人材の不足や育成、CASE(コネクティビティ・オートノマス・シェアード・エレクトリック)に代表される自動車産業の変化による影響、台頭する新興国など、日本の金型産業は様々な課題を抱えている。これらに対してどう立ち向かって…
米山金型製作所が「微細成形ラボ」を設立するワケ
微細成形ラボを設立

量産化までの支援サービスを提供
自動車や医療などの精密プラスチック射出成形用金型を手掛ける米山金型製作所は今年9月、微細成形技術が提供可能な「微細成形ラボ」を設立する。既存設備よりも大型の射出成形機を導入し、量産化までの成形支援を行っていく。微細精密分野での部品加工から金型、成形までの技術を提供し、これまで以上に付加価値の高い金型の受注につなげる考えだ。


同社が得意とするのは加工精度±1μmが要求される超精密金型。こうした金型には加工はもちろん、成形にも高度な技術が必要とされる。「金型ができても成形に課題を抱えるユーザーが少なくなかった」(村松善太郎社長)。
これまでも型締力30t、100tの射出成形機を設備し、試作成形ができる体制を整えていた。しかし近年は、自動車部品の一体化などによって、微細精密加工が必要な金型も大型化が進み、保有している設備だけでは対応しきれないという課題があった。
また、医療機器関連を中心に高精細、高アスペクト比の微細転写が要求される金型の需要が増加。微細な形状を転写するには、通常よりも大きな圧力で圧縮成形するため、これまで以上に型締力の大きい成形機が必要になっていた。
こうした従来よりも大物の金型や圧力の大きい成形に対応するために、「微細成形ラボ」の設立に踏み切った。「事業再構築補助金」を活用し、約1億1000万円を投資。工場敷地内に建屋を建設し、型締め力300tの射出成形機や2tクレーンなどを設備する。今年9月に完成させ、10月から本格的に稼働させる予定だ。

同社が微細精密分野に本格参入したのは今から10年ほど前。展示会の出展を機に、マイクロニードルやマイクロ流路、ライトガイドなどの金型を手掛けるようになった。また、同時期に微細加工事業も開始。微細鏡面加工やV溝ヘール加工、小径穴加工などでも実績を重ねている。
こうした微細な金型や部品加工に対応するために、同社では毎年積極的な設備投資を実施。これまでに最新鋭の微細加工機や高精度測定機、23度±1度の恒温環境の整備などに投資し、微細加工技術の強化に努めてきた。
一方で微細精密分野は近年、参入企業も増え、他社との差別化がこれまで以上に重要になっている。「今後は単に高精度な金型や加工を提供するだけでなく、試作成形などのサービスも提供して顧客の問題を解決することで、より付加価値の高い金型の受注につなげたい」(村松社長)。
今年4月からは「微細成形ラボ」の設立に先駆け、「微細試作成形サービス」を開始している。最大90㎜角の入れ子が搭載できるモールドベースで、顧客の要望に合わせた入れ子を製作し、試作成形を行う。金型を加熱・冷却する「ヒート&クール成形技術」を用いた成形にも対応する。
今後も同社は「金型」と「微細加工」の2本柱で事業を継続していく考え。将来的には、現在売上の3割ほどを占める微細精密分野(金型、部品加工含む)を5割以上に引き上げることを目指している。「他社ではできない難しいものに積極的に挑戦し、さらに微細精密分野の受注を広げてきたい」(村松社長)。
会社の自己評価シート

毎年積極的な設備投資を行っていることもあり、「設備力」「チャンレンジ精神」に最高点。変化への対応や未来への投資といった点も高い。一方で、「営業力」「PR・発信力」などに課題。
会社概要
- 本社:長野県下伊那郡松川町大島402-12
- 電話:0265・36・5476
- 代表者:村松善太郎社長
- 創業:1986年
- 従業員:28人
- 事業内容: 微細精密部品加工、プラスチック射出成形金型の設計製作など。
金型新聞 2022年5月20日
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