金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

SEPTEMBER

08

新聞購読のお申込み

この人に聞く
東京鋲螺工機 高味寿光社長

964年生まれ、京都府出身。89年京都大学法学部卒業後、住友金属工業入社。2001年同社退社後、カルチュア・コンビニエンス・クラブに入社、06年同社退社後、スタッフサービス・インベストメント入社、同年10月東京鋲螺工機社長に就任。

国際競争に負けない型づくり

 冷間鍛造金型メーカーの東京鋲螺工機(埼玉県新座市、048・478・5081)はこの10年間で、売上規模を倍増させた。リーマンショック後の急激な落ち込みから、超硬合金の直彫り加工技術の開発や顧客の拡大、海外進出などに取り組み、ここまで成長した。「今後も国際競争に負けない金型づくりを続けていく」と話す高味寿光社長に成長の要因や現在の取り組み、今後の方向性などを聞いた。

 新社屋になってから10年が経った。

 当時はリーマンショック後でどん底だった。主要顧客であった小ネジメーカーの生産量は激減し、今も廃業が続いている。そこから立て直し、80社程度だった顧客数も3倍近くまで増加した。その要因の一つが需要先の変化だ。かつては弱電関連が大半を占めていたが、現在は自動車関連がほとんど。

 2015年に開設したタイ工場の状況は。

 立ち上げから数年は厳しい時期が続いたが、地道な営業活動の結果、数社だった顧客は十数社まで広がった。技術面でも加工精度は5μmを実現し、生産能力は月産100個ほど。標準的な金型であれば、日本と遜色ないレベルで製造できるようになった。

 超硬合金の直彫り加工にも注力してきた。

 これも成長できた要因の一つだ。直彫り加工は電極製作や磨き工程を削減できるため、放電加工に比べ加工時間を大幅に短縮でき、生産性が向上する。現在の国内の生産能力は月1000~1500個と10年前の2倍になった。ただ、加工の割合は放電加工がまだ半分ほどを占めており、深物や複雑形状など加工範囲の拡大が直彫り加工の今後の課題だ。

 現在取り組んでいることは。

 自動化だ。今後、労働人口が減少し人材不足の深刻化が予測される中、少ない人員でいかに生産力を維持できるかが課題だと考えている。将来的には現在の半分の人員でも同じ生産量をキープできるような生産体制を構築したい。

 具体的には。

 直彫り加工による自動化に加え、放電加工の自動化も進める。タイ工場では電極やワークの自動交換システムへの投資を予定している。3年以内に本格的な運用を目指し、上手くいけば国内工場にも展開するつもりだ。

 冷間鍛造金型の未来は。

 自動車が電動化や軽量化しており、当社としてはチャンスだと捉えている。電動化で電動部品が増えれば、当社が得意な電気接点の金型の需要も拡大する。また、軽量化のためにボルトを小型化するため、5㎜以下の小径が得意な当社にとっては顧客の拡大が狙える。こうした需要拡大に備えるためにも生産性のさらなる向上は不可欠だ。

 今後の海外展開は。

 タイだけでなくその他のASEAN諸国、インドにも営業拠点を設ける考えだ。当社の強みである超硬合金の加工技術力と品質の高さで、今後も国際競争に負けない金型づくりを続けていく。

金型新聞 2019年4月10日

関連記事

【ひと】明工精機代表取締役・北原収さん リーマン後に加工メーカーを立ち上げた

リーマン後に加工メーカーを立ち上げた  「日本一の賃加工屋を目指す」。リーマンショック後の2009年、世界的な不況の真っただ中に部品加工メーカーから独立。ダイセットやモールドベースなどを手掛ける明工精機を設立した。金融機…

【インタビュー】日本金型工業会会長(小出製作所社長)・小出悟氏「日本の金型の強みは細やかさと対応力」

天性の細やかさ数値で語る力が必要  経済産業省の工業統計によると、2018年の日本の金型生産額は1兆4752億円。生産量こそ中国に抜かれて久しいが、新素材の登場や部品の複合化、微細化が進み、依然として日本の高度な金型技術…

「選べる工具40万点、金型メーカーにより便利に使ってほしい」さくさく社長・溝口典宏氏

切削工具販売サイト「さくさく」は4月1日、新たに国内外メーカー約40社の商品約40万点の取り扱いを始めた。1年以内をめどに、それらの商品の性能や価格を比較し選べるようにするなど利便性を高めていく。サイトを運営する、さくさ…

学生教育でCAEを活用 岩手大学【特集:シミュレーションの使い方再発見!!】

CAEを活用しているのは企業だけではない。岩手大学では、樹脂流動解析ソフト「3DTimon」(東レエンジニアリングDソリューションズ)を学生の教育で利用している。樹脂を流す際、最適なゲート位置などを自らの勘や経験から教え…

この人に聞く
DMG森精機 森 雅彦社長

 金型の大型化ニーズが進んでいる。電気自動車の開発や環境規制により車の軽量化を図るため、大型部品のアルミ化や樹脂化、超高張力鋼板の採用が増加しているからだ。工作機械メーカーの中でも、金型の動向から大型加工機に注力し始めて…

関連サイト