金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

OCTOBER

01

新聞購読のお申込み

「現場で活躍できる人材育て、学生の未来を後押しする」 大分県立工科短期大学校校長・䑓博治氏[鳥瞰蟻瞰]

入社したその日から金型づくりや保全の現場で活躍できる。当校の機械システム系金型エンジニアコースはそんな人材を育てています。アカデミックな指導はしません。指導するのはあくまで金型をつくり、使う実践の現場で必要な技術や知識です。

なぜそのような方針で学生を指導しているのか。それは地元・大分県下の金型や成形、プレスメーカー、県下に進出した自動車や部品メーカーの生産拠点が人材採用で求めることであり、それに応える能力を育てることが学生の未来を後押しすることにつながるからです。

この方針を進める契機となったのがダイハツ車体(現ダイハツ九州)の大分への生産移転(2004年)でした。それまで日産自動車やトヨタ自動車が福岡県に相次いで工場を新設。自動車は北部九州の基幹産業へと成長しつつありました。

そこに、当校(1998年開校)と同じ中津市にダイハツ車体の工場新設に伴い金型や成形・プレス部品メーカーも進出すれば、多くの雇用が生まれる。それが予想されたため当校は金型を専門に学べるコースの新設を検討しました。

開校時からの大学方針はアカデミックに指導するものでした。私はそのような指導を受けた学生を県下の企業や進出企業の工場が求めているのか、学生が望む職域に就くことができるのかと疑問に感じていました。

県下の企業や工場での実際の仕事は金型づくりや金型保全。その現場が求めるのは金型技能者です。であればアカデミックに金型を学ぶのではなく、金型づくりや保全の実践で役に立つことを指導した方が良いはずです。

仮にアカデミックに指導しても就職先は見つかりますが、そんな人材を求めるのは生産技術や研究開発部門。当校を卒業しても学士を取得できないので狭き門。それに当校の学生の約65%は地元企業への就職を望んでいる。生産技術などは名古屋や大阪の本社にあり、望みを叶えられない。

私は地元の企業や進出企業を訪ね、人材採用についてヒアリングし、金型づくりや保全の実践で役に立つ人材を求めていることを確認できたので当校や県に提案。承認を得て、2007年当コースをスタートしました。

当コースの学生は実践に極めて近い指導を受けます。金型向けの工作機械やソフト、プレス機、成形機を使い、金型を設計製作、試作し検証します。講師には三井ハイテックのOB技術者の協力のもと実践さながらのプロの技能や知識を得ることができます。

そして学生には自らの得意分野の理解を促します。グラインダで精密に磨けたり、自由な発想で設計できたり、金型の不具合がすぐにわかったり。得意なことを理解し、就職先で活躍できる職域を具体的にイメージするよう指導します。

これらは学生と企業とのミスマッチを減らすためで、当コースはこの15年、約120人の学生を企業に送り出してきました。評価はその約75.8%が「4大生並み、4大生以上」。離職率は13.6%。学生の将来を後押しできていると感じています。

しかし「入口」が課題です。自動車のEV化などが取り上げられ、「金型やものづくりに未来がない」と思う人もいますが、そんなことはありません。世の中の多くの物が金型からできていますし、製造業は今なお日本の基幹産業です。

「金型やものづくりの魅力を知って欲しい」。その思いから当校では学園祭で様々なものづくりを体験できる企画を催しており、地域の大人や子ども約3千人が訪れます。それが金型やものづくりに興味を持ってもらえる機会になれば。そう願っています。

金型新聞 2022年8月10日

関連記事

オギハラ 長谷川 和夫 社長<br>〜新素材の金型に挑む〜

オギハラ 長谷川 和夫 社長
〜新素材の金型に挑む〜

いかにトライ数を減らすか ―アルミ材用金型に取り組んだきっかけは。  「1988年にホンダのNSXに関わったのがきっかけ。オールアルミボディを採用した自動車で、当社では一部の金型を手掛け、量産はほぼ全てのアルミ部品の生産…

倉敷機械 1台で複数加工がこなせる機械、金型加工の効率化を実現

工作機械メーカーの倉敷機械は、金型加工の効率化を実現する機械の提案を強化している。 今年1月には5軸マシニングセンタ(MC)に横中ぐり機能を搭載した「KTR‐1200」を発売。この新型は中ぐり主軸を繰り出すことで、特殊工…

次代の人材確保するため、地域を巻き込んで金型の魅力感じてもらう 上田幸司氏(明星金属工業 代表取締役社長)【鳥瞰蟻瞰】

日本の金型の未来を担う人材。それは今、危機的状況を迎えています。少子化が進み、就職する学生の数が減り続けている。当社のある大阪府でも特に公立工業高校で定員割れが相次ぎ、数年後にも数校が廃校します。もの作りに興味を持つ高卒…

ユーザーとの距離近づけ 高付加価値化を提案
岡本工作機械製作所 石井常路社長

 研削盤メーカーの岡本工作機械製作所(群馬県安中市、027-385-5800)は今年5月、新たに3カ年の中期経営計画を発表した。新中期経営計画の達成に向けた基本戦略の一つとして「顧客付加価値強化」を挙げる。「今まで以上に…

新栄ホールディングス 金型の新会社を設立

プレス加工メーカー3社を傘下に持つ新栄ホールディングス(東京都中央区、03・5843・6096)は昨年8月、傘下のアポロ工業(埼玉県吉川市)の金型部門を切り離し、アポロ技研(同)を設立した。金型の設計、製作に加え、メンテ…

トピックス

関連サイト