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がんばれ!日本の金型産業特集
山陽精機 行本 充宏 社長
アジアで作った金型を世界へ
【技術】熱変位に取り組み、「無修正組立」の金型
「自社金型は100分の1~2㍉の寸法精度があれば十分」だと話す。
創業は1981年で樹脂金型を主流に、8年前からダイカスト金型も始める。自動車向けが主力で、ハンドル部など内装部品を手掛け、本社は開発・営業拠点とし、米国、中国天津工場(一部量産)、韓国(金型生産委託)に展開。本社工場内は常時28℃の恒温工場。特別な設備がなく、一見普通の工場だが、天井は低く、エアコン設備はないが冬近い秋でも従業員は半袖。そこに行本社長が30年試行錯誤の末行き着いた理想の工場(壁際に機械を並べないなど)があった(特許取得済)。
恒温工場にこだわる理由は、加工精度で支障になる熱変位。同社は「無修正組立」の金型を標語する。定義は構成される部品が一定寸法精度に入ること。「当社は100分の1㍉が基準」。金型組立時に微調整を行う職人技も手間、コストと考え、通常工場では5軸、複合加工機も熱変位でμ台精度は不可能とし、自社設備(3軸加工機)でできる寸法精度を確実・正確に行える工場環境と加工ノウハウにより、微調整を行わず、金型製作及び工場のランニングコストが最小限の金型を生む。
「創業時は金型精度にばらつきがあった」。そこから研究に研究を重ね、現在に辿り着き、「アジアで作り、世界へ供給する」仕組みを構築。「14年にブラジルへ1人置く」と、グローバル戦略を進める。
【人】夢は女性だけで金型を作る
「女性だけで金型を作りたい、作れると思う」と行本社長は将来の夢を語った。本社にいる従業員は約50人、うち約20人が女性社員で、全従業員の1/3が女性で占める金型企業は珍しい。理由は「金型は男性だけで作るものではない」との考えで、20人の女性社員はそれぞれ、設計もしくは機械加工など金型製作に携わる。
金型作りの基本は「平行と直角」という。材料の四角ブロックが正確に平行で直角になっていることが最低条件。作業者はそれを製造工程で正確かつ手を抜かずにできるかが問われ、「その分野では、男性より女性の方が上」と、行本社長は考える。特に最終仕上げの磨きは女性のみ。同社は焼入鋼を直彫りするため、機械加工での失敗は、女性では磨き落とせない面精度を判断基準にする。それほど女性の活躍する会社なのだ。
組織、目標達成への意識も社員で共有する。年々成長を遂げるには、全社員が同じ方向に向いていなければならない。毎月全社員が集まり、月ごとの型単価、製作時間、各部署の目標、結果など、問題点を見つけ、解決する方法を探る。
営業社員は10人と社員数からみれば多い。これも同社の特長。入念に顧客情報を調べ、開発型などは日本、以降の更新型は海外で製作し、どんどん新案件を取り込む。「我々は金型屋で、金型で稼ぐ」と気迫のこもった言葉に圧倒される。
【現場の顔】氏平 裕之取締役製造部長
人材について
「弊社は縦割り制を採用せず、多能工も意識していない。場所も田舎だけに職人もいない。だから、金型に関しては素人でも、女性でも作れるというスタンスで取り組んでいる。多能工に向いている人であれば、再度配置転換する考えだ」。
【会社メモ】
代表者=代表取締役・行本 充宏氏
本社=岡山県真庭市開田125番地
三崎工場=岡山県真庭市三崎505番5
電話=0867・52・4936
FAX=0867・52・5003
グループ会社=中環山陽精機(天津)、愛斯隆精密成型(天津)、Sanyo Seiki America(米国)、山陽貿易(韓国)
事業=ダイカスト用金型及び樹脂射出成形用金型の設計、開発及び製造
主な設備=マシニングセンタ(安田工業ほか6台)、放電加工機(ソディック)、三次元測定機(ミツトヨ)、射出成形機(日精樹脂工業、日本製鋼所)など。
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