金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

12

新聞購読のお申込み

―スペシャリスト―吉備NCグループ
極める精密放電

障害者を技術訓練

±1ミクロンの要望に応える

手掛ける領域「何でも」

経済産業省の統計によると、2013年の金型メーカーの事業所は15年前に比べ、6割強の8000社程度にまで減っている。金型の供給力低下も問題だが、それ以上に金型メーカーが困っているのが、協力先や外注先が減っていることだ。なかでも「精密加工の外注先となると余計に少ない」と嘆く声も多い。吉備NC能力開発センターを中核とする吉備NCグループは、放電加工のスペシャリストとして、精密部品に圧倒的な強みを持ち、金型メーカーのパートナーとして、複雑で高度な部品加工の要求に応えている。

金属3Dプリンタで製作したワーク

特長は±1μmの加工精度に応える加工技術もさることながら、請け負う部品の多様さだ。噴射ノズル、ガスタービンの部品、順送プレスやゴム金型部品など何でも作る。

金型部品、ノズルなど多彩

片山雅博社長も「サイズの規制がない限り、無理難題はなんでも聞く」と話す。その技術力の高さは広く認められており、大手電機メーカーや重工メーカーなど、全国から仕事を受注している。同社に放電加工機を販売するソディックの久田展生岡山営業所長は「放電のプロの我々から見ても治具の使い方など加工ノウハウは凄い」と技術の高さを認める。

放電とは別の「顔」

同社には放電加工のスペシャリスト以外にもう一つの「顔」がある。それは社名に能力開発とあるように訓練施設であることだ。同社は1982年、身体障害者に先端技術習得訓練を行うことを目的に設立された第三セクターで、「先端技術を障害者に教えるセンターとしては国内初だった」(片山社長)という。

設立時から生産加工部門と訓練部門を持つ。生産加工部門は前述のように精密加工を強みとする。一方、訓練部門は、CAD/CAM科と精密加工科に分かれており、2年間かけて障害者に先端技術を教える。これまで30年で80人以上を産業界に送り出している。

1988年には「育成した人材の雇用先も必要」との考えから、放電加工を強みとする「オーニック」を設立。その後オーニックの子会社として、磨き加工などを行う「岡山ハーモニー」を立ち上げており、グループ全体で運営を進めている。

最新の放電加工機が並ぶ工場
3Dプリンタの技術も学べる

金属3Dプリンタ導入

現在、3社合計の売上高は約4億円で収益性も高い。片山社長は「当社の目的は障害者の育成だが、当然手段としてお金も稼がなくてはならない」。第三セクターでありながら、収益性への意識が高いのも「民間企業はシビアで動きが早い。常に新しい情報や社会とダイレクトに接する必要がある」という、片山社長の言葉からもうかがえる。さらに同社の場合、そうした顧客企業は訓練生の受け入れ先ともなりえる。

最近では、金属3Dプリンタも導入し、放電や研磨だけでなく最新のものづくりを学べる体制も強化している。今後について片山社長は言う。「最先端のものづくりを学びたいという障害者を今以上に一人でも多く受け入れたい。そして、社会に出て活躍して欲しい」。

金型新聞 平成28年(2016年)2月10日号

関連記事

伊藤清光さん 進取の精神で取り組む現代の名工【ひと】 

セラミックスや焼結機械部品、超硬合金の刃先交換用チップ。これらは粉末にした材料を金型に入れ、成形機で押し固めた後に焼結する「粉末冶金」によって出来上がる。 従来の粉末成形は、成形体の外周に凹凸がついた形状の成形が難しく、…

アルファミラージュ 低価格内視鏡を金型分野に拡販【金型応援隊】

比重計の製作やスチームクリーナーなど各種機器・器材の販売を手掛けるアルファーミラージュ(大阪市都島区、06-6924-2631)はこのたび低価格工業用内視鏡「MRA‐28W」と「MRT‐40TH」の販売を開始した。 「M…

牧野フライス製作所 執行役員 高山幸久営業本部長に聞く【特集:進む設備の大型化】

大型機組立工場新設の理由 牧野フライス製作所は昨年末、山梨県富士吉田市に大型加工機の組み立て工場を新設すると発表した。12年ぶりの新工場で、総額210億円を投資し、大型加工向けを強化する。2026年初めに本格稼働する予定…

米谷製作所 メガキャスト向け超大物金型に挑む【特集:自動車金型の未来】

企業連携で金型技術確立へ EVシフトによって、需要減少が見込まれる内燃機関(ICE)部品の金型。シリンダヘッドやシリンダブロックなどのダイカスト金型を手掛ける米谷製作所はその影響を受ける1社だ。米谷強社長は「今後、内燃機…

鳥羽工産 甦れ!往年の名車たち【金型の底力】

「コロナ禍で航空機など需要が落ち込み、試作車市場も変化している」と語ったのは鳥羽工産の傍島聖雄社長。同社は金型製作(プレスや射出成形)から量産(少ロット)まで一貫生産体制を強みに、これまで自動車の試作型や試作車の製作、航…

トピックス

関連サイト