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ユウワ 超精密×自動化で高い競争力

コネクタや医療など小型・超精密プラスチック部品の金型から成形まで手掛けるユウワ。今年3月に創業50周年を迎え、強みである超精密加工に加え、自動化技術を追求している。渡辺稔社長は「これからも日本でものづくりを続けるにはさらなる自動化が欠かせない」と話す。三菱電機と共同で取り組む、超精密加工や放電加工の自動化などを取材した。

月728時間稼働を支える三菱電機の自動化システム「ED CHANGER」

ものづくりの基本は金型、金型専業で創業

同社は1975年、渡辺社長の父である頼雄氏が電子機器部品の樹脂化が進むことに着目、金型から成形まで一貫生産を目指し、「友和金型製作所」として創業した。金型工場から始め、2年後成形工場もスタートさせた。

リレー関係の精度が必要な金型や軽薄短小化していくコネクタの金型など金型技術をコアに順調に事業を拡大してきた。2003年に中国、09年にはベトナムにも進出。グループで売上高約130億円、1200人超の規模にまで成長した。

金型から成形まで手掛ける本社工場

超精密金型技術は各国共通だが、拠点ごとで特長が異なるのが強みだ。日本は自動化、中国は自動機の開発を手掛けるほか、ベトナムは24時間稼働で、研磨機50台のマシニングセンタ(MC)、放電、ワイヤ機合わせると100台を超え、加工担当者は150人を超えるほどの生産キャパを持つ。

また、ベトナムはコネクタの組み立てのほか、19年には富士フィルムと合弁会社「FUJIFILM YUWA MEDICAL PRODUCTS VIETNAM COMPANY LIMITED」を設立し、医療関連にも進出している。

精密加工武器にすそ野広げる

現在メインに製造するのは、電子機器向けなどのコネクタや医療機器などの精密金型と部品だが、最近では顧客のすそ野を広げている。「一つの顧客層に依存していると市場が縮小した時に影響が大きい」からだ。

現在はスマホなど電子部品のコネクタのほか、光中心関連部品の分野にも取り組んでいる。最近では「成形を内製化する顧客も増えている」(渡辺社長)ことから、金型の外販を増やすなどして、自動車関連向けの部品にも受注を広げている。

幅0.05±1µmのピン/スリット加工

0.12㎜の狭ピッチコネクタ

そんな同社の強みを支えるのは1μmレベル以下の超精密微細加工と自動化技術だ。三菱電機とは共同でさまざまな技術革新を進めてきた。例えば、昨年導入した油仕様のワイヤ放電加工機「MX900」では、0.12㎜の狭ピッチコネクタを製作した(写真)。

このワークでは、0.04㎜のワイヤ線を採用。このレベルのワイヤ線では、水仕様だと電源のパワーが強く、放電ギャップが少ない油仕様の機械が必要だったという。「今後も油仕様でしかできない加工領域も狙っていく」(渡辺社長)。しかも、自動化も合わせて進めることで、月694時間の稼働時間を実現した。

0・12㎜ピッチの狭ピッチコネクタ

三菱電機とタッグで自動化

もう一つの強みは自動化技術だ。渡辺社長の持論は「プログラムの指示通り動くのだから、NC搭載機種は全て自動機」。その上で、「24時間×30日=720時間をどうすれば機械を稼働できるのか考えよう」というところから、スタートした。

まず取り組んだのが、電極製作のための切削加工。自社制作の治具や、電極や切削工具の標準化のほか、工具計測のプログラム作成を自動化するなど段取り時間を大幅に短縮。結果、稼働時間月713時間を記録した。

形彫では月728時間の稼働時間

「切削に比べ、難しかったのが、形彫りとワイヤ放電の自動化」(渡辺社長)で、この領域でも三菱電機とタッグで進めてきた。まずは形彫り放電加工。10年近く前、ワークチェンジャーの採用を検討したが「機械1台に対し、1台のワークチェンジャーでは意味がない」といったんは断念した。

しかし、1台で複数の機械に対応できる、三菱電機の自動化システム「ED CHANGER」を採用。超精密形彫放電加工機「SV8P」2台を組み合わせ、電極だけでなく、ワークの自動交換も同時に進めた結果、「31日の稼働日だったが、目標を超える728時間達成した」(写真)。しかも、加工精度は±2μm以下を実現している。

もう一つがワイヤ放電加工。「こちらは形彫り以上に厄介」だったという。「理論上、ワイヤは自動結線できれば、24時間動かすことができる。しかし、電食や部品の消耗などでメンテナンスが必要になる。メンテナンスすると職人によって機差が生じてしまう」(渡辺社長)。

0.12㎜ピッチの狭ピッチコネクタを製作した三菱電機の油仕様のワイヤ放電加工機「MX900」

自動化には、この機差を減らす必要がある。三菱電機には、メンテナンスを減らす条件を伝え、改造をしたり、消耗部品を変更したりした。1週間に数回だったメンテナンスを週一度に減らせたという。自動結線についても、主要部品を見直すなどして結線率を高めた。

こうした一連の取り組みについて、渡辺社長は「三菱電機とは、30年以上前から一緒にやってきた。これからも他社にできない自動化、超精密加工を実現するためのパートナーだ」という。

次世代型の自動化構築へ

渡辺社長は現在の日本の製造業を取り巻く環境を憂う。人・モノ・金あらゆる分野において、競争力の低下を感じているからだ。今後も人が少なくなる日本で、競争力の高いものづくりを続けていくには「自動化が欠かせない」と話し、さらなる自動化を進める考えだ。

「詳細は言えない」(渡辺社長)と笑うが、「単月では、720時間を超えるような稼働率を実現したこともある。それを安定的に、しかも柔軟に実現できるシステムを検討している」とし、自動化を武器にさらなる競争力強化を目指す。

渡辺稔社長

会社概要

  • 本社:長野県小諸市西原700–1
  • 電話:0267・25・8001
  • 代表者:渡辺稔社長
  • 従業員:1230人(連結)
  • 事業内容:プラスチック成形用金型設計・製造、プラスチック成形加工など

金型新聞 2025年4月10日

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