持ち運びしやすく レーザ機の開発・販売や金型のレーザ肉盛りなどを手掛けるPCL(京都府久御山町、0774-45-2199)は、制御装置や発振器、操作パネルを分離できるレーザクリーナー「CLZ-100」を発売した。 制御装…
インターモールド2018大阪 総集編
止まらない技術革新
インターモールドでは、金型加工における新提案が多数出展。工作機械メーカーはこれまで3軸加工がメインだった金型加工を、5軸加工に変えることの強みをより具体化させ、加工実演やセミナーを通じて来場者にアピール。さらに、5軸加工機を使うことでより能力を発揮するバレル工具などの新工具、近年需要が増加している微細加工向けの加工機も多数出展された。そのほか、レーザを備えた複合加工機、レーザ加工機によるシボ加工、測定分野では光沢・鏡面ワークを高精度に測定する測定機、AI技術など最新ソフトウェアと、金型製造に関する技術進化は止まらない。
CAM操作しやすく
5軸加工
金型の5軸加工を提案する展示が多く見られた。金型メーカーで競争力強化のために5軸加工を導入する動きが広がっており、マシニングセンタ(MC)やCAD/CAM、工具メーカーは、加工精度の向上や加工プログラム作成の簡便化など、高まる需要を取り込む様々な提案を披露した。
5軸はテーブルや主軸を傾けて加工できるため、深い溝でも工具を短く保持しびびりが起きにくかったり、工具の刃の周速の速い曲面が使え、工具性能を最大限に発揮させるなど、加工品質や生産性を高めるために導入する金型メーカーが増えている。あるCAMメーカーでは、「出荷する5軸用CAMのうち、20%が金型向け」という。
今回のインターモールドでも、ヤマザキマザックがハイエンド機「UD‐400/5X」を出品し、DMG森精機は「DMU50 3rd Generation」など多彩な機種を展示。牧野フライス製作所は、高性能機「D200Z」による同時5軸で加工効率を高める方法を提案。
一方、CAMメーカーでは、3軸データを5軸データに変換できる機能など操作性を向上させ、より簡単に加工プログラムが作成できることを訴求した。オープン・マインド・テクノロジーズ・ジャパンは、5軸加工用CAMの新型「hyper MILL V2018.1」を披露。C&Gシステムズの新型「CAM‐TOOL」では変換機能を強化した。
また、MCメーカーは、工具メーカーとも協力。三菱日立ツールの6枚刃のボールエンドミル「EPHB‐PN」を使い、送り速度を上げて、従来の2~3枚刃より2~3倍に加工能率を高める方法などを紹介した。
ハイテン、熱硬化材に対応
解析
シミュレーションを採用する金型メーカーが増えている。短納期やコスト要求が厳しい中、解析を使ったトライ削減や、前倒しで不具合を解決する事前検証は一部では必須になりつつあるからだ。
加えて、新素材の登場も解析が増える要因だ。ハイテン材や炭素繊維や熱硬化性の成形が難しい材料が増えており「解析なくしては適切な成形ができない」(ある金型メーカー)ほどだ。また、解析データをデジタルで残すことで技能伝承につなげる動きもある。
インターモールドでも、樹脂やプレスはもとより、鍛造や切削など様々な解析技術が紹介された。キーワードは「早く、正確に、使いやすく」だ。
オートデスクの樹脂向けの「モールドフロー」では、材料データベースを豊富に持ち、より正確な解析結果の提供を強調した。JSOLやセイロジャパンが扱う樹脂向けの「モルデックス3D」では、数百万のエレメントをパソコン上で提供できるなど操作性の良さをアピールした。
アプライドデザインでは、プレスや鍛造向けのソフトを展示し、計算速度の早さやを使いやすさを提案した。JSOLのプレス向け解析ソフト「JSTAMP」は、仮想検討の結果をCADデータなどに出力し、そのまま対策として用いることができる機能なども紹介した。
こうした成形の解析に加え、5軸加工が増えていることから、CGTechは切削加工のシミュレーションも紹介。ナノソフトは金型の構造を丸ごと解析できるソフトなどを展示。また一部では3Dプリンタ用のシミュレーションも見られるなど、解析技術は進化とともに多様化している。
肉盛り、シボ、クリーニング
AM・レーザ
AM・レーザ技術の用途が広がっている。金属積層、肉盛り補修、クリーニング、シボ加工などで、従来工法から変わる新提案を披露した。
