金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

FEBRUARY

01

新聞購読のお申込み

「現場で活躍できる人材育て、学生の未来を後押しする」 大分県立工科短期大学校校長・䑓博治氏[鳥瞰蟻瞰]

入社したその日から金型づくりや保全の現場で活躍できる。当校の機械システム系金型エンジニアコースはそんな人材を育てています。アカデミックな指導はしません。指導するのはあくまで金型をつくり、使う実践の現場で必要な技術や知識です。

なぜそのような方針で学生を指導しているのか。それは地元・大分県下の金型や成形、プレスメーカー、県下に進出した自動車や部品メーカーの生産拠点が人材採用で求めることであり、それに応える能力を育てることが学生の未来を後押しすることにつながるからです。

この方針を進める契機となったのがダイハツ車体(現ダイハツ九州)の大分への生産移転(2004年)でした。それまで日産自動車やトヨタ自動車が福岡県に相次いで工場を新設。自動車は北部九州の基幹産業へと成長しつつありました。

そこに、当校(1998年開校)と同じ中津市にダイハツ車体の工場新設に伴い金型や成形・プレス部品メーカーも進出すれば、多くの雇用が生まれる。それが予想されたため当校は金型を専門に学べるコースの新設を検討しました。

開校時からの大学方針はアカデミックに指導するものでした。私はそのような指導を受けた学生を県下の企業や進出企業の工場が求めているのか、学生が望む職域に就くことができるのかと疑問に感じていました。

県下の企業や工場での実際の仕事は金型づくりや金型保全。その現場が求めるのは金型技能者です。であればアカデミックに金型を学ぶのではなく、金型づくりや保全の実践で役に立つことを指導した方が良いはずです。

仮にアカデミックに指導しても就職先は見つかりますが、そんな人材を求めるのは生産技術や研究開発部門。当校を卒業しても学士を取得できないので狭き門。それに当校の学生の約65%は地元企業への就職を望んでいる。生産技術などは名古屋や大阪の本社にあり、望みを叶えられない。

私は地元の企業や進出企業を訪ね、人材採用についてヒアリングし、金型づくりや保全の実践で役に立つ人材を求めていることを確認できたので当校や県に提案。承認を得て、2007年当コースをスタートしました。

当コースの学生は実践に極めて近い指導を受けます。金型向けの工作機械やソフト、プレス機、成形機を使い、金型を設計製作、試作し検証します。講師には三井ハイテックのOB技術者の協力のもと実践さながらのプロの技能や知識を得ることができます。

そして学生には自らの得意分野の理解を促します。グラインダで精密に磨けたり、自由な発想で設計できたり、金型の不具合がすぐにわかったり。得意なことを理解し、就職先で活躍できる職域を具体的にイメージするよう指導します。

これらは学生と企業とのミスマッチを減らすためで、当コースはこの15年、約120人の学生を企業に送り出してきました。評価はその約75.8%が「4大生並み、4大生以上」。離職率は13.6%。学生の将来を後押しできていると感じています。

しかし「入口」が課題です。自動車のEV化などが取り上げられ、「金型やものづくりに未来がない」と思う人もいますが、そんなことはありません。世の中の多くの物が金型からできていますし、製造業は今なお日本の基幹産業です。

「金型やものづくりの魅力を知って欲しい」。その思いから当校では学園祭で様々なものづくりを体験できる企画を催しており、地域の大人や子ども約3千人が訪れます。それが金型やものづくりに興味を持ってもらえる機会になれば。そう願っています。

金型新聞 2022年8月10日

関連記事

ギガでアルミのニーズ高まる 木村鋳造所 木村崇専務インタビュー

薄肉の低圧鋳造技術を強みとするドイツのグルネバルド社と提携し、砂型鋳造で、アルミの試作部品を手掛ける木村鋳造所。同社の木村崇専務は「アルミの大型試作部品は急増している」と話す。試作はいずれ量産に移行するため、金型の動向を…

高精度、省人化ニーズが高まる国内市場で注力すること 田代勝氏(三菱電機 産業メカトロニクス事業部長)【この人に聞く】

三菱電機は50年以上に渡って、高精度、高性能な放電加工機を開発し、付加価値の高い金型づくりに貢献してきた。近年では省人化ニーズへの対応に注力する他、金属3Dプリンタを開発するなど技術領域を広げている。同社は今後、金型業界…

大野 和夫さん 金型作りは好きでないと続かない【ひと】

「金型作りは上手くいかないことがある。そんな時は、トイレの個室で考える。そうすると良いアイデアが浮かぶ瞬間が訪れる」と、アイデアが浮かぶ時や場所を見つけるのも技術者の役目と話す大野和夫さん(68歳)。金型製作歴40年以上…

金型産業の未来・トヨタ自動車<br>高見 達朗氏に聞く

金型産業の未来・トヨタ自動車
高見 達朗氏に聞く

粗形材改革の〝要〟 孫の代まで続く金型産業 「金型は、常に進化させながら孫の代まで延々と続く重要産業」――トヨタ自動車ユニット生技領域長、常務理事高見達朗氏はこのほど、日本の金型産業について熱く語った。日本産機新聞の自動…

【この人に聞く】アイセル社長・望月貴司氏 「面白い企業だと感じてもらえる環境をつくる」

リブランディングを実施 アイセル(大阪市中央区)はこのほど、リブランディングを実施し、企業イメージの刷新を図った。企業ロゴの変更やアイコンの作成、製品のデザインの統一といった対外的な部分での変更に加え、社内では改めてミッ…

トピックス

関連サイト