脱炭素社会に向けた取り組みがものづくりで加速し、金型業界でもその動きが広がりつつある。先手を打つ金型メーカーの対応には大きくは2つの方向性がある。一つは、太陽光パネルの設置や設備の省エネ化などによる自社の生産活動でCO2…
5軸加工機の活用を推進する金型メーカーの工場長が語る ”工場長”に必要なものとは?【特集:工場長の条件】
時には経営者、時には教え諭す教育者—。工場長には多様な役割が必要だ。こうしたマルチタスクをこなすために、どのようなことを意識しながら、責務を果たしているのか。現役工場長に、工場長としての哲学を聞いた。
改善へ、尽きぬ探求心
エフアンドエム 生技開発部長 古市和人氏

ふるいち・かずひと
元大工。CADの技能を生かせる仕事を、と2006年エフアンドエム入社。5軸加工機の活用を推進した。13年生技開発部長。1968年生まれ、富山県出身。
理想と現場の仲介役
工場長に必要なもの。それは「探求心」だと感じています。現状のやり方に満足せず、より良い方法は無いかと探す。見つけた技術を実用できるか研究し、挑戦し続ける。そうした改善への尽きぬ探求心が大切だと思っています。
それは工場長の探求心が金型の品質やコスト競争力、そして会社の成長に影響するからです。現場(工場)の技術力や生産性は金型の品質やコストに直結している。現場の責任者である工場長が現状に甘んじたら、事業も伸びません。
自動車骨格部品のアルミ押出金型を手掛ける当社は、常に先んじて新たな技術を取り入れ高みを目指してきました。その一つとして18年前に導入したのが5軸加工機でした。その翌年に私が入社し、立ち上げを任されました。
私は金型づくりの経験がありませんし、5軸機も当社にとって初めて。知識も経験も技能も常識も実績もない。何もない状況の中、まさに手探りで取り組みました。何度もトライ&エラーを重ね、課題解決の糸口を探る。発想力や根気のいる日々が続きましたが、数年後に実用にこぎつけました。
しかし当社の代表(市井宏行氏)は5軸機を増設する際、3台目からは同じ機械を買わない。慣習化による技術革新の停滞を防ぐための方策なのですが、現場はまたその機械の立ち上げをゼロからスタートしないといけない。ゴールはゴールではなくスタート。再び次の技術課題への挑戦が始まるのです。
そうした終わりなき挑戦で大切なのが、もっと良い方法は無いかと探求する姿勢です。持ち得る知識やノウハウと新たな技術を組み合わせ、課題をどうにかして解決しようと挑む。そして、そんな未知の課題への挑戦を楽しめることです。
それと、これからは情報力がさらに重要になると感じています。DX、自動化、ロボットなど金型づくりに関連する技術は進化し続けています。最新情報をいかに知っているか。それが改善の次の手を打つ選択肢の幅を広げます。
ただ、そうした未知の課題への挑戦は現場の技術者に無理を強いることもままあります。ときには会社の方針(理想)と現場の声をすり合わせて実現の道を探らなければならない。ですから工場長には理想と現場を仲介する力も必要です。
金型新聞 2022年10月10日
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