3種類のAM技術(マルチレーザ式、レーザ式、ワイヤアーク式)を有するヤマザキマザックはハイブリッド複合加工機「ⅤARIAXIS J-600/5X AM」で、ワイヤアークによる部分造形や補修、コーティングを披露。タイヤのゴム金型など大型の金型に対し、AM技術で肉盛りし、5軸加工で仕上げるなど効率をアピール。オークマは、レーザによる金型補修と5軸・旋削・研削工程を集約した超複合加工機「MU‐8000V LASEREX」を出展。コーティングやレーザ焼入れもできるため、1台ですべての製造工程を完結できるなど、工作機械1台の機能強化を見せた。
レーザを使ったシボ加工を披露したのはDMG森精機とGFマシニングソリューションズ。DMG森精機は「LASERTEC 45 Shape」を出展。レーザの精密度を披露し、小径工具ではできない緻密なデザインの転写を実演した。GFマシニングソリューションズの「LASER P400U」はナノ及びフェムト秒レーザを取り入れ、従来の職人によるエッチング工法で行っていたインパネのデザインなどを機械化し、技能の均一化や環境対策につなげる。
また、NKワークスのレーザクリーニング装置はブラスト加工で行っていたクリーニング(錆び取りなど)をレーザ光照射に置き変えることで、ワークを傷めず滑らかな表面に仕上げる。テクノコートは「スマートゴーグル+スマートトーチ」を使い、作業者がゴーグルに映った拡大映像で確認しつつ作業でき、大型ワークの作業など細かな対応ができる。
高い加工精度と生産性
次世代車
電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)など次世代自動車関連のワークサンプルの展示や実演が目立った。需要増加が期待されるモータコアや駆動電池用セパレータなどの金型には高い加工精度はもちろん、生産性の高さも不可欠。出展各社は様々な加工提案を披露した。
ワイヤ放電加工機メーカー各社は、モータコア金型のサンプルを展示。三菱電機は、水加工液仕様の「MPシリーズ」で加工速度を30%向上し、加工効率の向上を提案。牧野フライス製作所は、新製品の「UP6HEAT」でピッチ精度±1μm、真円度0.75μmを実現し、加工精度の高さを訴求した。
一方、測定機メーカーのカールツァイスでは、複合測定機「O‐INSPECT」でモータコアの測定実演を披露。電磁鋼板の形状を画像測定、積層後のズレをならいプローブで測定し、測定工程の短縮を提案した。
リチウムイオン電池や燃料電池に不可欠なセパレータの展示も多く見られた。岡本工作機械製作所は高精度平面研削盤「UPG‐CA1」で加工したリチウムイオン電池用セパレータの金型を展示した。セパレータは高い面粗度や平面度が要求されるため、高精度機種のニーズが高い。「この機種は今まで3カ月に1台だったが、ここ最近は1カ月に1台のペースで出荷している」(広報担当)という。
切削加工でも、ユニオンツールが工具径1㎜の小径工具で加工したセパレータ用プレス金型のサンプルを展示したほか、微細加工機メーカーの碌々産業も燃料電池用金属セパレータを展示した。
岐阜大と近大が金賞
金型づくりの技術を学ぶ学生らが設計・製作した金型を披露する「学生金型グランプリ」(主催:日本金型工業会)が4月19日、インターモールド2018の会場内で開かれ、プレス型部門で岐阜大学、プラスチック型部門で近畿大学がそれぞれ金賞に輝いた。
グランプリには、金賞の2校のほか岩手大学、大分県立工科短期大学、大阪工業大学、山形県立産業技術短期大学、大連工業大学(中国)の計7校が参加。主催者から課題として出されたPLATE(プレス型)やバックルのアウターとインナー(プラスチック型)の金型を披露した。
岐阜大学の工学部機械工学科4年生の早川昌汰さんは「解析ソフトを使って絞り込みを行った。無駄な追加加工を減らすよう努力した」、近畿大学の理工学部機械工学科創製加工学研究室の4回生松本文也さんは「設計を丁寧に行った。わからない部分は金型職人の方にアドバイスをもらった」と振り返った。
金型新聞 平成30年(2018年)5月14日号
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