管理、調達を効率化 近年の金型工場では人手不足が深刻化しており、デジタル技術の導入による製造工程や管理工程などの効率化に向けた取り組みが加速している。多くの企業がセンシング技術を活用した見える化をはじめ、ITツール導入に…
広がる微細精密の世界
インターモールド2017〜進化する金型〜
広がる微細精密の世界
面粗さRa0.01㎛以下要求
微細精密な金型を求める動きが強まってきている。電気自動車(EV)や、自動運転、安全機能の強化など自動車の高機能化で、「車の電子化」が進み、車載用電子部品やLEDなどの微細精密な分野の金型が増えつつあるからだ。加えて、医療や化学などの分野でも微細精密な金型が必要になっている。こうした需要を取り込もうと、金型メーカーは更なる微細精密な加工技術の確立に挑んでいる。
EV、自動運転…進む「車の電子化」
日本自動車部品工業会によると、2015年の電装品・電子部品の出荷額は2兆4478億円。自動車生産の増加もあるが、過去10年で3割以上も増加。なかには、ブレーキ関係の電子装置のように2倍以上になっている部品もある。
電子部品で必要になる金型の一つが、車載用センサなどに使われる半導体関連の金型だ。こうした金型を手掛ける精密プラスチック金型メーカーでは「20㎜角に、1600本ものピンを立てるものもあり、寸法精度も1~2㎛レベル」という。
車載用LEDも成長分野で微細や鏡面化が進む。ある調査によると、車載用LEDの世界市場は、20年に15年比で7割増の22億9000万ドル(約2500億円強)になるとの予想もある。LEDで必要な金型も鏡面性が求められるなど高度化している。リフレクタ金型を手掛けるメーカーでは「Ra0.01㎛以下の面粗度が求められている」という。自動車ではこうした部品以外でもレンズ用金型や、リチウムイオン電池のセパレータ金型など微細精密な分野の需要増が見込まれている。
医療や化学などの分野でも微細・精密化は広がる。その一つが医療検査分野などで使われる微小流路金型だ。この分野に挑戦するプラ型メーカーでは「要求される寸法精度は1~2㎛が当たり前だ」という。「超」が付くような微細精密分野の需要はまだ大きくないかもしれないし、「海外に流れている部分もある」(あるプラ型メーカー)というように競争は厳しい。しかし多くの金型メーカーは、将来を見据え、さらなる微細精密加工技術の確立に取り組む。
あるプラ型メーカーでは、バイトを横方向に動かすヘール加工ができる設備投資を行い、「光学系レンズの参入を狙っている」という。別のプラ型メーカーでは、医療機器の拡大に向け、医療系の産業集積が進む都市に事務所を設け、他社との連携や情報収集に力を注ぐ。
恒温室を作るメーカーも増えている。レンズ用金型を手掛けるあるプラ型メーカーは「今の精度の上を狙うには恒温室は不可欠」という。
こうした動きを反映して、生産財メーカーも微細精密向けの製品を強化している。12日に開幕するインターモールドでは、マシニングセンタ(MC)を出展する機械メーカーは11社のうち、8社が微細精密加工機を出展する予定だ。ナノレベルの面粗度を実現する加工機や、LEDのリフレクタの大型化に対応する機械などが紹介される。
MC以外でも、サブミクロンの平面度を可能にする超精密な研削盤、半導体パッケージや磨きが困難な狭小リブ加工向けの放電加工機など、微細向けの機械が目立つ。
切削工具でも鏡面加工ができるPCD工具や微細加工向け超硬エンドミル、半径5㎛のPCDボールエンドミルなど様々な微細精密加工に対応した工具が出そろう。
金型新聞 平成29年(2017年)4月12日号
関連記事
工程短縮、精度安定に利点 超高張力鋼板やガラス繊維など成形材料が高度化していることから、HRC60を超える焼入れ鋼や超硬材を使うなど金型の高硬度化が進んでいる。こうしたニーズに合わせて、高硬度材料を効率よく高精度に加工…
第1部では、必要な人材像や育成について方法について議論してもらい「顧客の要望に合わせて柔軟に考えられる人」、「社長を補佐する中核的人材」などが求められていることがわかった。一方、育成では「外部からの刺激」や「任せて、考…
多くの金型メーカーが苦慮しているのが、プログラム作成の効率化だ。ある金型メーカーの工場長は「スキルの高い技能者が必要なプログラミングは全体の3割程度。残りの7割を自動化や効率化できれば生産性が上がる」と話す。こうしたニー…
自動車向けプラスチック金型を手掛けるコヅカテクノ(名古屋市港区、052-381-2268)は3月、本社工場に太陽光パネルを設置し、稼働した。カーボンニュートラル達成に向けて、消費電力の削減を図り、2030年までに13年比…