需給ギャップが改善し、明るさも戻り始めた金型業界。後押しの一つとなっているのが、一部で言われる金型の国内回帰だ。果たして本当に国内に回帰しているのか。どんな金型が戻っているのか。一方、ここにきて「職人」不足を危惧する金型…
がんばれ!日本の金型産業特集
吹野金型製作所 吹野 文昌 社長
微細と鏡面加工で市場開拓面粗度Ra0.05~0.02μmの加工技術
「微細加工分野において、汎用マシニングセンタで加工できる領域の限界値を目指す」というのは同社の吹野文昌社長。カメラ関係の小型プラスチック金型から創業し、その後、微細加工・鏡面加工分野を強化。焼き入れ鋼(高硬度材)やインコネルなど難削材、超硬合金などのミーリング加工による磨きレス、準磨きレスの加工技術を確立。その能力は「拡散レンズ金型」(鋼材NAK80)の最深部R0.1㎜、加工面粗さRa0.05μmや細いピンを立てた「狭ピッチ極細 削り残し加工」(鋼材マルエージング鋼)で直径0.05㎜、長さ0.45㎜、ピッチ0.25㎜などに見られる。
「京都は電子部品の金型も多く、焼き入れ鋼にも慣れており、硬い材質を削るのが得意」。設備も充実させ、安田工業製マシニングセンタ(YMC430など)やCBN工具(日進工具)、CAM(C&Gシステムズ)を導入し、日々技術強化に取り組む。もちろん設備を充実させただけでは微細加工や鏡面加工はできない。「鏡面加工で難しいのは荒加工」で、いかに最終形状に近い加工を荒加工の段階でできるかなど課題と向き合う。
次は顧客の獲得。自動車やLED関連、電子部品など微細加工や鏡面加工を必要とする部品は増えており、「テールランプの拡散レンズの引き合いなど、テスト加工依頼も増えている」。同社の加工領域は面粗度でRa0.05~0.02μmで「ナノ加工機と汎用MCの間の領域が市場」とし、その加工技術を用いた挑戦は始まったばかり。
次世代のリーダー育成を目指して

「人材での課題は次世代のリーダー育成。適材適所で新人を採用しつつ、年月をかけて育てていくしかない」。昔の金型職人は1人で図面を書き、加工して納品していた。だが、時代は移り、納期対応、価格など現実は厳しくなっている。同社の従業員は12人。分業体制を取り、工場内には各設備に専任スタッフを配置し、効率重視の業務体制を敷く。しかし、これから必要なのは金型を良く知る多能工。吹野社長は「そういう人を育てたい」と話す。
そのために採用活動に力を入れる。「基本は何もできなくてよい。大事なのはコミュニケーション能力だ」と吹野社長。金型メーカーの採用にはいくつかの特長があり、黙々と集中して作業ができる人材を登用する企業もあれば、コミュニケーションを重視する企業もある。それについて吹野社長は「コミュニケーションを上手く取れる人は現場でも先輩に尋ねながら仕事を覚え、伸びていく」と話す。
「金型を分かっていなければ商談もできない」。これからは多能工を意識して、次世代を担うリーダーを複数育てることにより、あらゆる分野に幅広く展開できるようになると考える。同社は昨年、京都ビジネス交流フェアなど各地の展示会に出展。引き合いも順調とのことだが、営業は吹野社長のみ。「金型設計を重視しながら育てる」と、金型の知識と経験、技術の分かる人材育成を急ぐ。
会社メモ
代表者=吹野 文昌社長
所在地=京都市南区久世築山町209番地
創業=1973年
電話=075・933・3817
FAX=075・934・6787
URL=http://www.fukino.co.jp
事業内容=精密プラスチック金型設計・製作、微細・超面粗度仕上げミーリング加工、難削材加工など。
従業員数=12人
主な設備=安田工業製マイクロセンタYMC430、安田工業製CNCジグボーラYBM640V3、松浦機械製作所製マシニングセンタ、ワイヤーカット放電加工機(ソディック)、放電加工機(ソディック)、平面研削盤(岡本工作機械製作所)、旋盤(DMG森精機)、測定顕微鏡(ミツトヨ)、CAD/CAM(C&Gシステムズ、コダマコーポレーション、富士通、倉敷機械)など。
金型新聞 平成28年(2016年)6月3日号
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