人材の不足や育成、CASE(コネクティビティ・オートノマス・シェアード・エレクトリック)に代表される自動車産業の変化による影響、台頭する新興国など、日本の金型産業は様々な課題を抱えている。これらに対してどう立ち向かって…
黒田製作所 会長 (岐阜県金型工業組合 理事長)黒田 隆氏
〜鳥瞰蟻瞰〜
若者の興味を引け金型はものづくりの喜びがある
広く知られる業界へ
広く知られる業界へ
若手を育てることは、金型メーカーにとって技術の伝承はもちろん、業界の活性化という点でも大切なことです。量産のものづくりがある限り、マザーツールである金型は不可欠で、金型にはものづくりの原点を創るという魅力が溢れています。それをいかに若者に知ってもらうか。それが次世代の育成における大きな課題だと考えています。
岐阜県金型工業組合は5年前から「岐阜県工業高校生金型コンテスト」を立ち上げ、県内工業高校と協力して、高校生が金型を作り、その金型で製品を作る体験をしてもらっています。組合の金型メーカーにも参加してもらい、高校生とタッグを組んで、金型の面白さや重要性を認識してもらえるように取り組んでいます。これを通じて、毎年40~50人ぐらいが県内の金型メーカーに就職しています。
さらに、金型を知らなかった学校の先生たちも金型への認識を深めたことで、回を追うごとにコンテストに力が入り、ますます活気が出てきました。昨年から少し趣向を変え、金型メーカーが一から教えるのではなく、高校生が自分たちで金型を作ることに専念してもらい、金型への理解度を深めてもらえるようにしています。
金型製作も時代の流れと共に変わってきました。過去は金型職人が1つ1つの金型を作り上げることがほとんどでしたが、それが分業制に変わり、今は機械設備の高度化やIT化で自動化されるようになってきたことで、人材も職人というより設計分野などに長けた技術者が求められ、豊かな創造性や知識を持つことが重要視されています。
ただ、時代は変わっても金型の普遍的な魅力は変わりません。金型は量産のものづくりと異なり、一品一様であるため、常に新しい視点やアイデアがカギを握ります。そのため、本当にものづくりがしたい、ものづくりが好きという人には最適な仕事だと思います。
また、金型は与えられた役割をこなしながら製作していくため、個人の責任感やチームワークが大切で、人の成長にもつながります。学歴を問わず、やる気があればキャリアップができ、定年退職後も経験を活かして、働き続けることができる職業だと思います。
これまでの金型業界は少し閉鎖的で世の中への認知度が低い業種でした。しかし、これからは金型メーカーもオープンになり、知ってもらう機会を設け、若者に興味を持ってもらわなければなりません。理由は人手不足が続いているからです。
「若者は金型に興味がない」とよく聞きますが、そうではないと思います。地道に学校とのパイプを作って信頼関係を構築し、金型の魅力を伝えていけば、金型は面白い、やりがいのある仕事だと若者にも必ず伝わるはずです。それを知ってもらうためにどうすれば良いのか、我々が真剣に考える時が来たのではないでしょうか。
金型新聞 2020年10月2日
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