特集 次世代車で変わる駆動部品の金型(バッテリー、モータ、電子部品) 「自動車向けの金型を手掛ける企業は今後、バッテリー、モータ、電子部品、この3部品に携わっていないと生き残れない時代になる」と話すのはプレ…
デジタル活用し設備全体をCAE解析する【変わるトヨタの型づくり】
PART1:デジタル活用
精密金型の生産性を向上


トヨタ自動車が型造りで注力する取り組みの一つがデジタル活用だ。精密部品向けの金型を手掛けるモノづくりエンジニアリング部では、デジタルデータを活用することによって、金型だけでなく、プレス機も含めた設備全体のCAE解析に取り組み、精密金型の生産性向上に繋げている。
同社は20年ほど前から電動車の基幹部品を内製化。モータや電池、パワーコントロールユニット(PCU)などを手掛ける。これらの部品はどれも金型への要求精度が高く、ハイブリッド自動車(HEV)向け駆動用モータのステータコアではミクロンレベルの精度が必要とされている。
モノづくりエンジニアリング部では型構造に加え、切削、研削、放電などの加工や組付、測定といった技能の向上を図り、高い精度要求に対応してきた。駆動用モータのステータコア向け金型では、20年前に10μmだったパンチとダイの打ち抜きクリアランスを5μmまで高め、現在では従来の3分の1の板厚の電磁鋼板を打ち抜くことを可能にしている。
また、電動モータの精密プレスで習熟した加工や組付の技術は、燃料電池部品にも生かされている。その一つが燃料電池スタックのセパレータ。プレス加工(スタンピング形状)には、20μmという厳しい公差が要求され、金型にはさらに1桁上のミクロン台の精度が求められる。こうした高い精度に対しても、これまで培ってきた精密技術・技能によって実現することができている。

年々高度化する要求精度に対応してきた一方で、「静的な型精度の向上はこれまでの取り組みで確立できたが、動的な挙動が把握しきれておらず、型製作後にトライを繰り返しながらミクロンレベルで調整して成立させており、いかにリードタイムを短縮するかが課題となっていた」(モノづくりエンジニアリング部要素術室 型成形技術グループ グループ長・藤原慎平氏)。
同社ではこれまで金型のCAE解析は行っていたが、プレス機まで含めた解析はしておらず、金型のみの解析で問題がなければ良しとして製作を進めてきた。しかし、実際に成形すると、製品のチッピングやバリや製品割れなどの不具合が出ることが多く発生していた。精密プレス成形の解析要求精度は1μmと非常に高いことが理由だった。
そこで着目したのが、プレス機も含めた生産設備全体のCAE解析。歪みセンサや変位センサなどを使って、設備全体の挙動の把握と解析に取り組み始めた。加工時の歪みや温度変化の他、プレス機の金型が取り付く面の平行度や、加工点の位置を定めるストリッパプレートの挙動などのデータを取得。「荷重をどう与えれば、どれくらいプレス機が変位するかを捉え、解析モデルに反映させていった」(藤原氏)。
モノづくりエンジニアリング部は2年前に試作、金型、設備、生産技術部門が統合してできた部隊。生産設備部門が持つ設備解析の知見を生かすことで、解析モデルの精度を向上させ、より実機に近い解析を行うことができた。
こうした一連の取り組みによって、これまで約12μmあった実機と解析の乖離を1μm程度まで抑えることに成功。やり直しにかかるリードタイムを20日も短縮することができた。「現状は確立したばかりで、n数がまだ少ない。これから試作・量産の金型に展開していきたい」(藤原氏)。
金型新聞 2022年6月9日
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