自動化と人材育成—。自動車産業に関わらず、あらゆる製造現場において共通の課題となっている。人手不足は深刻化しており、課題解消に自動化、省力化は欠かせない。いかに若手に技能を伝承していくかも喫緊の課題となっている。一方で、…
久野金属工業 全部署でカスタムAI実装
業務の自動化や生産性向上に
プレス金型及びプレス加工を手がける久野金属工業(愛知県常滑市、0569・43・8801)は製造、営業、業務など各部署にカスタムAIを実装し、全社的な生産性向上と現場力の底上げを進めている。これまで知識やノウハウを持つ経験者、技術者でなければ解決が難しかった課題に対し、AIが最適解にたどり着くまで伴走支援する環境を整えたことで、様々な業務の効率化・自動化を実現している。
同社は2024年にAI活用チームを立ち上げ、ChatGPTをベースに設備の稼働状況の把握や業務の標準化・マニュアル化、進捗状況の見える化を行う「IoTGO DX」を活用し、金型、営業、業務向けなど約30種類のカスタムAI(専門AI)を構築・実装。

久野功雄副社長は「当初はAIが答えを直接導き出す設計にしていたが、それでは人の考える力の低下につながる可能性がある。そこで一緒に考えながら伴走し、担当者自身が答えにたどり着けるよう支援する仕組みに置き換えた」と話す。
例えば、プレス品にバリが発生した場合、一般的に金型の摩耗が原因として想定される。しかし実際の現場では、必要な情報が十分に整理されないまま対応が進み、原因特定に時間を要することも少なくない。そこでAIは担当者に対して現状把握に必要な詳細情報を順に問いかけ、その内容に基づいて考えられる要因を選択肢として提示し確認する。担当者はそれらを一つずつ確認・熟考しながら絞り込みを進め、最適解へとたどり着く。
久野副社長は「現場で起こる課題の多くは、情報が足りない、あるいは確認すべきことに気づいていないことに起因する」と指摘。AIが広い視野で気づきを与えることで、経験の有無にかかわらず、担当者自身が問題に対応できるよう導いていく仕組みだ。
すでに導入効果も表れ始めている。従来は金型の修理や復旧に時間を要していた場面でも、短時間で最適解を導き出し、金型設計においてもAIが事前に強度不足や小型化に伴うリスクなど想定課題を抽出し、改善の方向性を示すことで、より適切な金型構造の設計を支援。これにより、トライや調整にかかる時間の短縮につながっている。
久野副社長は「AI活用の土台は出来上がりつつある。さらに活用・学習を重ねることでAIの精度が高まり、本格的なデジタルトランスフォーメーションの実現につながる」と手応えを語った。
一部では、AIが作業工程の先を予測し、自動化へ発展するケースも出始めたという。今後は社員教育をはじめ、幅広い業務へ展開を進める考えで、6月のインターモールド名古屋2026では特別講演に登壇し、AI活用の事例を紹介する。
こうしたAI活用を積み重ねた先には、工場全体を進化させるサービス「FaaS(Factory as a Service)」構想も見据える。久野副社長は「工場全体の業務を底上げするためにAI活用の土台づくりを進めてきた。今後は、その基盤を生かして新たなサービス開発にもつなげていきたい」と話し、現在販売している「IoT GO シリーズ」へのAI実装も視野に入れながら、工場の進化そのものを支える新サービスの立ち上げを目指す。
金型しんぶん2026年5月10日号
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