金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

APRIL

07

新聞購読のお申込み

デジタル活用し設備全体をCAE解析する【変わるトヨタの型づくり】

PART1:デジタル活用

精密金型の生産性を向上

センシング状況の波形
型からプレス機までセンシング

トヨタ自動車が型造りで注力する取り組みの一つがデジタル活用だ。精密部品向けの金型を手掛けるモノづくりエンジニアリング部では、デジタルデータを活用することによって、金型だけでなく、プレス機も含めた設備全体のCAE解析に取り組み、精密金型の生産性向上に繋げている。

同社は20年ほど前から電動車の基幹部品を内製化。モータや電池、パワーコントロールユニット(PCU)などを手掛ける。これらの部品はどれも金型への要求精度が高く、ハイブリッド自動車(HEV)向け駆動用モータのステータコアではミクロンレベルの精度が必要とされている。

モノづくりエンジニアリング部では型構造に加え、切削、研削、放電などの加工や組付、測定といった技能の向上を図り、高い精度要求に対応してきた。駆動用モータのステータコア向け金型では、20年前に10μmだったパンチとダイの打ち抜きクリアランスを5μmまで高め、現在では従来の3分の1の板厚の電磁鋼板を打ち抜くことを可能にしている。

また、電動モータの精密プレスで習熟した加工や組付の技術は、燃料電池部品にも生かされている。その一つが燃料電池スタックのセパレータ。プレス加工(スタンピング形状)には、20μmという厳しい公差が要求され、金型にはさらに1桁上のミクロン台の精度が求められる。こうした高い精度に対しても、これまで培ってきた精密技術・技能によって実現することができている。

高精度なステータコア

年々高度化する要求精度に対応してきた一方で、「静的な型精度の向上はこれまでの取り組みで確立できたが、動的な挙動が把握しきれておらず、型製作後にトライを繰り返しながらミクロンレベルで調整して成立させており、いかにリードタイムを短縮するかが課題となっていた」(モノづくりエンジニアリング部要素術室 型成形技術グループ グループ長・藤原慎平氏)。

同社ではこれまで金型のCAE解析は行っていたが、プレス機まで含めた解析はしておらず、金型のみの解析で問題がなければ良しとして製作を進めてきた。しかし、実際に成形すると、製品のチッピングやバリや製品割れなどの不具合が出ることが多く発生していた。精密プレス成形の解析要求精度は1μmと非常に高いことが理由だった。

そこで着目したのが、プレス機も含めた生産設備全体のCAE解析。歪みセンサや変位センサなどを使って、設備全体の挙動の把握と解析に取り組み始めた。加工時の歪みや温度変化の他、プレス機の金型が取り付く面の平行度や、加工点の位置を定めるストリッパプレートの挙動などのデータを取得。「荷重をどう与えれば、どれくらいプレス機が変位するかを捉え、解析モデルに反映させていった」(藤原氏)。

モノづくりエンジニアリング部は2年前に試作、金型、設備、生産技術部門が統合してできた部隊。生産設備部門が持つ設備解析の知見を生かすことで、解析モデルの精度を向上させ、より実機に近い解析を行うことができた。

こうした一連の取り組みによって、これまで約12μmあった実機と解析の乖離を1μm程度まで抑えることに成功。やり直しにかかるリードタイムを20日も短縮することができた。「現状は確立したばかりで、n数がまだ少ない。これから試作・量産の金型に展開していきたい」(藤原氏)。

金型新聞 2022年6月9日

関連記事

中辻金型工業 切削工具を自社開発

培った技術活かす 自動車の電動化、医療関連や半導体関連需要の拡大などで、国内のものづくり産業に求められるものも大きく変化している。自動車の電動化ではモータやバッテリーなどの電動化部品や材料置換による軽量化部品などが増えて…

【特集:技能レス5大テーマ】4.磨きレス

新被膜やPCDでサブミクロン 仕上げや組付けなど金型の品質を決める領域には人の手は欠かせない。磨き工程もその一つ。しかし、磨きには時間や人手がかかることから、できるだけ機械加工で追い込み、磨きを減らしたいという声は多い。…

新規参入目立つ微細精密加工向け機械・工具 成長分野で需要拡大【特集:2022年金型加工技術5大ニュース】

金型づくりの世界では、自動化やAM、脱炭素向けなどの最新技術が数多く登場し続けている。その進化は止まることがなく、4年ぶりに開催されたJIMTOF2022でも多数の最新技術が披露され、注目を集めた。今年最後となる本特集で…

【特集】匠の技を手に入れろ

金型はこれまで、金型職人の頭の中で製品形状や金型設計を描き、経験やノウハウで調整し、製造してきた。そして金型の「匠」の技は「背中」を見て学ぶもので、習熟への時間はとても長かった。しかし近年では、工作機械やCAD/CAMと…

【特集:2024年 金型加工技術5大ニュース】3.デジタル

管理、調達を効率化 近年の金型工場では人手不足が深刻化しており、デジタル技術の導入による製造工程や管理工程などの効率化に向けた取り組みが加速している。多くの企業がセンシング技術を活用した見える化をはじめ、ITツール導入に…

トピックス

関連サイト