売れるものをつくる 物価の高い国で勝負 境地まで突き詰めることが大事 〜海外展開〜 1964年生まれ、茨城県出身。大学卒業後、87年大貫工業所に入社。営業で新規得意先を次々と開拓する一方で、得意先とのやり取りを通じて金…
【新春特別インタビュー⑤】稲垣金型製作所取締役・稲垣 武洋氏「イノベーションを起こし新しい収益モデルを創る」
常識にとらわれない金型 イノベーションを起こし新しい収益モデルを創る 〜新ビジネス〜
1975年生まれ、静岡県出身。98年立命館大学卒業後、富士通に入社し、システム販売などに従事。2004年稲垣金型製作所に入社、18年社長、20年12月佐藤グループ(三重県津市)加入により取締役に就任。主に自動車の内装部品向けのプラスチック金型などを手掛ける。従業員は17人。フェイスブックなどSNSを使った企業PRにも力を入れている。

1975年生まれ、静岡県出身。98年立命館大学卒業後、富士通に入社し、システム販売などに従事。2004年稲垣金型製作所に入社、18年社長、20年12月佐藤グループ(三重県津市)加入により取締役に就任。主に自動車の内装部品向けのプラスチック金型などを手掛ける。従業員は17人。フェイスブックなどSNSを使った企業PRにも力を入れている。
「絵画の死」。これは、19世紀初めに写真が発明されてから美術史上で何度となく繰り返されてきた絵画の衰退を表す言葉です。「どんなに精巧な絵を描いても実物を写し出す写真には敵わない。いずれ絵画は無くなるのではないか」とさえ思われていたようです。
では、どうやって絵画は生き残ったのか。それが“イノベーション”です。パブロ・ピカソやマルセル・デュシャンなどといったアーティストたちがこれまでの常識を覆す表現技法や理論を生み出し、新たな絵画を作り出したことで、今日まで絵画が無くなることはありませんでした。
現在の金型産業も会社によっては似たような状況が迫ると感じています。業界を取り巻く環境は大きく変化し、需要面では得意先の海外移転、部品の共通化、自動車の電動化による需要の減少や需要構造の変化が考えられますし、経営面では設備の進化によって差別化が難しくなっています。企業によっては利益が生み出しにくくなっているのが現状です。
それに加えて、3Dプリンタという新たな技術の登場や、新型コロナウイルスの感染拡大によって、製造業に限らず社会全体が大きく変化しました。金型メーカーが今後も生き残っていくには、これまでの常識だけでは通用しなくなっているのではないでしょうか。
「一品一葉」「大量生産のツール」は、長年言われ続けている金型の常識です。我々金型メーカーは50年以上に渡って、この常識のもとで金型を作り続けてきました。仮にこの常識にとらわれないとどうなるのか。その一つとして当社では「多目的評価試験用金型」の開発に取り組んでいます。
多くの自動車や部品メーカーは、開発過程で樹脂成形品の面品位や樹脂の流動性などを見るために評価用金型を製作します。この金型は顧客が違っても形状や評価のポイントは同じようなものが多い。「多目的評価試験用金型」は一つの金型で色々な評価に使うことができます。様々な企業に使ってもらうことで、顧客にとっては製作コストの削減につながり、金型メーカーにとっては“金型レンタル”といった新しい収益モデルの創造も狙えます。とはいえ、これだけで経営は成り立ちません。あくまで「一品一葉」でも「大量生産のツール」でもない金型の一つであって、もっと優れたアイデアはあると思います。
私が伝えたいのは、これまでの常識にとらわれないことで、金型でも絵画のような“イノベーション”が起こせるかもしれないということです。それには私自身も考え方を変え、新しい人材の確保や企業との関係構築に努める必要があります。将来的に現在の開発が一つの答えとして業界の活性化に繋がれば良いと考えています。“イノベーション”によって、金型産業はまだまだ進化、発展できると信じています。
金型新聞 2021年1月10日
関連記事
日本工業大学大学院教授 横田 悦二郎氏に聞く 「ユニット」や「軽量化」がカギ 日本金型工業会で学術顧問を務める、日本工業大学大学院の横田悦二郎教授は「国内に戻る金型は出て行った時と内容は異なり、高度化して回帰している」…
超硬工具や各種超硬素材の製造販売を手掛ける瑞穂工業(大阪市西淀川区、06・6471・4721)は4月、大澤史和氏が代表取締役社長に就任し、新たな船出を迎えた。同社は1944年創業以来、超硬工具や金型の製造に携わり、独自の…
特集 次世代車で変わる駆動部品の金型(バッテリー、モータ、電子部品) 「自動車向けの金型を手掛ける企業は今後、バッテリー、モータ、電子部品、この3部品に携わっていないと生き残れない時代になる」と話すのはプレ…
「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に代表されるように、「百年に一度の変革期」と言われる自動車業界。金型にとってもその影響は大きく、舵取り次第では将来の成長を左右しかねない。特に、金型へのインパ…