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EV化が進む中、金型メーカーはどう動くか?【特集:自動車の電動化とダイカスト】

自動車の電動化はダイカスト業界に大きな変化をもたらし始めている。バッテリーEVが増えるとエンジン関連の金型の減少は必至だ。一方で、バッテリーケースのアルミ化や、シャシーなどを一体造形する「メガキャスト」などで金型の大型化が進むとの見方は強い。こうした変化に大型を強みとするダイカスト金型メーカーはどう対応するのか。小出製作所(静岡県磐田市)と米谷製作所(新潟県柏崎市)を取材した。

米谷製作所 大型MCを導入

まず、需要の変化をどう判断しているのか。米谷製作所の米谷強社長は「エンジン関連が少なくなる代わりに、構造部やバッテリーケースなどの金型が増える」とみる。これらの部品はエンジン関連よりも大きく、ダイカストマシンで4500tくらいになるという。小出製作所の小出悟社長も同意見だ。「まずはバッテリーケースのアルミ化など2000㎜サイズの金型が必要になる」。

さらに「日系自動車メーカーでも国内でメガキャストの設備を決めたと聞く。金型がどう変化するのかはこれからだが、もっと大きくなる可能性は高い。現在手掛ける3500tクラスは中型になるかもしれない」。

導入した牧野フライス製作所の大型5軸「D2」
刷新した1500tのダイカストマシンで試作需要を取り込む

では大型化の波にどう対応していくのか。米谷製作所では牧野フライス製作所の大型5軸マシニングセンタ(MC)「D2」(写真)を導入。「構造部の金型は深く入り組んだものが多く、高さ方向の大型化が必要。そこで短い工具で安定して加工できる5軸加工が不可欠になる。『D2』はZストロークが1000㎜あり、従来よりも深い加工ができる」。

さらに同社では、試打用として25年前に投資し、長く使っていなかった、1500tのダイカストマシン(写真)を使えるようにした。「試作案件を取り込む」(米谷社長)狙いだ。

小出製作所 長崎に工場取得

小出製作所はまだ設備を投資していないが、大型を見据え動いてきた。21年に長崎に造船工場だった大型の物件を取得。静岡の本社にあった芝浦機械の門型MCや倉敷機械の横中ぐり盤など大型設備を移管した。長崎では60tのクレーンの設置も可能だという。

大型化に舵を切る両社だが、課題は大きくなる投資負担。米谷社長は「今回の投資は1億円超。大型加工を広げていくには1社では限界」と指摘する。小出社長も「60tのクレーンは一基1億円。需要の本格化がまだの状況で、簡単に投資できる額ではない」。

大型化でクレーンも重要
大型設備への投資必要に

設備負担を減らすために、両社が考えるのが「連携」だ。米谷製作所は国内でも協業先を開拓する一方、海外で先行させている。21年にはジョージフィッシャー中国と提携し、仕事や技術のやり取りを行うほか、北米とも現地の金型メーカーと協力している。

小出社長も「すでに大型機を持つ大型プレス金型メーカーとの協業も一つ」という。同社の場合、韓国で大型プレス金型を手掛けるグループ会社があるため「まずはグループ会社と設備共有を検討したい」と話す。

では、この大型化はどの程度の速度で進むのか。米谷社長は「レースで言えば、自動車メーカー各社が第1コーナーに差し掛かったところ。各社がどうコーナーを抜けてくるかで今後の展開が見えてくる。それが25年頃だと思う。自動車メーカーの動向を押さえつつ、準備はしておかないといけない」という。

小出社長も近しい見方だ。「大型の金型が増えるのは今年か来年か。遅くとも25年には間違いない」と話す。ただ、「こうした需要が増えても『国内で作れない』という状況になるのはまずい。コンソーシアムを組み設備を共有するなど、業界を挙げてインフラを整える必要がある」。

米谷製作所

  • 本社:新潟県柏崎市田塚3-3-9
  • 電話:0257・23・5171 
  • 代表者:米谷強社長
  • 創業:1934年
  • 従業員:95人
  • 事業内容:自動車エンジン、トランスミッション、構造部品の鋳造金型設計製作(DC型、GDC型、LP型、シェル型)

小出製作所

  • 本社:静岡県磐田市森本1045
  • 電話:0538・37・1147
  • 代表者:小出悟社長
  • 創業:1963年
  • 従業員:80人
  • 事業内容:エンジンブロックなど大型のダイカスト金型の設計製造

金型新聞 2023年3月10日

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