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INTERMOLD・金型展・金属プレス加工技術展 総集編

PART1

INTERMOLD編

進む技能レス化

4月14~17日の4日間、東京ビッグサイト・青海展示棟(東京都江東区)で開催された金型加工技術の専門展「インターモールド2021」。工作機械メーカーや切削工具メーカーなどが出展し、金型づくりに関連する最新技術を披露した。今回特に目立ったのは、熟練技能を必要としない加工技術や、微細加工技術、そして「DX(デジタル・トランスフォーメーション」をテーマにした展示だった。今後の金型加工技術はどう進化していくのか。「インターモールド2021」から最新トレンドを読み解いていく。

微細・DX 未来の武器に

切削と研削の複合加工で金型を粗〜仕上げまで加工する(西部電機)
新機種で5軸での微細加工技術を紹介した(三井精機工業)
高硬度材対応4枚刃エンドミルで、磨きレスの鏡面に(MOLDINO)
「金型のDX」をテーマに展示(牧野フライス製作所)

金型製造現場では近年、技能者不足や技能者育成が大きな課題となっている。「インターモールド2021」では、こうした課題を解決する熟練技能を必要としない“技能レス”な加工技術の展示が目立った。

丸物金型を熟練技能に頼ることなく仕上げる提案を披露したのが、西部電機。超精密自由形状研削加工機「SFG28‐UP」を展示し、切削と研削の複合加工(ハイブリッド工法)で、丸物金型の粗~最終仕上げまでをワンチャッキングで加工する提案を紹介した。

一方、ソフト面でも熟練技能を補完する技術がみられた。牧野フライス製作所は、制御装置「マシニングプロセッサ」でNCプログラム作成の自動化を提案した。芝浦機械は、ワークや工具の管理・計測などが可能なオペレータ総合支援ソフト「UVM‐TSA」を展示。新たに工具形状計測に基づいた工具輪郭補正機能を追加した。

機械だけでなく、工具メーカーでも“技能レス”を意識した提案が披露された。MOLDINOは、今春発売した高硬度材対応の4枚刃ラジアスエンドミル「EPDREH4-TH3」で、熟練技能が必要な磨き作業を行わず、切削加工のみで鏡面加工を実現する「磨きレス加工」を紹介した。

こうした“技能レス”の他、車載用電子部品や医療などで需要拡大が期待される微細加工の展示が増加。芝浦機械安田工業碌々産業に加え、これまで微細加工機をラインアップしていなかった機械メーカーも新機種を発表した。

キタムラ機械は、サブミクロンレベルの微細加工が可能なマシニングセンタ「Mycenter-SUPER MICRON(マイセンタースーパーマイクロン)」を展示した。三井精機工業も今年発売の微細加工機「PJ303X」を披露。トラニオンテーブルを搭載し、5軸での微細加工技術を紹介した。

また、近年あらゆる産業で求められている「DX」をテーマにした展示も目立った。牧野フライス製作所は、「金型加工のDX」をテーマにリアル展と同時にウェブ上でセミナーを開催。AIなどデジタル技術を活用した金型加工技術を紹介した。

また、CAD/CAMメーカーのヴェロソフトウェアは、グループ会社が提供するCAEや3Dスキャナも展示。設計から製造、検査まで一連の製造プロセスをデジタルデータの活用によって最適化する提案を披露した。

金型メーカーを取り巻く環境が変化していく中、今回披露された「技能レス」や「微細加工」、「DX」などの技術は、金型メーカーが今後も競争力を高めるための大きな武器となるはずだ。

PART2

金型展編

自動化や離型の新技術

センサや工具の自社製品も

自社企画した切削工具「N-CUT」(中辻金型工業)
自己潤滑性のある成形物「キッブス」(福井精機工業)
金型保全に有効なボルト型センサ「ピエゾボルト」(ヤマナカゴーキン)
精密で複雑形状のプレス部品(大垣精工)

