成形技術の進化で変わる金型 構造部品など増える 電気自動車(EV)が金型づくりにも大きな影響を及ぼすことは間違いない。とりわけ、エンジンがなくなることでダイカスト型の減少を懸念する声も多い。元リョービで、日本ダイカスト…
EVシフトでダイカストの活用領域広がる【特集:自動車の電動化とダイカスト】
自動車のEVシフトが加速している。ある調査会社によると、2022年のバッテリー式EV(BEV)の世界販売台数は約780万台で、自動車販売全体の10%に達したという。自動車メーカー各社もEV関連の開発に注力する中、影響を受けるのがエンジンやトランスミッションで大きな割合を占めるダイカストだ。需要の減少が危惧される中、ダイカストメーカーや機械メーカーは新規分野の開拓に向けて取り組みを進めている。
アルミダイカストで車体の軽量化に貢献
昨年11月にパシフィコ横浜(横浜市西区)で開催された「日本ダイカスト展示会」ではダイカストメーカーや機械メーカー、金型メーカーなど150社以上が出展。会場内ではEVシフトに伴う新規分野を開拓する動きが多くみられた。
アーレスティとリョービのダイカスト大手2社は電動化部品とボディ・シャシー部品を展示した。電動化部品で多かったのはモータやバッテリーなどを収納するケース関連。リョービは大容量バッテリーが収納可能なバッテリーケースなどを展示。アーレスティもVCUケースなどを披露した。
一方、ボディ・シャシー部品ではこれまでプレス成型で作られていたショックタワーやインナーなどの製品をアルミダイカストに置き換える提案が披露された。アーレスティはショックタワーのほか、ドアインナーフレームなども展示。4000tクラスの既存設備で対応できる車体部品に注力しているという。リョービも3500tのダイカストマシンで製作したフロントサブフレームなどを展示した。
BEVはバッテリー重量が大きいため、車体重量はガソリン車の1・5~2倍になると言われ、航続距離を伸ばすためにも軽量化は必須とされる。板金製品よりも軽いアルミダイカスト製品は車体の軽量化に大きく貢献することが期待されている。
すでにアメリカのEVメーカー、テスラは超大型ダイカストマシンを導入し、車体を一体鋳造する技術を取り入れている。「日本ダイカスト展示会」でもUBEマシナリーが6500tの超大型ダイカストマシンのパネルを展示。同社ではこれまで4000tが最大だったが、需要拡大を見込み、同機種を開発した。今後、自動車メーカーに売り込んでいくという。
電動化部品やボディ・シャシー部品、そして大型化などのトレンドが見られた一方で、本格的に動くのはまだ少し時間がかかりそうだ。あるダイカストメーカーは「自動車メーカーも開発を進めている段階で、今後の動向を注視しないといけない」と語る。また、ボディ・シャシー部品のアルミ化についても「自動車メーカーが採用するかどうか次第」とみる。
とはいえ、自動車向けアルミダイカスト製品の活用領域が拡大しているのは間違いない。自動車の電動化によって、ダイカストの進化は今後さらに加速するだろう。
金型新聞2023年3月10日
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