金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

27

新聞購読のお申込み

金型メーカーに「働き方改革」は実現できるのか

課題多き働き方改革

働き方改革関連法案の施行から4年。金型業界でも労働時間短縮や生産性の向上など、働き方改革は進んでいるのか。現状を調べるため、本紙ではアンケートを実施した。調査からは、改革には前向きに取り組んでいるものの、8割以上の回答者が何らかの課題を抱えていることが明らかになった。繁閑の差が激しすぎることや、ユーザーの意向に左右されたり、見積もりの手間が増えたりするなど、構造的な問題から、働き方改革を進める難しさが浮き彫りになった。

受注産業ならではの壁も

アンケートは3月下旬にネットを使い、約400社に送付し、41社から回答を得た。まず聞いたのは、働き方改革に取り組んでいるか否か。1社を除き全社が取り組んでいると回答。取り組みを進める意思は強い。

続いて聞いたのが取り組み内容(グラフ参照)。自動化や設備投資による生産性向上が最も多く、有給休暇や残業の制限などと続く。製造現場が必要なため、在宅勤務などへの対応は少なかった。

問題はこれらの取り組みが上手く進んでいるのかどうかだ。「部署ごとにグラフ化し有給休暇を推奨している」や「ワークシェアで残業削減につなげている」などうまく進んで回答も見られた。

しかし「うまく進んでいない」、「改善できない項目もある」との回答が85%を超えた。「改革は必要だが、コストや人材面でハードルが高い」というように、進めたいがうまくいかないというのが本音のようだ。

繁閑の差と構造的問題への対応必要

うまく行かない理由について聞いたところ、最も多かったのが「繁閑の差の激しさ」だ。「受注の波が大きい上、タイトな納期で受注し、仕事が集中するため、一時的に残業が集中してしまう」との意見が大半だった。

こうした問題に対し、前述のように、自動化投資や多能工化で対策は進めている。しかし「投資効果が低い」、「(業務効率化のための)デジタルに長けた人材不足」といった答えや「働き方改革で一般社員の休日が増える一方、穴埋めで管理職の残業で対応せざるを得ない」という意見も。

もう一つ多かった回答が、顧客都合に依存せざるを得ない構造的な問題だ。「発注側の出図遅れも多く、無理せざるを得ない」や「デジタル化が遅れているユーザーのしわ寄せがきている」などの意見も多かった。精度が必要な見積の数の多さや、そこに係る手間などから「見積の有料化が必要」とする声もあった。構造的な問題に対して「金型業界だけでなくサプライチェーン全体で取り組まないと変わらない」とする主張が大半だった。

では、こうした状況下で、改革を進めるにはどうすべきか。2面以降では、課題を抱えながらも、改革を進める企業を紹介する。

金型新聞 2022年4月10日

関連記事

牧野フライス製作所 人の作業やミス減らす、各種データを一元管理【特集:金型づくりを自動化する】

金型加工支援システム 「人が介在する作業をどう効率化するか」—。牧野フライス製作所は工具やワーク、加工情報などのデータを自動でつなぎ、一元管理することで、人による作業を減らす提案を強化している。 加工の自動化は進化する一…

日本流のギガ確立へ【特集:ギガキャストの現在地】

自動車の構造部品を大型のダイカストマシンで一体鋳造する「ギガキャスト」。部品点数の減少など、金型づくりに大きく影響する可能性があることから注目を集めている。すでにトヨタ自動車を始め、複数の自動車や部品メーカーらが参入を表…

電動化3種の神器に挑む
〜生産現場を訪ねて〜 ニシムラ(愛知県豊田市)

特集  次世代車で変わる駆動部品の金型(バッテリー、モータ、電子部品)  「自動車向けの金型を手掛ける企業は今後、バッテリー、モータ、電子部品、この3部品に携わっていないと生き残れない時代になる」と話すのはプレ…

太陽光発電導入し、CO²排出量を削減 J-MAXが取り組むCNに向けた取り組み

脱炭素社会に向けた取り組みがものづくりで加速し、金型業界でもその動きが広がりつつある。先手を打つ金型メーカーの対応には大きくは2つの方向性がある。一つは、太陽光パネルの設置や設備の省エネ化などによる自社の生産活動でCO2…

豊田自動織機が金属AMのコスト増を吸収した方法とは

金型や部品の造形で金属AMを活用する際、必ず指摘されるのがコスト。装置の価格はもとより、粉末材料が高価なことに加え、設計や解析などに多くの工数が発生するため、どうしても製造コストは高くなる。一方で、高い冷却効果による生産…

トピックス

関連サイト