金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

AUGUST

18

新聞購読のお申込み

三菱重工工作機械 佐郷昭博氏に聞く
高精度金型向けマシン
段差ゼロ、誤差ゼロへ

三菱重工工作機械が金型加工向け販売を強化している。小型機から5面加工機までラインアップを揃え、より高精度を求められている金型をターゲットに、最適ソリューションを提案する。その背景、今後の展開を佐郷昭博取締役トータルソリューション事業統括に聞いた。

三菱重工工作機械 佐郷昭博氏ー今後の日本の金型業界をどのように見ていますか。
自動車の軽量化を背景に、ハイテン材など成形が難しいプレス金型の需要が増え、今後ますます増加するでしょう。電気駆動の自動車の普及により、駆動用電池のセパレータ、モータコアといった高速・精密成形を実現する金型の需要も増加する。LEDのリフレクターやコネクター等電子部品も含め、これらは公差が厳しく高精度な金型を必要とするため、日本の金型メーカーの得意分野であり、日本の金型が必要とされます。

ー貴社のマシンは、その高精度金型の需要に応えることができる。
そうです。当社工作機械は歯車機械のほかに、建設機械、エネルギー、航空機関連など大物部品加工向けの大型汎用機械が中心でしたが、ラインアップ強化のため、2006年に加工境界面段差±2μ以下を実現する小型精密加工機「μ(マイクロ)V1」を開発。Z方向に食い込まずプログラム通りに高速回転で安定して加工できることをコンセプトにしました。独自の主軸内部の冷却と軸受への特殊ジェット潤滑により、短時間の暖機運転で主軸の熱変位を飽和安定させ、主軸が回転と停止を繰り返しても、刃先位置をμオーダーで安定させることができます。微細精密加工において当社は後発で未だに認知度が低いのは否めませんが、導入されたお客様は、精度や使い勝手にご満足頂いており、リピーターになって頂いてます。

ー「μV1」が期待に応えているということですね。
昨年は、大形高精度加工機「MVR・Fx」(門形)を投入しました。

大形の高精度金型向けに開発しました。「μV1」で確立した高精度技術を発展させ、大形門形機に初めて適応した戦略機種です。コンセプトは“ゼロへの挑戦”で、段差ゼロ、形状誤差ゼロ、手仕上ゼロを狙っています。今年度10台の販売を目指します。

ー「μV1」と同様の「主軸内部冷却機構」をはじめ数々の高精度化技術を搭載しました。
高精度ユニバーサルヘッドを開発し、「主軸内部冷却機構」を搭載しました。機械本体の物理的な熱変位を抑え込み、制御による補正では到達できない精度を実現しています。さらに、撮像式工具刃先位置測定システムを搭載すれば、工具が回転している状態でも、工具先端位置を測定することができ、徹底的に高めた機械剛性との組み合せで工具の安定状態を維持して、一段と高いレベルでの高精度加工を実現します。

昨年発売した「μV5」も「μV1」と同じ思想で開発しました。最大ワークサイズは1050×700×450㎜で、「μV1」の兄貴分になります。既存のLH250と合せて、小型から大型の金型に対応できるようライアンアップしています。今後も安心(安全)と高精度、スピードをキーワードに拡充していきます。

ー安心は大切な要素ですね。
私たちは、最も要求精度が厳しいと言われる日本の金型業界に受け入れられ、評価されることを目標としています。それには確実にお客様に喜ばれる技術開発をしていかなければなりません。そういった取り組みを続け、新しいものをご提案することで、金型業界のお役に立てると確信しています。

金型新聞 平成30年(2018年)6月8日号

関連記事

KOEI TOOL SKD61相当材の冷却水管【特集:金型づくりで広がる金属AM活用】

ダイカスト市場に参入 「始まりはプラスチック成形向けの3D冷却水管だった」と話すのはKOEI TOOL(旧ケイプラスモールドジャパン、今年4月に社名変更)のAM課の石井陽部長。同社は日本、シンガポール、マレーシア、ベトナ…

3Dプリンタ活用を支援する研究開発拠点を開設 酒井仁史氏(NTTデータザムテクノロジーズCTO)【この人に聞く】

独EOS社の金属3Dプリンタの日本代理店を務めるNTTデータ ザムテクノロジーズ(XAM)。昨夏に、大阪市内に金属3Dプリンタ15台のほか、多様な検査装置を備えた「デジタルマニファクチャリングセンター(DMC)」を開設し…

元本田技研工業 田岡秀樹氏に聞く【特集:自動車金型の未来】

電動化に3つの方向性 電動化やギガキャストで変わる自動車づくり。元本田技研工業で型技術協会の会長も務めた田岡秀樹氏は「自動車業界はゲームチェンジの局面を迎えており、破壊的なイノベーションが起きている」とみる。一方で「中小…

瑞穂工業 新社長 大澤史和氏に聞く

超硬工具や各種超硬素材の製造販売を手掛ける瑞穂工業(大阪市西淀川区、06・6471・4721)は4月、大澤史和氏が代表取締役社長に就任し、新たな船出を迎えた。同社は1944年創業以来、超硬工具や金型の製造に携わり、独自の…

【インタビュー】名古屋精密金型 ・坂元 正孝社長「工場間の連携強化へ 」

プラスチック金型を手掛ける名古屋精密金型(愛知県知多郡東浦町、0562-84-7600)は7月、坂元正孝氏が社長に就任した。同社の工場は本社、熊本、宮崎とベトナム、インドネシアの5工場で金型を製作している。金型業界を取り…

トピックス

関連サイト