金型展では金型メーカーの独自技術を披露する場となっている。今回は特に自動化や離型性向上につながる提案が多く見られた。また、自社製品の開発や量産も含めた一貫生産体制で新たな販路開拓を進めるメーカーもあり、独自の強みを訴求した。

福井精機工業は超高分子量ポリエチレンに潤滑油を混合し成形した「キッブス」でメンテナンスフリーや自動化を提案。自然と潤滑油が染み出る特性を活かし機械部品や食品機械、人工関節向けに訴求。

七宝金型工業はAM技術で離型剤が染み出る多孔質金型「ポーラス金型」の開発を進め、離型剤の塗布なしで成形を可能にする。ケイプラスモールドジャパンは成形不良対策としてガス抜き入子を提案。金属3Dプリンタで製作するため、様々な形状に対応でき、エアトラップ部や最終充填部のガス焼けの改善事例を紹介。

明和製作所は高圧冷却フィルターの改善を提案。カプラとフィルターを一体化させ、ごみの侵入防止やメンテナンス時にフィルターが抜けず破損するなどの課題を解決。

ヤマナカゴーキンはボルト型センサー「ピエゾボルト」によるIoTで設備や金型保全につなげる取り組みを披露。直近ではユーザーとの試験も増えており、販売面でも期待が広がる。

中辻金型工業は自社企画の超硬スクエアエンドミル「N‐CUT」を出展。被削材SS400からHRC60の高硬度材まで幅広く使用でき、価格面の強みもアピール。

エムエス製作所は医療現場向けにパソコン消毒に活用できる「タッチラップ」で感染リスク軽減をPR。キーボード上にラップを配置し、使用後に新フィルムに置き換える。

また、金型と量産の一貫生産体制を強みとする企業も多い。大垣精工はモーターコアの金型や5D向けの微細精密プレス品を展示。新工場など生産能力増強を図っており、需要が高まるHDD部品に対応する。

松村精型はダイカスト金型から量産まで一貫生産を海外も含め構築。独自の「層流ダイカスト法」鋳造を活かし、肉厚部に鋳巣なく高品質に仕上げる。

三琇ファインツールは得意とする2色成形の金型から量産、品質管理までトータル提案を訴求。精密な加工技術も活かし、精密性が求められる医療機器部品などを披露した。

PART3

金属プレス加工技術展編

新素地、軽量化に対応

海外でのサポート力も

マグネシウム合金深絞り(キョーワハーツ)
厚板材を複雑形状に成形(豊島製作所)
プレス装置も提案(タイヨーアクリス)
CFRPの打ち抜き加工(シミヅプレス)

自動車業界がCASEによって大変革期にある中、金型メーカーだけでなく、プレス部品メーカーも大きな変革に迫られている。こうした中で、20数社が出展した金属プレス加工技術展では、工法転換によるVA/VE提案、新素材への対応や新技術、海外展開への対応など様々な提案が見られた。

板鍛造の技術や製品を紹介したのは豊島製作所(埼玉県東松山市)。板鍛造では、厚板材を複雑形状に成形できることから複数の工程を集約した部品などを展示。さらに、溶接工程を減らすことも可能で、部品の品質向上につながることなどを提案した。

独自のプレス技術「ファインプレス」をアピールしたのは小川工業(和歌山県橋本市)。金型にくさびを用いないため、板材以外の切り離された素材からの100%せん断加工ができる。このため、端材を減らすことにもつながるという。

電動化への対応や、軽量化などで新素材が重要になっている。こうした背景から、ソーデナガノ(長野県岡谷市)リチウムイオン電池の防爆安全弁の部品を展示。自動車業界だけでなく、医療部品などにも展開を図るシミズプレス(群馬県高崎市)はCFRPの打ち抜き部品を展示した。精密プレスを強みとするキョーワハーツ(神奈川県横浜市)では、マグネシウム合金の深絞り部品を出展した。

