷重が20tに変われば型寿命も変わる」と、解析技術の活用や金型加工の技術強化を図る。

そこで、ジェイテクト製マシニングセンタを計13台導入。最適な工具選定や切込み量を増やすなど加工パスの見直し、多数個を同時加工できる治具開発を行ったほか、機上の工具計測も取り入れ、工具の折損検知・摩耗状況を把握し、加工の安定化を実現。休日の無人稼働やダウンタイム削減など生産性向上や稼働率30%向上を目指す。さらに、複雑な金型原価管理のシステム構築や5軸加工機導入も視野に入れる。
「結果や成果を出し切ることが重要。その力がまだ弱い」と阪口専務はKPIをベースに、人材育成プロジェクトを始動。部門別損益や製造原価低減、型寿命向上など製造、営業、業務担当の各自に目標を持たせ、面談しながら成果が出せるようにフォローする。例えば、4S活動で改善を行うも、時間が経つと元の状態に戻ることはよくあるが、目印による場所の指定など考えなくてもできる仕組みが重要だ。「大事なことは問題の本質を見極めること。人ではなく解決するシステムがカギだ」と細かい所まで目を配り、仕組みで改善方法を探す。「現状を否定し、課題を見つけ、解決する好循環を作れば、モチベーションも高まる」と全社員のチームワークを結集することが次の成功へ導く原動力となる。「製造業は人が主役。少し前にあった納期問題も全社員が情報を共有することで段取りも良くなり改善してきた。社員の総合力を出すことができれば、出来ないことはない」と中期経営計画では売上高250億円を掲げ、活気ある会社を目指す。
金型新聞 2021年10月10日
関連記事
自分の強み生かす道を 本田技研工業 完成車新機種推進部 主任技師 田岡 秀樹氏に聞く 高級車か、低価格車か、2極化も 金型なくして新車開発ならず 自動運転、ライドシェア、電気自動車(EV)の進化―。自動車業界では急激な変…
樹脂やプレス金型の製作から少量の成形まで手掛けるハマダ工商は今年2月、事業再構築補助金を活用し、金属3Dプリンタを導入した。水管を自由に設計した冷却効果の高い金型で、反りを抑えた防犯レンズカバーの成形品を提供するのが狙い…
電動化に3つの方向性 電動化やギガキャストで変わる自動車づくり。元本田技研工業で型技術協会の会長も務めた田岡秀樹氏は「自動車業界はゲームチェンジの局面を迎えており、破壊的なイノベーションが起きている」とみる。一方で「中小…
金属3Dプリンタで造形した金型部品のトラブルを分析・解決する「診断士」のような業務を担当する。珍しいトラブルほどテンションが上がるそうで、「難しい問題を解明できた時の達成感が何よりも気持ちがいい」。 大学では金属材料を研…


