金型や部品の造形で金属AMを活用する際、必ず指摘されるのがコスト。装置の価格はもとより、粉末材料が高価なことに加え、設計や解析などに多くの工数が発生するため、どうしても製造コストは高くなる。一方で、高い冷却効果による生産…
がんばれ!日本の金型産業特集
タムラエジア 田村 知之 社長

医療や電設用のチューブやフィルムなどのプラスチック押出金型を手掛けるタムラエジアは、高い加工技術力で顧客の信頼を得てきた会社だ。部品加工屋として創業後、ある押出機メーカーの仕事を受注してから徐々に金型加工も引き受けるようになり、15年前に押出金型に特化した。
とくに「磨き」の技術に強みをもつ。押出では、樹脂が均等に流れることが高品質な製品に繋がるため、金型の表面には高い面品位が求められる。同社では、磨き工程専用の部屋を設け、機械では追い込めない下磨きから鏡面仕上げまで幾重にも渡る工程を手作業で仕上げている。
また、もともとの部品加工屋としてのノウハウを活かして、ハステロイやインコネルなどの難削材加工ができる技術力も強みのひとつだ。
こうした高い加工技術力をもつ一方で、田村社長は「これからの時代、切粉を出しているだけでは成長できない」と危機を抱き、設計に力を入れつつある。上流工程である設計から手掛けることで、品質やコスト、スピードなどでより付加価値の高い金型を提供していく考えだ。
そのために、すべての従業員にCAD/CAMを持たせたり、三次元測定器を設備して生産管理の徹底化を図るなど、設計から組立まで一貫生産できる体制を整える。
「何を求めているか、どういうものを作れば良いかを常に考えることが大切」と話す田村社長。高い技術力と設計開発力で提案型企業を目指し、さらなるユーザーの信頼を勝ち取っていく。

付加価値の高い金型づくりをしていくために、人材は特に重要だ。人材不足が叫ばれて久しい金型業界だが、田村社長は「人が来てくれたからありがたいではなく、しっかり選ばないといけない」と採用から力を入れる。
とくに重視するのは「コミュニケーション能力」だ。提案型企業を目指す同社にとって、ただ依頼された仕事だけをこなすのではなく、顧客とコミュニケーションを取り、最適なものを作ることが不可欠だからだ。
こうした考えは、社名にも込められている。海外で「エンジニア」といえば、プロフェッショナルな技術者の称号として位置付けられている。同社でも高い技術力はもちろん、提案力や交渉力などの高い対応力も身に付けた「エンジニア」として、従来の職人像を超えた人材の育成に取り組む。
そうした目標を持つ田村社長が、社員を指導するうえで大事にしているのは、「基本的なこと以外は教えない」ことだ。「全てを教えてしまうと言われたことだけのなりがち。たとえ遠回りになったとしても、途中の風景を見ることが確実に将来の成長に繋がる」と話す。
また、社員のレベルアップを図るために、勉強会などを積極的に行い、幅広い知識を付けさせている。たとえば、製品や素材メーカーなどを招いた講演会を開き、金型づくりのヒントとなるものを学ぶ機会を設けている。社員一人一人の成長が、会社としての成長に繋がり、金型メーカーとして発展し続けることを目指す。

代表者=代表取締役 田村 知之氏
創立=1967年2月
所在地=東京都大田区東糀谷6-4-17 OTAテクノCORE101
資本金=500万円
TEL=03・5735・3501
FAX=03・5735・3502
URL=http://www.tamuraejer.com
従業員数=7人
事業内容=押出金型・異形金型・その他精密金型の設計開発、金属・非鉄金属の切削加工など
主な設備=マシニングセンタ(大阪機工など)3台、研削盤(岡本工作機械)2台、NCフライス(オークマ)1台、旋盤2台、三次元測定器(ファロー)1台など。
金型新聞 平成27年(2015年)6月4日号
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