プレス加工メーカーの新栄工業(千葉市花見川区、043-258-2310)は2019年末に、プレス金型メーカーのアポロ工業(埼玉県吉川市)を資本提携によってグループ化した。「M&Aは事業領域の拡大や技術の強化につなげるこ…
金型メーカーで活躍する先輩からメッセージ【特集:金型の魅力知っていますか?】
金型づくりに携わるうえでどのような能力が必要なのか。新しい技術の開発で壁にぶち当たり、行き詰ることはないのか。日々の仕事の楽しさやほかには代えがたいやりがいは。金型メーカーで活躍する先輩は金型づくりとどのように向き合っているのか。7人に聞いた。
教科書にない技術いっぱい ヤマシタワークス 広報課 古賀裕子さん

金型部品の磨きから始まり、検査、機械加工、薬品金型部門などを経て、今は金型の見積業務や広報を担当しています。こうした経験を通じて思うのが、金型づくりの魅力はいろんな技術や業務に触れられることです。しかもそれぞれに奥が深い。
以前担当していた機械工程では、専用機で部品に穴をあける加工を担当していました。先輩技術者と同じ加工をしていても、先輩が自ら研いだドリルを使うとなぜかバリが出ない。検査の領域でも、こうした「教科書では絶対に教えてくれないキラリと光る技術」があちこちにあります。
こうした技術に触れ、ものづくりにハマってしまい、入社19年経ちますが毎日新鮮な気持ちで働くことができています。
無駄の削減や挑戦が実感しやすいことも魅力です。今は見積り業務を担当していますが、材料価格が高騰し、正確な見積りが難しい。エクセルを活用し、原価計算が早くできる仕組みを考え、作業が早くなったことも最近の喜びです。「無駄な作業を見つけ、分析し、改善する」ことに喜びを感じられる人は向いていると思いますね。
自由な発想力に期待 エフアンドエム 執行役員工場長 古市和人さん

金型メーカーであまり見ない特長があります。それは主力設備が5軸マシニングセンタ(MC)ということ。ミーリング加工機16台のうち10台が5軸MC。曲面やポケット、穴などの殆どを5軸MCで加工しています。
5軸は続けて金型の5面を加工でき、品質や効率を高められる。当社はその特長に着目し約20年前、5軸MCを導入しました。手探りで技能を身につけ、5軸を金型加工に活かしました。
ここ数年、私が取り組むのは新人の指導です。5軸加工は技術が確立されておらず、発想次第でより良い方法が見つかります。ですから基礎知識は教えても、私の知恵や発想を全て教えることはあまりありません。
5軸加工の固定観念がない真っ新な状態で考える。その方が今までにない新しい自由な発想が生まれる。いくつもの新しい発想をすり合わせることでさらにより良い方法が見つかると思います。
金型づくりの面白さは、どうすればより良くなるかを考えることにあると思います。トライアンドエラーを重ねて、さらなる高みを追究し続ける。そういう人は金型づくりが楽しいと思います。
狙い通りの瞬間に心躍る メイクスタート 開発技術支援部(設計)技術長 江口博保さん

私は自動車の内外装部品に使われるゴム・樹脂成形金型の設計を担当しています。業務としては、顧客との仕様の打ち合わせ、加工しやすい形状の提案、最終検査までを担っています。
仕事のやりがいは、自ら設計した金型で、狙い通りの製品が形になった瞬間にあります。自分の頭の中にあったアイデアが、目の前で「モノ」になる瞬間は、心が躍ります。顧客との信頼関係を築くことも大きなやりがいです。顧客からの要望を実現できたときはとても嬉しく、「安心して任せられる」と言っていただけたときは、何よりの励みになります。
仕事の苦労はあります。前例のない依頼に頭を悩ませることも少なくありません。しかし、その難しさに向き合い、一つずつ形にしていく過程こそが、この仕事の醍醐味だと感じています。
仕事は一朝一夕には極められません。毎日の積み重ねが、やがて大きな成果になります。私は黄綬褒章を受章しましたが、これを目標にしてきたわけではなく、日々の積み重ねの結果です。まずは今できるベストを尽くし、頑張ってください。
世界の人を虫歯から守る 武林製作所 技術部 山中慎也さん

