デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)。金型でもその重要性は誰もが認めるところ。しかし、金型づくりでは、人が介在する部分が多かったり、デジタル化を進めづらかっ…
新しい価値の金型を
キヤノンモールド 斎藤憲久社長に聞く
キヤノンモールドが発足したのが2007年。前身のイガリモールドとキヤノンの金型部門で伝承されてきた技能や最新技術など互いの得意分野の融合を図ってきた。「新しい価値を生み出す金型メーカーを目指したい」と語る、昨年4月に同社の社長に就いた斎藤憲久氏に、現状や目指すべき方向などを聞いた。
友部と阿見の長所を融合
(旧イガリモールドの匠の技能)×(旧内制部門の自動化など先端技術)
1980年キヤノン入社、01年生産技術研究所 機械加工研究部長、07年生産設計技術センター 生産設計部品技術部長、11年生産設計技術センター所長、16年成形技術開発センター所長、生産技術本部副本部長、18年キヤノンモールド代表取締役社長。

1980年キヤノン入社、01年生産技術研究所 機械加工研究部長、07年生産設計技術センター 生産設計部品技術部長、11年生産設計技術センター所長、16年成形技術開発センター所長、生産技術本部副本部長、18年キヤノンモールド代表取締役社長。
発足から12年、就任から1年経過しました。まず概要を教えてください。
茨城県に2つの事業所があり、友部事業所が旧イガリモールドで、医療機器、自動車部品から日用品まで幅広いプラスチック金型を製造している。また、阿見事業所がキヤノンの旧内製部門であり、主に事務機やカメラの精密部品など高精度なプラスチック金型を手掛けている。それぞれの長所の融合を今後も加速させる。
それぞれの長所とは?
友部は旧イガリモールドの文化を色濃く受け継いでおり、金型を一つひとつ丁寧に人の手でつくり上げるというこだわりが強い。キヤノンには優れた技能者を「名匠」とする認定制度があり、全国で30人ほどのうち当社には8人の名匠がいる。うち2人は国が定める「現代の名工」に選ばれ、「黄綬褒章」も受章した。匠の技をしっかり継承するため、人材育成の「道場」を友部に設けている。
一方、阿見はキヤノンの自動化や3D一貫システムなどの先端技術を取り入れており、生産技術力が高い。
匠の技能と、最新技術の融合を進めるのですね?
そうだ。ただ、根底にあるのは、金型は品質が全てということ。金型品質はどこにも負けない自信がある。そしてその品質を生み出す技術力を持ってお客様に「信頼と安心」を届ける。これが当社の基本方針。それを強化するために、今後も友部と阿見の長所を融合していく。そして、お客様からの難しい課題にも果敢に挑戦し、新しい価値を生み出す「金型メーカー」を目指す。
新しい価値とは?
新しい技術に挑戦し、高付加価値の金型を提供すること。例えば、20年以上前から取り組んでいるダイスライドインジェクション金型を進化させ、型内組立の領域を拡大できれば後工程の作業をさらに省力化できる。そうなると金型は単なる成形品を作るだけの道具でなくなる。こうした技術に取り組み新しい金型の価値を生み出していきたい。
今後の方向性は?
高付加価値化の一方、コストダウンにも挑戦しなければいけない。自動化を含め徹底した原価低減を進めていく。また、グローバル対応も必要だ。キヤノンのネットワークを活用し、海外展開にも着手していく。さらなる金型事業拡大に向け、現在、友部にある6カ所の工場を集約・刷新し、新工場を建設する計画を進めている。
金型しんぶん 2019年6月7日
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