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MARCH

29

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JIMTOF総集編 PART2:DX、デジタルツイン
加工プログラムや解析、自動で

JIMTOF2022で次世代の技術としてひときわ注目を集めたのがデジタル技術だ。IoTやAI、クラウドなどを活用し機械の稼働状況監視や加工の不具合低減に生かす。金型づくりでもデジタルトランスフォーメーション(DX)が課題となる中、生産性や品質を高めるカギとなりそうだ。

加工の不具合を検知

オークマ

加工解析できるCNC装置

オークマは、デジタル空間で加工シミュレーションができるデジタルツイン機能を搭載した次世代CNC装置「OSP‐P500」を出品した。

特長は超高速で超高精度にシミュレーションできること。その時間は実加工時間の最短1000分の1、予測誤差は1%以下。これにより実機での加工や工具交換の作業時間を短縮できる。

Gコード入力が要らず、オペレーションが簡単。加工準備→加工→検査までの一連の作業をガイドしてくれる。そのため熟練技能を持たない初心者でも使うことができ、人手不足も解消できる。

ヤマザキマザック

デジタル段取りできるCNC装置

ヤマザキマザックは、加工プログラムやシミュレーションなどができる「マザトロールDX」を披露した。3次元CADデータを読み込み、自動プログラミング→シミュレーション→加工分析→加工時間を自動計算する。

セットアップガイドの指示に従いチャック爪、工具、素材を取り付け、計測プログラムも自動生成し、デジタルとリアルの誤差があれば補正する。これにより間違いのない加工を実現する。さらに加工するワークの製造コストを見積りすることもできる。

これらの作業はパソコンでできる。現在は旋盤用だけだが、今後は複合機やマシニングセンタにも展開を予定している。

三菱電機

DX推進するプラットフォーム

三菱電機は、同社製NC装置から得た情報で設計や加工、保守をサポートするプラットフォーム「MONOZUKURI DX Solution」を展示した。

①設計向けの「Design4U」、②加工向けの「Machinig4U」、③保守向けの「Remote4U」という3つのアプリケーションを提供。これまで別々に提供していたサービスやアプリケーションを体系的に提供し金型メーカーなどものづくり企業のDXを推進する。

①「Design4U」は「NC Virtual Simulater」というアプリケーションで、CADデータから加工プログラムを作成しデジタル上で事前に干渉チェックなどが行える。

②「Machinig4U」はクラウド上にアップロードした工具データをもとに加工不具合の原因分析などが行える。

③「Remote4U」はすでに工作機械の状態をウェブ上で監視できるリモートサービス「IQ CareRemote4U」を展開している。

現在アプリケーションを作成するパートナーを募集している。機械や工具、ソフトウエアメーカーが対象。金型メーカーはNCのデータを提供することで、アプリケーションを使いプラットフォーム上にある知見を活用できる。

THK

工具の欠損やチッピングを検知し、寿命を予測

THKは、部品の状態の見える化システム「OMNIedge」(オムニエッジ)のアプリケーションの一つに、IoTサービスを展開するMAZINと共同開発した「工具監視AIソリューション」を追加した。

MAZINが持つAI切削工具監視システムを活用し、切削工具の状態を数値化しチッピングや欠損を検知。摩耗度を監視し、寿命を最適化する。工具の状態は電流値の変化で読み取る。

部品や金型の加工で自動化が進む中、チョコ停が大きな損失につながる。加工の予兆検知をすることで、課題解消につなげる。

状態を数値化して予兆検知するOMNIedgeはこれまで、リニアガイドやボールねじ、回転部品、アクチュエータなど部品に対応していたが、今後は様々な企業と協業しアプリケーションを増やしていく。

住友電気工業

工具にかかる荷重を測定

住友電気工業が出品したのはセンシングツール。ホルダに内蔵したひずみセンサで、加工中の工具にかかるトルク、スラスト、X、Y方向への荷重を測定。それを点群やグラフに『見える化』することで工具の欠損や摩耗状態などを分析できる。

例えば、4枚刃エンドミルの刃が加工中に1枚欠けると、刃への負荷が変化し、X、Y方向の荷重に変化が生じる。そのデータを分析し、欠けたタイミングやその原因究明に役立てることができる。

測定したデータは近距離無線通信ブルートゥースにより無線で送信できるため、既存のマシニングセンタなどに取り付けるだけで使える。

同社は今年4月から、このセンシングツールを活用した加工診断活動をスタートした。金属加工を手掛ける企業を訪ね、加工テストを重ねて不具合の原因を追究し、最適な工具や加工条件を提案している。

CIMSOURCE Japan

工具データ検索エンジン

CIMSOURCE Japanは、切削工具のワンストップデータショップ「ToolsUnited」を展示した。同製品は、世界の切削工具メーカー43社より100万点以上の工具を登録している検索エンジン。利用者は豊富なデータから工具の検索、選定、使用しているCAMへ工具データのインポートなどができる。

特長は用途に応じ、目的の工具を簡単に検索できることに加え、国際規格(ISO13999、DIN4000)に基づいた工具データを取得可能な点だ。

規格統一されているためCAMとの連携が容易。ダウンロードした工具データをCAMソフトにダイレクトにインポートすることができ、加工シミュレーションすることもできる。

特別なソフトウェアをダウンロードする必要はなく、Webブラウザから「ToolsUnited」のサイトにアクセスすれば使用できる。料金に関しては、年間契約か都度払いのクレジット制(クレジットを購入する)。

CIMSOURCEは切削工具製造に使うデータベースを構築、運営するドイツのソフトウェア会社。2019年に日本法人を設立した。

CEC

可視化、最適化、自動化・自立化

CECは、「可視化」「最適化」「自動化・自律化」の3段階でスマートファクトリーを実現するソフトウェア「ものづくりソリューションVR+R」を展示した。

まずIoTで情報を「可視化」するため、生産設備の導線・作業内容、設備機器・稼働状況の監視、外観検査などのデータを収集する。次にシミュレーションやAIで「最適化」し、最後に通知、制御、指示するシステムで「自動化・自律化」までを実現する。

CECはシステムの受託開発を行うSIer。工作機械のプログラムやIoTシステムなどを手掛ける。「ものづくりソリューションVR+R」はそれらで培ったノウハウを活かし開発した。

Google Cloud Japan

機械から得たデータ、即座に活用可能に

GoogleCloudJapanは、デジタルデータ分析によって生産効率を最適化するソフトフェア「Manufacturing Data Engine&Connect」を展示した。

①「Manufacturing Connect」で生産設備から機械の情報を収集②「ManufacturingData Engine」で収集したデータをクラウド上で処理、それらを関連づけて保存し即座にデータ活用できる状態にする。

それを③「Analytics」でデータを分析④Googleが用意する豊富なユースケースを活用し、AIで視覚検査を自動化したり機械の異常を検出したりすることができる。

金型をはじめものづくり企業の多くがデータ収集はできてもそれを活用できていない。このソフトフェアはデータ活用するための基盤。ものづくり企業のデータ活用を後押しするものかもしれない。

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