金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JULY

01

新聞購読のお申込み

JIMTOFこう見る
日本金型工業会 小出会長・平林技術委員長に聞く

IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの新技術が製造業に大きな変化をもたらそうとしている。工作機械や工具などの生産財も、これまでは難しかった精度や加工が実現できるようになるなど、金型づくりも大きく変わり始めている。こんな状況で開かれる「JIMTOF2018」。金型メーカーが注目する技術は何か。IoTをどう生かせるのか。日本金型工業会の小出悟会長と、技術委員会の平林巧造委員長に、「今回のJIMTOFをどう見るか」聞いた。

IoT、AIに注目

日本金型工業会 小出悟会長

 ー今回のJIMTOFをどうみますか。
 「つながる」が全体のテーマにもあるように、IoTや人工知能(AI)技術の進化が見どころだと思う。金型加工の現場にどこまで落とし込めるのか、どれだけ役立てるのかを見極めたい。機械だけでなく、工具や機器、ソフトなどもどのようにIoTに対応していくのかにも注目したい。

 ーなぜこうした技術が必要なのでしょう。
 金型の短納期化が進み、働き方改革で労働時間に制限があるなかで、生産性を上げるには不可欠だからだ。金型づくりは「無駄取り合戦」。工程が多岐に亘ったり、技術者のスキルの差があったりするので、各自、各工程で作りこまなければすぐに無駄が発生してしまう。難しいのがこうして発生する無駄が数値化できていないこと。あいまいな領域を数値化してくれるのがIoT技術だと思う。

  ーうまく活用すべきツールということですね。
 そうだと思う。また、IoTはAIを前提で考えるべきだろう。多様で多くのデータが集まればそれだけ有益な情報も得られ分析もできる。設計は近い将来、AIによって自動化できる時代が来るかもしれないし、工作機械も温度変化による自動補正だけでなく、工具の温度や周辺環境などを感知し、常に最適な条件で加工できるようになるかもしれない。

 ー金型づくりが標準化してしまえば差別化が図りづらくなりませんか。
 IoTやAIが示すデータを見ればこれまで気づかなかったことに気づいたり、第六感が働いたりするのではないかと思う。データを見て「ここをこうすべきだ」といったように判断することが人の役割になるのではないかと思う。

 ー求められる人材も変わってきますね。
 カンコツの世界だけではなくなっていく。変化を受け入れ、間違っててもいいので「将来こうなるのではないか」という想像力が必要になると思う。自動車業界では100年に一度の変革期と言われるが、金型もそうかもしれない。今年と来年は大きく変わらないが、10年後はガラッと変わるかもしれない。今回のJIMTOFはこうした変革期のとば口に立つ展示会になるように思う。

加工技術の進化感じたい

日本金型工業会 平林巧造技術委員長

  ー今回のJIMTOFをどうみますか。
 自動化や高能率化といったこれまでの流れに加えて、IoTの活用は大きなテーマだと思う。前回は見えない部分が多かったが、今回は具体的な利活用が提案されることを期待したい。しかし一方で、あくまで金型づくりのオプションの一つだととらえている。

 ーどういうことでしょう。
 人手不足が叫ばれる中で、IoTによる効率化はしなければいけないと思う。しかし、金型づくりの人間としてはそれだけでは面白くない。JIMTOFは加工技術の最先端の見せ場。だから、きらりと光るハードの進化を感じたいし、それを見るのが最も楽しい。この機械があるから「こんな金型ができそうだ」とか「これは将来につながるぞ」など、そうしたものを感じられるのがJIMTOFの本質だと思う。

 ーそんな中で注目する技術は。
 機上測定など計測の自動化や、レーザーなどを始めた工作機械の複合化、量産も可能になりつつある3Dプリンタの進化などに注目したい。海外の出展メーカーを見ることができるのも大きな特長で、日本製にはないようなコンセプトの機械などもみたいと思う。あとは製品のデザインに注目している。

 ーデザインですか。
 性能の良さは当然だが、見た目も重要だと思う。カッコいい機械は使う人間もその機械を大切にするし、モチベーションも上がる。カッコいいものに囲まれていれば、五感を刺激されたり、磨かれたりすることもあると思う。ワクワクする遊び心のあるデザインの機械が見たい。金型も同じで「どんな使い方をするのか」までデザインして、提案する必要があると思う。

 ーJIMTOFを教育の場とも言っていますね。
 色んなものに出会え、最新の情報技術をキャッチアップすることは刺激になる。特に工作機のオペレーションに携わる人だけでなく、設計や製造の人も行ってもらうことが大切だと考えている。設計者が切削や機械加工を学ぶことで、設計に対する考え方を見直したり、新たなヒントをつかんだりすることにつながるからだ。何より、自分で見て、自分で感じるのが一番いい勉強になる。

金型新聞 平成30年(2018年)11月1日号

関連記事

【金型応援隊】日本精密機械工作 プロに喜ばれるツールを

「徹底したプロ志向を目指した」と語るのは、日本精密機械工作の伊藤俊介社長。このほどハンドグラインダー、「リューターフレックス極 LF‐300」を発売した。 「LF‐300」は、同社の過去の人気商品「リューターフレックス」…

【新春特別インタビュー】時代をリードする8人

 「CASE」による自動車業界の大変革は金型メーカーに大きな変化を迫ってきた。そして昨年から続くコロナ禍。リモート環境への対応やデジタルツールの活用など、変化せざるを得ない状況はさらに加速している。こうした混迷の時代に合…

中村精工 DXで年間20社以上の新規開拓を実現

新たに福岡工場が稼働 射出成形事業を強化 自動車向けプラスチック金型の設計・製作を手掛ける中村精工(岐阜県岐阜市、058-388-3551)は1月、成形事業及び金型メンテナンスを行う福岡工場(福岡県飯塚市)を立ち上げ、1…

この人に聞く
沖電線 電極線事業部 吉本雅一事業部長

 沖電線(川崎市中原区、044-766-3171)は今年5月、ワイヤ放電加工機用電極線製品を全面リニューアルした。電極線全製品の真円度を現行品の4分の1に抑え、高品質化。パッケージも一新した。電極線製品をリニューアルする…

アイユーキ技研 独自の型開き制御装置を開発

アイユーキ技研は金型のロック、アンロック動作を安定して確実に行えるよう、機械式のプラスチック金型用の型開き制御装置を自社開発した。 従来のアンロック動作はスプリングに頼っており、スプリングが戻らずに爪部分が引っ掛かり、ア…

トピックス

関連サイト