金型技術活かし自社商品をヒットさせた 『日本一の金型職人になりたい』と、金型製作に没頭した若き日の澤井健司社長。町工場が集積する大阪・八尾で金型作りに励む日々だったが、ひょんなことから独立し、ケーワールドismを設立。…
日型工業 金型技術ライセンスを供与 知財戦略でビジネスモデル変える【金型の底力】
金型を売り切るだけでなく、金型技術を活かし、収益をどう安定化させるかー。金型メーカーにとって普遍的な課題だ。鋳造型を手掛ける日型工業は独自技術を他社にライセンス供与し、収益化につなげている。「多くの人に使ってもらうことで、顧客の課題を解決につなげる」(渡辺隆範社長)ことも狙いだ。今後は鋳造で培った知見を基にダイカスト型への参入し、事業の柱を太くする考えだ。




鋳造で使われるシェル中子型は280℃前後まで金属を加熱して成形するため、熱の影響を大きく受ける。この熱で金型がひずみ、成形不良を引き起こすことが長年の課題とされてきた。
独自開発した「高機能金型」はこの熱ひずみを抑える技術(特許取得済)。金型に組み込んだシート型のヒーターや棒ヒーターで金型を加熱。高炉で耐熱用として使われている断熱材を金型に組み込み、金型表面からの放熱を防ぐ仕組みだ。
これらにより、金型の内部温度を一定にすることに成功した。成形ムラを無くし、精度向上、バリレスにつながる。最も効果が高いのがサイクルタイムの向上で、あるユーザーでは80秒を30秒に短縮できたという。
こうした効果に加え、二酸化炭素削減にも貢献する。金型の保温効果が高く、金型を温める回数が減るためだ。「電力量の25%カットに成功した事例もある」(渡辺社長)。
高機能金型は従来の金型に比べ、「2割程度高くなったが」が、こうした機能が評価され、3年前にある自動車部品メーカーに採用が決定。その後も着実に採用が決まり、現在は6社のユーザーで使われているという。
着実に受注を伸ばす中で、昨年には初めて同業他社へのライセンス供与に踏み切った。きっかけは大手トラックメーカーでの採用だ。「到底当社だけで対応できない量だった上、過去からの取引の関係もあり、他社にお願いせざるを得なかった」。
ユーザーにも相談した結果、その金型は日型工業では作らず、他社にライセンスのみを供与する形にした。供与先の金型メーカーがユーザーに販売した金型の売上の内5%をライセンス料として受け取る。同社としては、製造コストなしで、5%の利益を享受できることになる。
収益面での貢献もさることながら、渡辺社長は「技術が広がることもうれしい」という。「顧客が抱える課題を解決する」が同社のスタンスで、「広がれば広がるほど、熱による課題を抱えるお客様の課題が多く解決できる」からだ。
こうして高機能金型を収益の安定化につなげる一方で、現在模索しているのが、ダイカスト金型への参入だ。過去には実績はあるが、「そう多くない」。最近、ある自動車メーカーから技術支援を受けながら、ダイカスト金型の設計を強化。「技術を磨く必要があるが、特定の金型なら問題なく、作れるようになってきた」。
中でも今後視野に入れるのが大型の金型だ。「1万トン超の成形技術『メガキャスト』とはいかなくても、一体化などで、ダイカストの大型化ニーズは高まる」とみる。ダイカスト金型でも、高機能金型のように顧客の課題解決策を提案していく考えだ。
会社の自己評価シート

「高機能金型」に代表されるように技術力やそれを支える人材、チームワークは強みだと回答。また、ダイカスト型への挑戦や投資も強みとみている。一方で、こうした能力をPRする力が今後の課題となりそうだ。
会社概要
- 本社:埼玉県川口市南鳩ヶ谷3-20-15
- 電話:048-283-6111
- 代表者:渡辺隆範社長
- 創業:1966年
- 従業員:30人
- 事業内容:重力鋳造金型、低圧鋳造金型、砂型鋳造金型、ダイカスト金型の設計製作など。
金型新聞 2023年1月10日
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