金型以上にプレス部品では、現地調達の流れが強まっていることから、海外展開やサポート力をアピールするメーカーも目立った。自動車用プレス部品の正栄工業(神奈川県川崎市)では、メキシコ工場の一部を拡張中で、日系部品メーカーに対して、カーナビ部品や自動車部品の供給量を引き上げるという。

PART4

出展各社の見所、小出会長(日本金型工業会)がレポート

金型産業への思いを語る牧野フライス製作所:井上社長
社長として意気込みを語るMOLDINO:鶴巻社長

新型コロナの感染が拡大し金型関連企業も県外への外出を自主規制する動きが広がる中、インターモールド2021では初の試みとして開催初日の4月14日、展示会場の様子を撮影し、オンラインでライブ配信を実施した。

同展を主催する日本金型工業会の小出悟会長は「コロナ禍で来場出来なかった人にも、新情報を得てもらいたい」と挨拶。自らレポーターを務め、出展各社のブースを訪問し、出展製品の見どころや開発コンセプト、意気込みを聞き、来場できなかった人に、画面を通して会場の雰囲気を伝えた。

牧野フライス製作所のブースでは、井上真一社長が出演した。金型産業に対して、「金型メーカーの皆さんにここまで育てて頂いた。これからは、こちらが恩返しをする番。総力を挙げて、金型メーカーさんの力になれる製品を開発していく」と語った。

MOLDINOのブースでは、今年の4月に社長に就任したばかりの鶴巻二三男氏が登場。小出会長に社長としての今後の意気込みを聞かれ、「工具メーカーとしての長い歴史の中で、開発技術を研ぎ澄ませてきた。今後もさらにそれを研ぎ澄ませながら、金型メーカーさんとも協力して時代に乗り遅れないようにしたい」と語った。

その後、約1時間30分かけて計11社の出展者のブースを訪問した。ブース紹介の様子はオンデマンド配信もされており、YouTubeで観ることができる。動画の全編はこちらから。

PART5

学生金型グランプリ

オンラインで成果発表

プレス金型部門の課題「モーターコア」
プラスチック金型部門の課題「名刺ケース」

 金型づくりを学ぶ学生が出題テーマの金型を設計・製作し製品を成形するまでの取り組みを発表する「第13回学生金型グランプリ」が4月15日、オンラインで開かれた。プラスチック金型部門で4校、プレス金型部門で4校がエントリーし、両部門で岩手大学が金賞に輝いた。

 学生金型グランプリはこれまで、インターモールドの会場に参加校が金型や成形した製品などを展示し、セミナー会場などでその成果を発表してきた。しかし今回は新型コロナ感染対策のためリアル開催はせず、参加校をウェブでつなぎライブ配信した。

 出題テーマは、プラスチック金型部門が複数の穴形状のある名刺ケース、プレス金型部門がモーターコア。参加校はそれぞれ名刺ケースの表面がきれいになるアイデアや、効率良く積層する工夫などを発表。そのうち最も金型の設計や製品の仕上がりなどが良かった岩手大学の発表が評価された。

 金賞を受賞した岩手大学のプラスチック金型部門にエントリーした幅上奈央さんは「課題がとても難しく、失敗しては何度も挑戦しました」。プレス金型部門に参加した斎藤隆幸さんは「研究を通じ様々なことを学びました。この経験を社会に出てからも生かしたい」と話した。

参加校と受賞

プラスチック金型部門

  • 岩手大学(金賞)
  • 大分県立工科短期大学校(銀賞、GOOD成形品賞)
  • 大阪電気通信大学(銀賞、型構造賞)
  • 山形県立産業技術短期大学校(銀賞、GOODプレゼン賞)

プレス金型部門

  • 岩手大学(岩手大学)
  • 大分県立工科短期大学校(銀賞、GOOD成形品賞)
  • 大阪工業大学(銀賞、GOODプレゼン賞)
  • 岐阜大学(銀賞、型構造賞)

金型新聞 2021年5月14日

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