IBUKI を売却大企業の足りないパーツに成長を加速し100億円企業へ 7年前に買収したプラスチック金型メーカーのIBUKIを昨年、自動車部品メーカーのしげる工業に売却しました。売上利益ともに過去最高の予測、中国企業と基…
【インタビュー】本田技研工業・田岡秀樹氏「自動車は『CASE』から『PACE』へ、金型の重要性は変わらない」

本田技研工業 四輪事業本部ものづくりセンター 完成車開発統括部車両企画管理部 生産製造企画課製造デジタル・グループ エキスパート・エンジニア 田岡 秀樹氏
CASEから「PACE」へ金型の重要性変わらず
アフターコロナの世界で、自動車はどう変わっていくのでしょうか。コロナ前と言っても、たった10か月前ですが、自動車業界は「CASE(つながる、自動運転、シェア、電動化)」にどう対応していくかが課題でした。しかしコロナによって、この潮流は大きく変わり、自動車はCASEから「PACE」になっていくとみています。
PACEとは何か。まず、医療従事者を安全に運ぶには「A=自動運転」は不可欠です。「C=つながる」機能はユーザーの利便性には必要な要素です。電動車の拡大スピードは見極める必要があると思いますが、環境問題から「E=電動化」の流れは変わらない。
コロナで最も影響を受けるのは「S=シェア」でしょう。感染リスクを考えると、自動車をシェアする流れは相対的に弱まります。その代わりになるのが、「P=パーソナライズド」だと思います。個人的な移動手段や、嗜好品としての自動車に対するニーズです。Sはシェアではなく、嗜好品に不可欠な「スタイリッシュ」になると思います。
では、PACEで自動車や金型はどう変わるのか。結論から言えば金型の重要性は変わりません。むしろ、よりその重要性は増すと思います。しかし、コロナ前から自動車業界は「プレミアム」と「グローカル」という2つの方向がありましたが、Pでそれがより鮮明になると思います。
具体的にみていきましょう。嗜好品のプレミアムブランドとして代表的なBMW。同社の最上位機種の「7シリーズ」では、カーボンコアボディを採用するなどハイエンドな自動車づくりを進めています。日本では、今年のワールドカーデザインオブザイヤーを受章した「マツダ3」が好例でしょう。デザイン志向が強く、複雑な形状を採用しており、デザイン特許を取得しています。
一方、グローカルでは、ダイハツやホンダが挙げられます。ダイハツの「コペン」は、個人の嗜好を満たすため外装品の着せ替えが可能です。ホンダの「N‐BOX」はホンダ史上最も早く販売が200万台に達した車種ですが、日本ならではのローカルな軽自動車でパーソナルな移動手段です。
プレミアム、グローカルどちらの方向でも、金型が無ければ実現できません。カーボンコアボディや複雑形状には高度な金型が必要です。コペンでは外装品を効率よく作る金型が重要ですし、私が携わった「N-BOX」も金型技術がなければ実現できませんでした。
つまり、PACEの時代でも金型は重要であり続けるし、もうすでにその変化に対応し始めています。だから、金型メーカーの皆さんには、ひるまずに、自らの技術や強みを見つめ、進んで行って欲しいと思います。
とはいえ、どんな時代でもリーダーはデータに基づき、仮説を立て、未来予想図を描き続けなければいけません。そこで、最後に私なりの4つの未来の方向性を紹介したいと思います。
1つ目は「車はより人の脚になる」ということ。ホンダだとスーパーカブのような簡易な移動手段が求められると思います。
2つ目は「どこでも仕事ができるようになる」ので、1つ目と同じく、ちょっとした移動に伴う、パーソナルな移動手段が必要になると思います
3つ目は「車はより物を運ぶ補助道具になる」ということ。4つ目は「バーチャルとリアルの融合が加速する」ということ。例えばシミュレーション技術。これまでのように塑性、塗装、溶接、組立など工程ごとでなく、自動車全体で解析を進めることなどが考えられます。
いずれにせよ、アフターコロナの世界でもPACEの時代になっても、金型屋はすでに前進しています。今後も変わらず、自らの強みを見直し、他社にできない、それぞれの「模倣困難性」を追求していくことが大事だと思います。
金型新聞 2020年11月10日
関連記事
製造業のネット活用は新規顧客や新分野の開拓、知名度向上など様々な方面で大きな効果を上げている。金型メーカーにとっても例外ではない。ただ、その効果は限定的で、ホームページ(HP)を作っても大きな効果を得られていない企業も…
「金型メーカーが情報管理をするのは、自社の知的財産を守るためと顧客情報を守るための2つの意味で重要だ」と話すのは、飲料や化粧品などのプラスチック金型を手掛ける打田製作所の打田尚道社長。同社は15年ほど前に社内で情報シス…
金型の魅力を届ける元タカラジェンヌ 元宝塚歌劇団男役で、昨年から「金型大使」として活動を始めた。静岡県内を中心に金型メーカーを訪問し、エンターテインメントの世界で培った研ぎ澄まされた感性を武器に新たな角度から金型の魅力を…
熱間鍛造金型を直彫り トヨタグループ唯一の素材メーカーである愛知製鋼は、特殊鋼に加えて、自動車のエンジンや足回り部分に使用する鍛造部品も手掛けている。「月間1万型を生産、消費する」という金型部門では、高い品質と生産性を実…