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【金型の底力】チヨダ工業 豊富な資源を活用し、新たな価値を創出
木質流動成形でSDGsに貢献 技術で差別化を図る
「木質流動を世の中に広め、木材が樹脂やアルミに変わる新たな材料として注目され、持続可能な社会作りに貢献したい」と話すのはチヨダ工業の早瀬一明社長。SDGsやカーボンニュートラルなど地球環境を守るために、世界的に資源の有効活用や新たなマテリアルの開発が進めれている。日本の森林面積は国土の67%を占めており、豊富な資源を活用し、新たな価値の創出が期待される。
技術で差別化を図る
同社は自動車のシート部品向けのプレス金型を主力に、米国、ベトナム、タイに工場を設けるなどグローバルに展開し、世界14カ国に金型を供給。
シート部品は昨今、軽量かつ高強度が求められるため、ハイテン材を使用するが、スプリングバックが大きく、金型製作が難しいとされている。そこで同社は高い加工技術に加え、解析技術などデジタル化に取り組み、何度も試作型で検証を重ねたことで、ハイテン材のプレス成形における金型技術を確立。「当初は職人のカン・コツに頼っていたが、デジタル化を進めたことで、他社との差別化が図れた」と、直近はウルトラハイテン(980MPa)に取り組み、受注も好調だ。
技術革新はさらに進む。2012年、松や竹など様々な木材をプラスチックのように自在に変形できる「木質流動成形」を、2012年から産業技術総合研究所・木質資源複合材料グループと共同研究し、世界初となる木材の製品化に成功した。「産総研から共同研究の打診があり、面白そうだと参加した」と早瀬社長。その技術を活用し、自社製品の弦楽器専用スピーカーの「ヴィヨーム オマージュ」や将棋駒「黒朱流」(文本力雄氏監修)の販売を開始。著名なバイオリニストや棋士からも注目を集め、自動車部品の一部にも活用を模索。
木材を成形することは一般的に困難だが、木質流動成形は木材に含まれるリグニンと呼ばれる物質を熱で柔らかくすることで組織を滑り動かせるようにし、金型に材料を投入、プレス成形することで、前述のスピーカーや将棋駒のほか、ランプシェードなど自在に形状を作り出すことが可能になる。高品質な製品を作るには高精度な金型はもちろん、プレスの加工条件や熱や冷却といった温度コントロールも肝になる。「そこがメーカーのノウハウ。現状はサイクルタイムに課題が残るが、研究を進め、生産性も高めていきたい」。
昨年はカーボンニュートラルが広まったことで様々な方面から木質流動成形に熱い視線が注がれている。今後について早瀬社長は「化粧品や時計、建築など自動車以外からも試作の依頼が来ている。今後はそうした案件に応えつつ、現状は最大300角ほどの製品しか作れないが、2年内に1m程の製品まで出来るように励みたい。この技術は端材といった未利用材も活用できるため、資源の有効活用に直結する」と話す。同社のスローガンは『知恵は無限にある、知力を結集させミライに立ち向かおう』。今がすべてではなく、次の課題へチャレンジは続く。
会社の自己評価シート
スーパーハイテン材向けの金型や新しい技術である木質流動成形など技術力や設備力に9点、人材力、チャレンジ精神に8点と高評価。また、営業力や収益力、未来に投資する力なども良し。
会社概要
- 本社 :愛知県愛知郡東郷町春木岩ヶ根1
- 電話 :0561-38-0005
- 代表者 :早瀬一明社長
- 設立 :1962年
- 従業員 :90人
- 事業内容:プレス金型の設計・製作及び試作品、木質製品の開発。
金型新聞 2022年1月10日
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