金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

APRIL

03

新聞購読のお申込み

ケイ・エス・エム 金型技術生かし、医療やロボに参入【金型の底力】

徹底して顧客の声を聞く

高温の射出成形用金型を得意とするケイ・エス・エムは医療機器分野への参入やロボット販売など事業の多角化を進めている。新事業の立ち上げで苦労する企業が多い中、成功しているのは「金型技術をコアにものづくり全体で顧客の声に応えることを追求してきた」(佐藤伊知郎常務)からだ。今後も祖業の金型を日本で作るために、顧客の声に耳を傾け続ける。

同社は佐藤常務の父、勝男氏が1995年に創業した。元金型技術者だった勝男氏の技術力で金型や成形事業で順調に拡大。佐藤常務が入社したのは、そんな拡大期にあった2003年。しかし、2年後の05年に勝男氏の急逝で事態は急変する。「全て社長任せだったため、父がいなくなったことで、不安に思う顧客や技術者を多く失った」。

医療機器に参入のきっかけとなったマウスピース

佐藤常務は急減した仕事を確保すべく奔走した。しかし現実は厳しい。それでも「何かないですか」と顧客を回り続けたところ、ある課題に気づく。メンテナンスで困る企業が多かったことだ。

「当時、海外調達を進めたユーザーは海外製の金型の補修に苦労していた。金型メーカーも補修を後回しにしていた」。そこに商機を見出し、「ユーザーや金型メーカーに『メンテの仕事をください』と依頼して回った」。

いみじくも補修は若手技術者を育てる契機にもなったという。「海外や他社の金型を直すことで、金型の構造を深く知ることができた」からだ。

自律走行型ロボットの販売も手掛ける

他社がやりたがらない補修を手掛けたことで、「競合の少ないところで戦う」という戦略にもつながっている。同社が強みとするのは200℃近い高温の難成形材用の射出用金型。高温でも5μmの精度で、カジリが出ない金型を製作できる。「手離れが悪く他社は手を出したがらない」ため、高温型は今では同社の特色にもなっている。

「第二創業」のような形で事業継承した佐藤常務だが、多角化を考え始めたのは15年頃。3Dプリンタの登場で「金型だけだと将来は厳しくなるかもしれない」と考え、新事業を模索し始めた。

佐藤 伊知郎常務

ここでもよりどころは「顧客の声」だ。福島県の21年の医療部品出荷額は255億円と日本一のため、医療機器にターゲットを設定。県内には医工連携を推進する団体が多いことから「徹底して顧客(医者)が欲しいもの」を調査した。「当社の強みは精度の良い金型を作れる金属加工とスピード。金型にこだわらず、ものづくり全体で何ができるかを考えた」。

その一つとして「内視鏡検査用飛沫防止用のマウスピース」(写真)を完成させ、参入を果たした。最近では術具なども幅広く手掛ける。医療機器分野について「ロットが小さいが、継続性が高いビジネス。いきなり高度な医療機器ではなく、簡単な『雑品』から入るのが肝だと思う」と話す。

この「雑品」を扱う流れで、飲食業向けにロボット販売も開始。ここでも顧客の声を聞き、市販の自律走行型ロボにユーザーが使いやすいように様々な樹脂部品を付加して販売している。

現在の売上構成は金型が50%、医療機器25%、ロボット関連25%程度。多角化は成功しているが「あくまで事業の幹は金型。今後も日本で金型を作り続ける」とし、これからも顧客の声に耳を傾ける考えだ。

会社の自己評価シート

医療機器参入やロボット販売などへの実績から「変化への対応力」は高いと自己評価。それらを支える「技術力」や「人材力」や「チーム力」も高い。一方で、「設備力」、「営業力」を相対的に低くみており、投資や営業強化が今後の課題と分析している。

会社概要

  • 本社: 福島県郡山市横塚2-301-1
  • 電話:024・942・1635
  • 代表者: 佐藤理恵氏
  • 創立: 1995年
  • 従業員: 17人
  • 事業内容: プラスチック金型の設計製造、医療機器設計製造、ロボット販売など。

金型新聞 2023年11月10日

関連記事

国内事業を再整備 森久保哲司氏(パンチ工業 社長)【この人に聞く】

パンチ工業(東京都品川区、03・6893・8007)は今年、2025年3月期までの中期経営計画を発表し、最重点施策として「国内事業の再整備」を掲げた。販売拠点の統廃合や、連結子会社の解散などによる経営合理化を図り、特注品…

「魅力ある組織に人は集まる 楽しく役立つ活動増やす」 東北金型工業会会長(プラモール精工社長)・脇田高志氏【鳥瞰蟻瞰】

魅力ある組織でなければ人は集まってきません。東北金型工業会をより魅力ある団体にするために、会長就任後すぐに、3つの分科会を作りました。若手が中心となって積極的に参加してもらい、勉強会などを通じ、メリットや魅力を感じてもら…

【新社長に聞く】アカマツフォーシス  稲波 孝 社長

【新社長に聞く】アカマツフォーシス 稲波 孝 社長

技術提案力磨き、生産効率高める 信頼されるパートナーに いなみ・たかし1968年生まれ、大阪府四条畷市出身。86年太成高校(現太成学院大学高校)卒、赤松合金工具に入社。2006年営業技術部長、19年総括本部長、20年12…

「『金型灼熱』の技術強みに 省エネなど製品開発」 平和電機社長・大澤孝佳氏

各種工業用ヒーターや金型均熱システムなどを手掛ける平和電機(愛知県一宮市、0586-77-4870)は独自のエンジニアリング力を強みに、金型メーカーの様々なニーズに応える。近年はSDGsなど循環型社会への貢献を目指し、新…

金属3Dの金型で革命を ムトー精工が挑むコスト削減と新価値の創造[金型の底力]

樹脂部品の金型から成形、組み立てまでを手掛けるムトー精工は金属3Dプリンタによる金型づくりを進めている。成形サイクルを上げ、コストダウンや成形機の設備削減などを狙う。さらに、他の技術と組み合わせ、付加価値の向上にもつなげ…

トピックス

関連サイト