金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

AUGUST

27

新聞購読のお申込み

魚岸精機工業 「低廉化金型」で「古くて新しい」課題を解決

ロットに応じ金型を安く

魚岸成光社長

低廉化金型を開発

複数のバリエーションで成形した製品
金型の熱応力を解析

自動車部品などのダイカスト金型を手掛ける魚岸精機工業は、ロット数に合わせて、金型の価格を安くする「低廉化金型」の開発に成功した。ある金型では従来に比べて最大45%安くなるという。建機など小ロットでの需要が多いユーザーの開拓につなげる。さらに、型保管問題の軽減や、部品を再利用できる仕組みも構築する考えで、顧客企業の環境負荷低減の提案にもつなげる狙いだ。

「ショット数が少ないのだから型費を抑えて欲しい」—。こうした要望は昔から存在する。試作型なら可能でも、本型では、材料、型設計、型構造などを大きく変えられないため、実際には難しい。今回開発に成功した「低廉化金型」はこうした「古くて新しい」課題の解決つなげる。  

開発は戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)を活用し、地元のダイカスターと協力。「加工ノウハウや型構造、材質を全て見直した」(魚岸成光社長)ことで、「500個の成形品が必要な金型で価格は45%、リードタイム4割減」を実現した。1000万円の金型なら、型費は450万、納期3カ月が2か月弱になる計算だ。

現在は500個用の金型だけだが「1000、3000、15000、20000個の成形数に合わせた5つのパターンを用意する」という。精度やショット数など顧客の要求に合わせるため、金型材質や表面処理など複数のバリエーションを試した金型を製作している(写真)。

精度や強度、保証数などは「顧客と相談の上、どのパターンが最適なのか詳細を詰める」ようにし、まずは、建機や農機など小ロットの要求が多いユーザーの開拓につなげる。さらに「試作型との価格差も少ないので、(本型と仕様が異なる)従来の試作型とは違い、本型同様の試作型としても提案したい」と顧客層を広げる考えだ。

開発の契機となったのは「ユーザーからの要望」だが、「長期的に金型を取り巻く環境を考えた」からだという。「電動車の登場などで部品の共通化が進み、生産数の増える部品もある。一方で、日本では昔のような大量生産は減り、少量生産が増える」とみる。

こうした変化に金型メーカーとしてどう対応していくべきなのか。魚岸社長は「共通化で増える部品には長寿命化など、これまでの金型技術を磨けばいい。少量生産時代でも利益を出せる体質にするには『低廉化金型』は必要だった」と話す。

ショット数ごとの金属組織を観察

もう一つの狙いが型保管への対応だ。「必要な数だけ成形した後に、型を廃棄できればその負担がなくなる。いずれ必要ならまた安く作ればいい」という。しかし一方で、金型部品のリサイクルも念頭に置いているという。

低廉化金型を5つにパターン化させ、ある程度部品を共通化させたのもそのためだ。部品を統一できればコスト削減にもつながる。さらに顧客が廃棄する金型を引き取り、使える部品を再利用することも検討する。「そうすることで、コストもさらに低減できるし、環境負荷低減にもつながる」。低廉化金型を単にコストだけでなく、環境負荷低減という新たな価値創造にもつなげる考えだ。

会社の自己評価シート

低廉化金型の開発に代表されるように「チャレンジ精神」と、それを会社全体で取り組む「チーム力」も強みだと分析。創業75年以上5000型超の実績による「技術力」も強みだと評価した。

会社概要

  • 本社 : 富山県射水市北高木118-1
  • 電話 :0766-52-5222
  • 代表者 :魚岸成光社長
  • 創業 :1946年
  • 従業員 :62人
  • 事業内容:ダイカスト金型及び各種金型の設計・製造、航空機部品加工

金型新聞 2022年3月10日

関連記事

【ひと】ベントム工業社長・本田大介さん システム会社を立ち上げた金型経営者

システム会社立ち上げた金型経営者  クラシック音楽事務所の営業から父親が創業した鋳造・ダイカスト金型メーカーに転職。会社を受け継いだ後、工程管理を手掛けるシステム開発会社を設立した。異色の金型経営者だ。  入社した当初は…

大型金型部品を精密に
伊藤英男鉄工所 伊藤友一取締役

設計から検査まで一貫対応  三重県桑名市の伊藤英男鉄工所はダイセットなど大型金型部品の精密加工を強みとする技術者集団だ。手掛けるのは、2500×4000×1300㎜クラスのダイセットの全加工から航空機部品まで幅広い。マシ…

平和電機 工業用ヒーターの技術集団[金型応援隊]

射出成形機や押出成形機、各種金型に欠かせないもの、それは工業用ヒーターだ。バンドヒーターやマイクロシーズヒーター、カートリッジヒーターなど工業用ヒーターを手掛ける平和電機は長年培ってきたノウハウを活かし、顧客の課題解決に…

不二精工 淡路島で新工場を稼働し、大型化対応や研究開発を強化【金型の底力】

同社は1920年の創業で、接点などの電子機器向けのプレス部品を強みに業容を拡大してきた。近年は、車載部品での採用も進んでおり、その精密な金型とプレス技術は世界中で認められている。 例えばスマートウォッチに搭載された気圧セ…

金型磨きロボット開発<br>近畿大学・理工学部 原田 孝教授

金型磨きロボット開発
近畿大学・理工学部 原田 孝教授

パラレルで力制御、高速・高精度  金型を自動で磨くロボットはかねてから望まれ、機械メーカーや研究機関が開発に挑んできた。近畿大学理工学部の原田孝教授もそのひとり。昨年、パラレルリンクやDDモータにより微妙な力加減を緻密に…

トピックス

関連サイト