金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JANUARY

15

新聞購読のお申込み

「常識にとらわれない挑戦が競争力の源泉」エフアンドエム代表取締役・市井宏行氏

事業を継続するために
常識にとらわれず挑戦する
それが競争力の原動力に

変わり者とか常識外れとよく言われます。世の中であまり知られてない頃に5軸加工機を購入したり、たびたびCAD/CAMや工作機械の機種を変えたり。どうも周りの人には理解しにくいようです。けれどそれは全て事業を継続するためにロジカルに導き出した答えです。

5軸機は今から17年前、初めて導入しました。当時、日本ではそのメリットがあまり知られていなかった。それなのに導入したのは他社に先駆けて使いこなすことができれば将来、大きなアドバンテージとなり得ると判断したからです。

初年度は稼働率を度外視し応用技術の研究に専念しました。応用の道が見えてくると少しずつ金型の加工に展開しました。その後は加工品質や生産効率を高めることに貢献したり、5軸でしか実現できない構造を金型に採用することで耐久性が改善しお客様に喜ばれたり。結果的に大活躍しています。

CAD/CAMや工作機械の機種もよく変えます。追加や入れ替えで既存と同じものを選ぶのが一般的ですが、それだと技術の進歩が無い。一方その時代の最新のものを導入すれば最新の技術を得ることができる。そのたびに現場は苦労するのですが、それが刺激となり技能につながります。

前例が少ない失敗するかもしれないことをなぜするのか。それは「事業の継続」を最優先して考えた最善策だからです。当社は社員数15人の自動車部品のアルミ押出金型メーカー。大企業のように大規模投資によって効率化したり技術開発したりすることはできません。

小さな会社が勝ち残るには、独自の強みを持ち、その分野でほかの会社を大きくリードする。価格ではなく技術力で競争する。競争相手の少ない得意なゾーンで勝負し、けっしてボリュームゾーンに入らない。そのために、ときには常識外れに挑むことも必要です。

常識にあまりとらわれないのは私の生まれながらの性格に加えて当社の特異な生い立ちや父の考え方に影響を受けていると感じています。当社は1991年、アルミ製品メーカーの金型技術者だった父(市井収氏)が自動車メーカーから金型開発の依頼を受けて創業しました。

しかし創業メンバー4人のうち私を含む3人は金型づくりの経験が無かった。そこで始めたのが擦り合わせの要らない金型づくりでした。CAD/CAMやNC工作機械を駆使して金型を加工し、できる限り職人技の領域を減らしました。当時は擦り合わせするのが当たり前ですから珍しがられました。

それに、かねてから父は人の技能の依存度が高い金型づくりに疑問を抱いていました。金型の本来の価値は職人の技によって精緻に作り上げることではなく、品質の良い製品を安定して量産すること。それを実現できれば作り方はどんな方法でも良い、と。

父はよく「やってみないとわからないことは、やってみないとわからない」と言いました。常識外れのことをする時はもちろん、リスクの可能性を突き詰めて考えます。ですが必要以上に臆病にならず、チャレンジを続けていきたいと思っています。

いま密かに心待ちにしているのが、家にいながらにして工場にいる感覚で工作機械を操作し、振動や臭いを感じ、トラブルなどにも対応できる仕組み。これが実現したら働き方をもっと柔軟に変えることができる。もし実現したら、誰よりも早く導入して使いこなしたいですね。

金型新聞 2022年4月10日

関連記事

黒田彰一氏(黒田精工元社長) 死去

日本金型工業会の会長など歴任  日本金型工業会や国際金型協会(ISTMA)、アジア金型工業会協議会(FADMA)の会長などを務め、日本のみならず世界の金型産業の発展に貢献し続けた黒田彰一氏(黒田精工最高顧問)が9月30日…

横田悦二郎氏

【プレス型特集】強みを維持し続けるには…
日本金型工業会 学術顧問 横田 悦二郎氏に聞く
プレス金型の強みと未来

ゼロベースで知恵絞る 得意な分野で連携を 顧客の生産技術をサポート  日本金型工業会の学術顧問を務める、日本工業大学大学院の横田悦二郎教授は、日本のプレス金型の強みを「他の型種に比べ、技術の蓄積が生かせる部分が大きい」と…

3Dプリンタ活用を支援する研究開発拠点を開設 酒井仁史氏(NTTデータザムテクノロジーズCTO)【この人に聞く】

独EOS社の金属3Dプリンタの日本代理店を務めるNTTデータ ザムテクノロジーズ(XAM)。昨夏に、大阪市内に金属3Dプリンタ15台のほか、多様な検査装置を備えた「デジタルマニファクチャリングセンター(DMC)」を開設し…

冨士ダイス 西嶋守男社長に聞く<br>世界で認知されるブランドに

冨士ダイス 西嶋守男社長に聞く
世界で認知されるブランドに

生産効率向上し、需要増に対応  耐摩耗工具メーカーとして国内トップシェアを誇る冨士ダイス。超硬合金製のダイスやロール、製缶用金型、ガラスレンズ成形用金型など耐摩耗工具に特化した事業を展開し、来年には創業70年を迎える。「…

人が集まる場づくりを<br>金型工業会東部支部 鈴木 教義支部長(鈴木 社長)

人が集まる場づくりを
金型工業会東部支部 鈴木 教義支部長(鈴木 社長)

この人に聞く 金型の社会的価値訴え  「日本の金型業界にとって今は変化の時期だが、チャンスでもある」と話すのは、日本金型工業会の東部支部長に就いた鈴木の鈴木教義社長。好機なのは、金型の高度化が進み日本のメーカーしかできな…

トピックス

関連サイト