新天地を求めて、世界に進出していった日本の金型メーカーは、何を考え、どんな苦労や課題を乗り越えて、取り組みを進めてきたのか。また、さらなる成長に向け、どんな青写真を描いているのか。中国、タイ、メキシコ、アメリカ、欧州そ…
「新たな壁に挑み突破できる組織作り」 大垣精工・松尾幸雄社長[この人に聞く]
プレス金型及び量産を手掛ける大垣精工(岐阜県大垣市、0584-89-5811)は今年3月、松尾幸雄氏が社長に就任し、新たな船出に乗り出した。同社は独自の技術で世界シェア№1を誇るハードディスクドライブ(HDD)部品をはじめ、HV車やEV車向けの車載用リレー部品、排ガス浄化用のハニカム金型など高難易度なモノづくりを行う。「中国など他国の技術力も上がり、一歩先へ行くには技術力を上げる必要がある」と松尾社長は次世代を見据えた組織作りを始めた。
新たな壁に挑み突破できる組織作り

まつお・ゆきお
1953年生まれ、岐阜県出身。関西大学工学部卒。1977年に同社入社し、2005年に常務取締役、19年に代表取締役専務に就任。
現在の受注状況は。
おかげさまで売上高の8割を占めるプレス品は情報通信向けHDD部品、自動車の電動化で需要が増している車載用リレー部品、酸素センサ部品の受注が好調だ。加えて、金型は従来のオルターネータやスターターモータ向けほか、EV車の開発が進み、モータコア金型の引き合いが急増している。当面、この状況は続くと見ている。
モータコアの金型で取り組んでいることは。
ユーザーの生産性向上ニーズで、金型の大型化が進んでいる。そこで、安田工業製の大型加工機(ジグボーラー)と長さ2700㎜の金型を搭載できるトライプレス機(300t)を導入し9月末に稼働する予定だ。金型は大型かつ精密化に向かっている。モータコアの板厚も薄くなり、それに伴ってクリアランスの精度も厳しくなる。そうした高難易度な金型に対応するには数ミクロン以下の加工精度に加え、それらを金型に組み付ける技術者が必要になる。
難しい金型に対応していくには。
プレス加工も金型製作もチームワークが大切。だからこそ『和を大切に』をモットーに、みんなの目線を合わせ、高い目標に立ち向かっていく組織を作りたい。難しいものをやるには設計、加工、組付、仕上げといった要素に高い技術が求められるため、それぞれの力を結集し挑戦する組織作りが重要だ。そのために、社員教育や社内コミュニケーションの充実を図る。
企業風土を作るには。
チャレンジ精神を促すにはそれだけの報酬も重要になるだろう。ファーストペンギンは危険な海へ一番に飛び込み、仲間を先導することから、そう呼ばれるが、挑戦すると失敗もあり得る。技術には必ず壁があり、突破するには何度も挑戦する気持ちが大切。そうしたチャレンジ精神を後押しできる企業文化を醸成させていきたい。
次の目標は。
主力であるHDD部品や高難易度な金型などは先人たちが技術の壁を打ち破り実現してきたもの。しかし、HDD部品もいずれSSDに置き換わる可能性もある。私の役目は技術をさらに進化させ、次世代の柱となるものを見つけ、確立することだと考えている。
金型新聞 2022年8月10日
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