金型の「磨き」を担当しています。神経を研ぎ澄まし、指先から砥石に力を入れて磨く。人の顔が映るくらい、まさに鏡面に仕上げます。
磨く理由は滑らかなデザインを実現するためです。当社が手掛けるのは歯ブラシのプラスチック金型。ざらつきがあると成形した歯ブラシの表面は滑らかになりません。
気をつけないといけないのが合わせ面のエッジをダラさらない(磨き過ぎない)こと。金型は2枚合わせ。合わせ面にダレがあると、成形するときに材料が流れ込み、バリができます。
歯ブラシにバリがあると口の中を傷つけます。バリができないように、鏡面に磨きながらも合わせ面のエッジを保たないといけない。
より良い方法がないかと常に考えています。砥石の番手、砥石の角度や加える圧力、磨く経路など様々な要素で仕上がりが変わる。高みを目指し探究は終わりません。
その原動力は、金型が社会を支えているという志です。歯ブラシはヘルスケアや医療で欠かせません。当社の金型が世界の人を虫歯から守っている。そんな気持ちで日々、磨いています。
ものづくりの原点経験できる 日型工業 技術開発チームリーダー 笠松士郎さん

生産管理や加工技術を手掛けるかたわら、金型の技術開発を担当していています。自動車メーカーで開発に携わっていたのですが、15年前に鋳造型メーカーの日型工業に転職しました。
少し前ですが、特殊な三次元形状の冷却部品を開発しました。鋳造金型は高温になるので、冷却が欠かせません。金型内部に穴をあけ、水を通す冷却法が一般的ですが、それだと複雑形状の金型を上手く冷やせません。その部品を使えば、自由に金型表面近くに水管を這わせることができ、高い冷却効果が得られます。
今はこの部品をホットプレス金型(高温の鋼板を金型でプレス後に、冷却することで、硬い鋼板が得られる)に適用できないか研究しています。
こうした金型構造を考えることも楽しいですが、何より「良い製品ができた」と言われることが金型の最大の魅力です。良い金型=いい製品ができることですから。
世の中の製品は金型でできており、金型はものづくりの原点。さまざまな加工技術を経験できますし、ものづくりが大好きな方は必ず楽しめる仕事だと思います。
答え導く過程が面白い 東海エンジニアリングサービス 営業・ES部 リーダー 生川遼太さん

昨年、直径40㎜のカルコゲナイドガラスレンズの金型を開発しました。カルコゲナイドは成形しにくく、それまでの最大直径は約20㎜。世界初の技術となり航空宇宙などの分野で注目されました。
当社はそうした特殊なガラスレンズの金型開発が得意です。私は金型の機能や構造を考えたり、成形解析したり、金型で量産の実験をしたり。加工を除く全ての工程を担当しています。
仕事の魅力は、論理と実験を積み上げ答えを導くことです。不良の原因は金型の構造か、成形温度か、スピードか。解決策を考え、改良し、追究する。その試行錯誤の過程が面白い。
京都大学の工学部で金属について学び、大手メーカーに就職しました。しかし、自らの手元で直接ものづくりができない縦割りの環境に物足りなさを感じ、転職先に選んだのが当社でした。
ただ、当社は中小企業。金型開発に携わるのは私ひとりです。難しい金型の開発ばかりだとマンパワーが足りません。ともに金型開発を楽しみ、チャレンジできるパートナーが欲しいです。
世の中にないもの作る 冨士ダイス 技術開発本部 材料開発部 主任 佐藤僚太さん

私は材料開発部という部署で、金型材料などの開発を担当しています。求められる特性に合わせて配合を検討し、最適な材料を開発するのが主な仕事です。
仕事のやりがいは、世の中にまだないものを生み出せることです。自分が開発した材料が実際の製品に使われていると知ったときは、少し不思議な感覚で、大きな喜びを感じました。
苦労も少なくありません。一つの材料が完成するまでには、早くても一年、長いものでは数年単位の時間がかかります。そのため、完成させるまでの課題も多いです。しかし、うまくいかない原因を分析し、さまざまなアプローチを重ねることで、課題を解決できたときには大きな達成感があります。
今後も材料開発の仕事を続け、世の中にないものを作り続けたいと考えています。
金型は、私たちが普段目にしないところで、ものづくりの根底を支えています。新しいことに挑戦したい方、ものづくりが好きな方にとって、魅力を感じる仕事だと思います。
金型しんぶん2026年9月10日号
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