DXの本質は利益を生み出すことにある。以降では、DXによって「売上げを上げて利益を生み出す」方法と「コストを下げて利益を生み出す」企業のそれぞれの取り組みを取材した。 金型の長寿命化、自動化へ 冷間鍛造金型を手掛けるニ…
ワークス 直径0.1㎜のガラスレンズ金型を開発
ワークス(福岡県遠賀町、093-291-1778)は、直径0・1㎜のガラスレンズ金型を開発した。独自の微細なナノ多結晶ダイヤモンド工具で加工し実現した。これまでの最小径は0.5㎜で、世界最小クラスという。従来は難しい超小型の医療機器や通信機器向けに需要を見込む。
医療や通信、車に需要
開発した金型は超硬製で、大きさは約6×6㎜。レンズの形状は非球面で、その表面粗さはナノレベル。ダイヤモンド砥石の約2倍の強度といわれるナノ多結晶ダイヤモンド工具でミーリング加工や旋削加工をして、仕上げた。
ガラスレンズはガラスの素材を、300℃に熱した金型で挟んで成形する。成形時の高温に耐えるため金型には超硬が用いられる。そのためダイヤモンド砥石で研削加工するが、加工の過程で砥石が摩耗するため微細なR形状を加工できず、直径0.5㎜が限界だった。
直径0.1㎜を実現するカギとなったナノ多結晶ダイヤモンド工具は自社開発した。ナノ秒レーザーで形状を加工し研磨加工で微細な刃をつけた。市販の工具は1本約40~50万円するが製作費を約10~20万円に抑えることができたという。
この金型開発は2019年、戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)で採択を受けて始めた。福岡工業大学が考案した加工技術を応用しワークスが確立した。アルプスアルパインやエヌジェーエス、住田光学ガラスなどがアドバイザーとして参加した。
ガラスレンズはプラスチックレンズと比べ耐熱性に優れ、透過性が高い。そのため高度なセンサや通信機器に用いられる。現在実用レベルのレンズの最小径は1㎜。それが0.1㎜にできれば製品を小型化でき、設計の幅も広がる。例えば医療用の内視鏡や小型のドローン、次世代自動車向けなどに需要があるという。
光学系の企業などからすでにニーズがあり、売上高を2022年度に1680セット/1億6800万円、26年度に3600セット/3億6千万円を見込む。ただ、「想定外のあらゆる分野に需要が潜在する可能性があり、目標を上回って増えるかもしれない」(三重野計滋社長)。
三重野計滋社長に聞く 超精密を目指す理由
世界最小クラスのガラスレンズの金型。なぜ微細の極みを目指すのか。三重野計滋社長に聞いた。
中台寄せ付けない技術力
かつて日本の金型は技術力や生産力などあらゆる分野で世界のナンバーワンだった。しかし中国や台湾は日本の生産技術を取り入れ、量や価格では日本を上回る。それらの分野でいまや日本は競争をするのが難しい。
だから日本が目指すべきは、中国や台湾を凌駕する技術力。中国や台湾の企業が手の届きようもない超越した技術を常にリードして開発する。そうすれば日本の金型は勝ち残れる。
日本の金型メーカーのほとんどは中小企業。資金力による競争では太刀打ちできない。そうではなく最先端技術の分野で先をいく。そうすることで、その技術が欧米などの企業から注目されることもあり得る。
金型新聞 2022年6月9日
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