金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

21

新聞購読のお申込み

「常識にとらわれない挑戦が競争力の源泉」エフアンドエム代表取締役・市井宏行氏

事業を継続するために
常識にとらわれず挑戦する
それが競争力の原動力に

変わり者とか常識外れとよく言われます。世の中であまり知られてない頃に5軸加工機を購入したり、たびたびCAD/CAMや工作機械の機種を変えたり。どうも周りの人には理解しにくいようです。けれどそれは全て事業を継続するためにロジカルに導き出した答えです。

5軸機は今から17年前、初めて導入しました。当時、日本ではそのメリットがあまり知られていなかった。それなのに導入したのは他社に先駆けて使いこなすことができれば将来、大きなアドバンテージとなり得ると判断したからです。

初年度は稼働率を度外視し応用技術の研究に専念しました。応用の道が見えてくると少しずつ金型の加工に展開しました。その後は加工品質や生産効率を高めることに貢献したり、5軸でしか実現できない構造を金型に採用することで耐久性が改善しお客様に喜ばれたり。結果的に大活躍しています。

CAD/CAMや工作機械の機種もよく変えます。追加や入れ替えで既存と同じものを選ぶのが一般的ですが、それだと技術の進歩が無い。一方その時代の最新のものを導入すれば最新の技術を得ることができる。そのたびに現場は苦労するのですが、それが刺激となり技能につながります。

前例が少ない失敗するかもしれないことをなぜするのか。それは「事業の継続」を最優先して考えた最善策だからです。当社は社員数15人の自動車部品のアルミ押出金型メーカー。大企業のように大規模投資によって効率化したり技術開発したりすることはできません。

小さな会社が勝ち残るには、独自の強みを持ち、その分野でほかの会社を大きくリードする。価格ではなく技術力で競争する。競争相手の少ない得意なゾーンで勝負し、けっしてボリュームゾーンに入らない。そのために、ときには常識外れに挑むことも必要です。

常識にあまりとらわれないのは私の生まれながらの性格に加えて当社の特異な生い立ちや父の考え方に影響を受けていると感じています。当社は1991年、アルミ製品メーカーの金型技術者だった父(市井収氏)が自動車メーカーから金型開発の依頼を受けて創業しました。

しかし創業メンバー4人のうち私を含む3人は金型づくりの経験が無かった。そこで始めたのが擦り合わせの要らない金型づくりでした。CAD/CAMやNC工作機械を駆使して金型を加工し、できる限り職人技の領域を減らしました。当時は擦り合わせするのが当たり前ですから珍しがられました。

それに、かねてから父は人の技能の依存度が高い金型づくりに疑問を抱いていました。金型の本来の価値は職人の技によって精緻に作り上げることではなく、品質の良い製品を安定して量産すること。それを実現できれば作り方はどんな方法でも良い、と。

父はよく「やってみないとわからないことは、やってみないとわからない」と言いました。常識外れのことをする時はもちろん、リスクの可能性を突き詰めて考えます。ですが必要以上に臆病にならず、チャレンジを続けていきたいと思っています。

いま密かに心待ちにしているのが、家にいながらにして工場にいる感覚で工作機械を操作し、振動や臭いを感じ、トラブルなどにも対応できる仕組み。これが実現したら働き方をもっと柔軟に変えることができる。もし実現したら、誰よりも早く導入して使いこなしたいですね。

金型新聞 2022年4月10日

関連記事

「なりたい自分になれるかも」金型メーカーに就職した女性広報

狭山金型製作所 総務部 東香奈恵さん 総務部で営業のサポートや動画によるマニュアル作成などを担当する。そうした「本業」に加え、インスタグラムやフェイスブックなどSNSで狭山金型の日常や取り組みを発信する金型メーカーでは珍…

【インタビュー】冨士ダイス 社長・久保井 恒之社長「順応力を持った企業目指す」

今年4月、ダイスなど超硬合金製の耐摩耗工具や金型を手掛ける冨士ダイス(東京都大田区、03-3759-7181)の社長に就任した。自動車産業の大変革など同社を取り巻く事業環境が加速度的に変化する中、「変化に対して順応力を持…

サンワ金型 量試一貫のサポート体制構築【金型の底力】

シェアリングで新たなモノづくりを プレス金型やプラスチック金型などを手掛けるサンワ金型は同じく安城市内に新工場を建設し、11月に稼働する予定だ。同社はプレスやプラスチック金型で培った高硬度材加工や3次元形状加工を強みに、…

仕事は基本に忠実で 深見克彦氏(エムエス製作所)【この人に聞く】

自動車のウェザーストリップなどゴム金型を手掛けるエムエス製作所(愛知県清須市)は人材育成に力を入れ、『現代の名工』や『あいちの名工』、国家検定資格の1級技能士を多数輩出している。2023年にNC旋盤工で『現代の名工』を受…

試作回数を半分に削減 大阪銘板【特集:シミュレーションの使い方再発見!!】

自社商品の生産性アップ 大阪銘板は自動車などのプラスチック内外装製品などを中心に金型から成形、二次加工までを手掛ける。グループ全体で4つの生産拠点を持ち、型締め力100~2000tクラスのプラスチック製品を生産している。…

トピックス

AD

FARO 樹脂成型品や自動車シートの測定での3次元測定アームの活用と新製品Qua...

樹脂成型品の工程管理・不具合解析 樹脂成型品の工程管理や不具合解析の現場では、実際の製品や試作品と設計図との差異把握や、製品や金型の工程ごとの変化量把握、不具合解析や要因分... 続きを読む

関連サイト