研究開発が新たな道 リーマン・ショック以降需要が回復しているものの、これがいつまで続くのか。自動車の電気化やインターネットの技術革新が産業構造にどんな影響を及ぼすのか。それが、日本の金型メーカーの多くの経営者が抱く未来…
―スペシャリスト―吉備NCグループ
極める精密放電
障害者を技術訓練
±1ミクロンの要望に応える
手掛ける領域「何でも」
経済産業省の統計によると、2013年の金型メーカーの事業所は15年前に比べ、6割強の8000社程度にまで減っている。金型の供給力低下も問題だが、それ以上に金型メーカーが困っているのが、協力先や外注先が減っていることだ。なかでも「精密加工の外注先となると余計に少ない」と嘆く声も多い。吉備NC能力開発センターを中核とする吉備NCグループは、放電加工のスペシャリストとして、精密部品に圧倒的な強みを持ち、金型メーカーのパートナーとして、複雑で高度な部品加工の要求に応えている。

特長は±1μmの加工精度に応える加工技術もさることながら、請け負う部品の多様さだ。噴射ノズル、ガスタービンの部品、順送プレスやゴム金型部品など何でも作る。
片山雅博社長も「サイズの規制がない限り、無理難題はなんでも聞く」と話す。その技術力の高さは広く認められており、大手電機メーカーや重工メーカーなど、全国から仕事を受注している。同社に放電加工機を販売するソディックの久田展生岡山営業所長は「放電のプロの我々から見ても治具の使い方など加工ノウハウは凄い」と技術の高さを認める。
同社には放電加工のスペシャリスト以外にもう一つの「顔」がある。それは社名に能力開発とあるように訓練施設であることだ。同社は1982年、身体障害者に先端技術習得訓練を行うことを目的に設立された第三セクターで、「先端技術を障害者に教えるセンターとしては国内初だった」(片山社長)という。
設立時から生産加工部門と訓練部門を持つ。生産加工部門は前述のように精密加工を強みとする。一方、訓練部門は、CAD/CAM科と精密加工科に分かれており、2年間かけて障害者に先端技術を教える。これまで30年で80人以上を産業界に送り出している。
1988年には「育成した人材の雇用先も必要」との考えから、放電加工を強みとする「オーニック」を設立。その後オーニックの子会社として、磨き加工などを行う「岡山ハーモニー」を立ち上げており、グループ全体で運営を進めている。


現在、3社合計の売上高は約4億円で収益性も高い。片山社長は「当社の目的は障害者の育成だが、当然手段としてお金も稼がなくてはならない」。第三セクターでありながら、収益性への意識が高いのも「民間企業はシビアで動きが早い。常に新しい情報や社会とダイレクトに接する必要がある」という、片山社長の言葉からもうかがえる。さらに同社の場合、そうした顧客企業は訓練生の受け入れ先ともなりえる。
最近では、金属3Dプリンタも導入し、放電や研磨だけでなく最新のものづくりを学べる体制も強化している。今後について片山社長は言う。「最先端のものづくりを学びたいという障害者を今以上に一人でも多く受け入れたい。そして、社会に出て活躍して欲しい」。
金型新聞 平成28年(2016年)2月10日号
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