金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MARCH

26

新聞購読のお申込み

スコープ3の対応進む【特集:カーボンニュートラルに向けたはじめの一歩】

2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル(CN)」の実現を目指す動きが加速している。欧州の規制強化などに伴い、サプライチェーン(供給網)全体でのCO2排出量を示す「スコープ3」への対応を進める企業が増加。国内の自動車メーカーは、CO2排出量の把握・削減を取引先に求め始めており、金型メーカーも無関係ではない。また、足元では電気料金の高騰が企業経営を圧迫しており、CNの有無に関わらず、エネルギー使用量削減に取り組む必要がある。

※トヨタ自動車資料より引用

供給網全体で脱炭素達成へ

2050年のCN実現に向け、直接的または間接的なCO2排出量を示す「スコープ1、2」に加え、サプライチェーン全体での排出量を示す「スコープ3」の対応を進める企業が増えている。背景にあるのは、欧州を中心とした「スコープ3」開示への動きだ。

ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)は6月、気候変動に関する情報開示の国際的な基準を公表。この基準に従う企業は、今後「スコープ3」の開示が必要になってくる。

規制が厳しい欧州などグローバルにサプライチェーンを持つ世界の大手企業は、「スコープ3」の削減に先行して取り組んでいる。米アップルはサプライヤーと協力し、2030年までに全世界のサプライチェーンをCNに転換することを発表した。同社の200社以上のサプライヤーは、すべてのアップル製品製造時に風力や太陽光などのクリーン電力使用を約束しているという。

日本の自動車メーカーも「スコープ3」を視野に入れ、脱炭素化を進める。トヨタ自動車は2050年に向けて、ライフサイクル全体でCN実現を目指している。サプライチェーン全体でCNへ取り組み、製造や物流なども含めたCO2排出量を削減する。

また、同社は5月に開かれた「人とくるまのテクノロジー展」で、CNをテーマに講演を行った。講演では、CN先行開発センターの荻村友彦氏が、仕入先との連携について言及。サプライチェーン全体でのCO2排出量の見える化を目指し、ティア1(一次サプライヤー)の総量把握から、品目単位の把握まで検討している。これに加え、同社のノウハウを仕入先と共有し、CO2削減活動を共に行っていく考えだ。

ホンダは2050年に、同社が関わるすべての製品と企業活動を通じたCNを目指している。日産自動車も材料採掘から製造、走行、廃棄に至る車のライフサイクル全体におけるCNを2050年までに実現する目標を発表した。

風力発電機 ※トヨタ自動車資料より引用

電気代高騰、喫緊の課題

こうした国内外の動きは、金型メーカーも無関係ではない。すでにCO2削減、排出量把握の要請を受けた企業も出てきている。ある金型メーカーでは取引先から前年比約27%のCO2排出量削減を求められたという。要請に応じられない場合、取引停止や罰則といった厳しい措置ではなく、製造現場に入り、改善点や対策を教えてくれるケースもあるようだ。

一方、金型メーカーの喫緊の課題となっているのはCNではなく、電気料金の高騰だ。足元では「仕事量が少ない上に電気料金が高いので、より一層経営を圧迫している」という声も挙がっている。このような現状から、エネルギー使用量削減の一環としてCNに取り組んでいる企業も少なくない。

金型新聞 2023年9月10日

関連記事

自律し、考える人材を【特集:自動車メーカーの金型づくり】

自動化と人材育成—。自動車産業に関わらず、あらゆる製造現場において共通の課題となっている。人手不足は深刻化しており、課題解消に自動化、省力化は欠かせない。いかに若手に技能を伝承していくかも喫緊の課題となっている。一方で、…

日本流のギガ確立へ【特集:ギガキャストの現在地】

自動車の構造部品を大型のダイカストマシンで一体鋳造する「ギガキャスト」。部品点数の減少など、金型づくりに大きく影響する可能性があることから注目を集めている。すでにトヨタ自動車を始め、複数の自動車や部品メーカーらが参入を表…

金型メーカー座談会 若手経営者が語る
ー業界の魅力高めるためには 第二部ー

技術と経営 両輪が必要 理念貫き外需開始 金型メーカー座談会 若手経営者が語るー業界の魅力高めるためには 第一部ー 新春座談会・第二部は「海外展開」、「金型経営に必要な要素」がテーマ。「外需を取り込む」「内需に絞る」と各…

ものつくり大学 西 直美教授に聞く<br>ダイカスト金型の未来

ものつくり大学 西 直美教授に聞く
ダイカスト金型の未来

成形技術の進化で変わる金型 構造部品など増える  電気自動車(EV)が金型づくりにも大きな影響を及ぼすことは間違いない。とりわけ、エンジンがなくなることでダイカスト型の減少を懸念する声も多い。元リョービで、日本ダイカスト…

【検証】変わる金型基金 新たな船出<br>解散後、新制度に移行

【検証】変わる金型基金 新たな船出
解散後、新制度に移行

 今年11月をめどにいったん解散し、新制度への移行を進める日本金型工業厚生年金基金(上田勝弘会長)。なぜ制度移行なのか。加入者にどんな影響があるのか。基金の存在意義や、制度移行を連載企画で検証する。1回目は年金制度の仕組…

トピックス

関連サイト