金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

SEPTEMBER

05

新聞購読のお申込み

「常識にとらわれない挑戦が競争力の源泉」エフアンドエム代表取締役・市井宏行氏

事業を継続するために
常識にとらわれず挑戦する
それが競争力の原動力に

変わり者とか常識外れとよく言われます。世の中であまり知られてない頃に5軸加工機を購入したり、たびたびCAD/CAMや工作機械の機種を変えたり。どうも周りの人には理解しにくいようです。けれどそれは全て事業を継続するためにロジカルに導き出した答えです。

5軸機は今から17年前、初めて導入しました。当時、日本ではそのメリットがあまり知られていなかった。それなのに導入したのは他社に先駆けて使いこなすことができれば将来、大きなアドバンテージとなり得ると判断したからです。

初年度は稼働率を度外視し応用技術の研究に専念しました。応用の道が見えてくると少しずつ金型の加工に展開しました。その後は加工品質や生産効率を高めることに貢献したり、5軸でしか実現できない構造を金型に採用することで耐久性が改善しお客様に喜ばれたり。結果的に大活躍しています。

CAD/CAMや工作機械の機種もよく変えます。追加や入れ替えで既存と同じものを選ぶのが一般的ですが、それだと技術の進歩が無い。一方その時代の最新のものを導入すれば最新の技術を得ることができる。そのたびに現場は苦労するのですが、それが刺激となり技能につながります。

前例が少ない失敗するかもしれないことをなぜするのか。それは「事業の継続」を最優先して考えた最善策だからです。当社は社員数15人の自動車部品のアルミ押出金型メーカー。大企業のように大規模投資によって効率化したり技術開発したりすることはできません。

小さな会社が勝ち残るには、独自の強みを持ち、その分野でほかの会社を大きくリードする。価格ではなく技術力で競争する。競争相手の少ない得意なゾーンで勝負し、けっしてボリュームゾーンに入らない。そのために、ときには常識外れに挑むことも必要です。

常識にあまりとらわれないのは私の生まれながらの性格に加えて当社の特異な生い立ちや父の考え方に影響を受けていると感じています。当社は1991年、アルミ製品メーカーの金型技術者だった父(市井収氏)が自動車メーカーから金型開発の依頼を受けて創業しました。

しかし創業メンバー4人のうち私を含む3人は金型づくりの経験が無かった。そこで始めたのが擦り合わせの要らない金型づくりでした。CAD/CAMやNC工作機械を駆使して金型を加工し、できる限り職人技の領域を減らしました。当時は擦り合わせするのが当たり前ですから珍しがられました。

それに、かねてから父は人の技能の依存度が高い金型づくりに疑問を抱いていました。金型の本来の価値は職人の技によって精緻に作り上げることではなく、品質の良い製品を安定して量産すること。それを実現できれば作り方はどんな方法でも良い、と。

父はよく「やってみないとわからないことは、やってみないとわからない」と言いました。常識外れのことをする時はもちろん、リスクの可能性を突き詰めて考えます。ですが必要以上に臆病にならず、チャレンジを続けていきたいと思っています。

いま密かに心待ちにしているのが、家にいながらにして工場にいる感覚で工作機械を操作し、振動や臭いを感じ、トラブルなどにも対応できる仕組み。これが実現したら働き方をもっと柔軟に変えることができる。もし実現したら、誰よりも早く導入して使いこなしたいですね。

金型新聞 2022年4月10日

関連記事

「魅力ある組織に人は集まる 楽しく役立つ活動増やす」 東北金型工業会会長(プラモール精工社長)・脇田高志氏【鳥瞰蟻瞰】

魅力ある組織でなければ人は集まってきません。東北金型工業会をより魅力ある団体にするために、会長就任後すぐに、3つの分科会を作りました。若手が中心となって積極的に参加してもらい、勉強会などを通じ、メリットや魅力を感じてもら…

己が戦力知り戦略
日本金型工業会学術顧問 /日本工業大学客員教授
横田 悦二郎氏に聞く

〜世界の需要どう取り込む〜  世界の金型需要を取り込むには何が必要か—。世界各地の金型工業会の設立に関わり、世界中の金型業界をよく知る日本金型工業会学術顧問の横田悦二郎氏は「コロナで世界の金型需要は高まるが、需要を確保す…

AMや真空炉など積極投資 北田博治氏(アッサブジャパン社長)【この人に聞く】

ウッデホルムやボーラーブランドで知られる特殊鋼メーカーのアッサブジャパン。昨年には、日本進出70周年を迎え、金属3Dプリンタ(AM)事業の強化や、真空炉を設備投資するなど積極的に事業展開を進めている。世界中で販売するグロ…

伊藤製作所がテクニカルセンタを設立した理由【金型の底力】

順送り金型やプレス加工を手掛ける伊藤製作所は本社近くにテクニカルセンタを設立し、金型部門を集約することで、本社工場などにプレス機械を増設し、需要が高まっているプレス部品の増産体制を整える。さらに、CAEや3D形状測定機、…

石井洋平さん ユーチューブに動画投稿【ひと】

「どうも、石井精工のユーチューブチャンネルです」。2021年から動画投稿サイト「ユーチューブ」に自社の紹介動画や、使用した工具のレビュー動画などを投稿する。約2年で動画本数は100本を超え、登録者数は1000人を突破した…

トピックス

関連サイト