金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

18

新聞購読のお申込み

【特集】日本の金型業界に必要な4つの課題 -デジタル化-

PART2 打田製作所 社長・打田尚道氏に聞く「デジタル化」

トップの判断が必要不可欠
 業務フローを簡素化し、
  現場が楽になること目指す

なぜ金型企業がデジタル化を進める必要があるか。ここでいうデジタル化を「人に依存していた情報や知識、ノウハウをデジタルデータ化すること」と定義した上で述べると、労働生産性を高め、競争力や付加価値、生活環境を向上させることが目的だと思います。

当社では2000年頃からデジタル化に取り組み始めました。それ以前から事務処理用パソコンをネットワークにつなぐといった取り組みは進めていたのですが、本格化したのは、インターネットが登場してからです。

取り組んだのはウェブシステムを活用したデータベースシステムを自社開発し、指示書や図面、部品発注など金型づくりに必要な情報を全て社内で共有できるようにしたことです。日々の引き合いや受注、生産状況などがリアルタイムで見られるため、紙で情報を管理していた時に比べ、格段に業務効率が向上しました。加えて、見積精度の向上や問い合わせへのレスポンスが良くなるなど顧客へのサービス向上にも効果がありました。

現在はさらに現場のデジタル化に取り組もうとしています。工作機械の稼働データを取得して効率的な設備運用を目指すためのシステム構築を検討し始めています。

約20年に渡ってこうした取り組みを進めてくると、デジタル活用における問題点もいくつか見えてきました。その一つが業務フローを変えずにデジタル化してしまうことです。デジタル化のために重複したデータ入力や、仕事のための仕事を作っていることがあるので、これらをまず整理し、業務フローを簡素化することが何よりも重要です。

もう一つが管理者目線でデジタル化してしまうこと。人は基本的に他人に拘束されたり、管理されたりすることを好みません。これを払拭するためには客観的にデジタル化の目的を説明することが必要です。あくまで現場担当者が楽になるデジタル化を目指すことが大切だと思います。

また、デジタルに依存してしまうことも問題点の一つだと感じます。デジタル化が進むと、「データに入っているから」とコミュニケーション不足に陥ることがあります。ただ、これではいけません。デジタル化はコミュニケーションをより早く、深く、正確にするためのものであり、主役はあくまで人だからです。

そして最後に挙げられるのは、やはり経営トップの決断・覚悟が必要ということです。過去にもOAやFA、CAD/CAMなどのトレンドがありましたが、これらは全て部分最適で済みました。しかし、今般のDXと表現されるデジタル化は、事業全体に関わるため、全業務フローで経営トップの判断が不可欠となります。また、対投資効果も見えにくく、数値にも表れにくいため、トップが将来の企業戦略を明示して取り組まないと、上手く成果につなげることはできないと思います。

デジタル化は特定のシステムを導入すれば解決するという道具論ではありません。自社の強みと弱み、外的な良い影響と悪い影響の分析はもちろん、社内にあふれるデータや情報を整理し、自社の見えざる資産や問題を見える化するという考えが必要だと思います。

※特集のトップページはこちらから

金型新聞 2022年1月10日

関連記事

元本田技研工業 田岡秀樹氏に聞く【特集:自動車金型の未来】

電動化に3つの方向性 電動化やギガキャストで変わる自動車づくり。元本田技研工業で型技術協会の会長も務めた田岡秀樹氏は「自動車業界はゲームチェンジの局面を迎えており、破壊的なイノベーションが起きている」とみる。一方で「中小…

【特集:新春金型座談会】広がる世界市場をどう開拓する(Part2)

次の成長市場はどこだ インド、ブラジル、メキシコ、トルコに期待 本紙 山本さんは今後金型需要が伸びる市場はどこだとみていますか。 山本 松野さんが指摘されたようにインドは間違いなく拡大します。松野さんの提携先がある地域は…

前澤金型と福井県工業技術センターは金属AMを活用してどんな金型を開発したのか

金型や部品の造形で金属AMを活用する際、必ず指摘されるのがコスト。装置の価格はもとより、粉末材料が高価なことに加え、設計や解析などに多くの工数が発生するため、どうしても製造コストは高くなる。一方で、高い冷却効果による生産…

関西金型メーカー5社に聞く
インターモールド特別座談会

激化する競争に勝ち残る  2017年がスタートして早や3カ月が過ぎたが、不安定な世界情勢の中で日本の金型メーカーは各社各様の課題に取り組んでいる。インターモールド・金型展の開幕を前に関西の金型メーカー様にお集まり頂き、現…

黒田精工 増加するモータコア需要に対応【特集:進む設備の大型化】

300t大型プレスを導入 黒田精工は昨年12月、モータコア金型などを手掛ける長野工場(長野県池田町)を拡張し、300t大型高速プレス機を導入した。ボルスター寸法の左右長さが3・7mの大型機で、2・3mや2・7mの既設機よ…

トピックス

関連サイト