金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JANUARY

01

新聞購読のお申込み

―成形をゆく―
笠原成形所(新潟県)

IT活用したスマート工場

情報をリアルタイムで把握

 精密部品の射出成形を手掛ける笠原成形所(新潟県南魚沼市、025・776・2141、笠原利博社長)はIT技術を駆使した、スマートな工場づくりを進めている。その中心にあるのが経営理念にもある「21世紀型の職人」だ。その職人像とは「勘だけに頼らず理論づけができ合理的判断ができる技術者」(笠原社長)のこと。独自の手法でそうした職人を育成したり、金型の能力を最大限引き出したりするなど、IT技術を最大限活用し、21世紀型の成形メーカーを目指している。

タブレットから一目で

つながるスマート工場

 同社が強みとするのは、型締め力20~120tまでの微細精密な樹脂成形。現在は自動車関連の電装部品のほか、内視鏡関連など医療部品の成形が柱だ。金型は購入、支給合わせて年300型程度使っている。

 その中心にあるのが生産管理システム「MICS」(ムラテック情報システム)で、あらゆる情報をつなげるスマート工場の頭脳の役割を担う。受注から発注までを行う一般的なシステムにとどまらない。成形機の稼働状況、作業標準管理などを工場全体で必要な情報をリアルタイムに把握、伝達することができるようにした。

 その情報を最大限活用すべく、全員にタブレット端末を配布。製造、検査、金型保守などそれぞれが必要なデータがすべて紐づけられており、ある製品をタップすれば、図面、履歴、注意すべきポイントなどが一目でわかるようになっている。

 さらに必要な機能をカスタマイズ化し、笠原流にアレンジしている。例えば品質管理。成形品質は金型、成形機、温調機など様々な要素が複合的に絡み合う。追加した品質監視システム「MultiEDTL」(ソディック)は1ショットごとに、温度や圧力などのデータを蓄積、不良品判定にも活用している。トレーサビリティでは、生産指示書にQRコードを付け、照合精度の向上を図っている。

 成形条件の分析用にスーパーエンプラ用の成形支援システムも開発した。樹脂は同じ素材を同じ成形機、同じ条件で成形しても「重さが異なったり、製品ができなかったりすることもある」(関正隆部長)。大抵は樹脂圧を上げるか、樹脂温度を上げるかで対応するが「どちらが正解かわからない」ため、成形条件を数値化し、ベストな選択をできるようにしている。

金型能力を最大限に活用

 笠原社長は「金型を大事に使う」と話す。その意図は金型の持つ能力を最大限まで引き出すためだ。「金型は数ミクロン、最近ではナノレベルになるほど進化している。それを最大限引き出せてないのは成形メーカーの責任でもある」との思いがあるからだ。そのための工夫も徹底している。
 例えば金型の取り付け。クレーンで取り付ける際、キャビとコアの数ミクロンレベルの微妙なずれも生じる。「そのまま成形すれば製品ができても、金型に負荷をかけている」。どのくらいの負荷が金型にかかりセットされるか、正確に判断するために質量をはかるデジタルスケールを使うという。
 加えて、専用治具も開発し、取り付け時の微妙な誤差を抑えるようにしている。

笠原成形所が手掛けた精密な樹脂成形品

人材育成も笠原流

 同社では積極的に資格取得も推奨している。検査部門ではパート従業員も含めた全員が品質管理検定4級以上を取得している。製造現場であれば、射出成形技能士という風に必要な資格を明確化。
 支援も「笠原流」で行う。それが、関正隆部長らが中心となって作成した約180ページにわたる専用プログラムだ。射出成形、成形材料、成形条件の決め方、成形後の作業など全8章からなる本を作成し、教育を行う。またここも同社らしく、教育前と後での理解度も数値化。「実は曖昧だった知識がクリアになった」という声もあるなど、評判は上々だ。

小ロット化への対応カギ適正在庫を数値化

 近年同社が注力する医療機器部品は、成形点数は比較的多いが、コネクタなどと比べると大半が小ロット生産。しかも、ユーザー企業から発注計画が出ることも稀だ。
 そうなると、ある程度の在庫を持つ必要も出てくる。ここでも、MICSが活躍している。これまで直近の1年や数カ月といった出荷情報をデータ化しており、それに基づいて適正在庫を割り出している。その効果は大きい。「以前はその見込みも立たず、無駄な廃棄も出ていたが、最近ではかなり削減された」(関部長)という。
 笠原社長は「小ロット対応は今後も重要になる」とみており、ほかの取り組みも模索中だ。小ロット品では耐久性も問題なく、早く作れる可能性があることから、金属3Dプリンタによる金型製造も検討している。複数の企業とその実用化に向けて話し合いを進めているという。
 さらにMICSも進化させる予定だ。MICSを核に、品質管理、成形機、温調機などをネットワーク化し、トータルでの管理を行うほか、監視カメラによる良否確認などにもつなげ、高品質で安定した製品づくりを目指す。


会社メモ

笠原社長
笠原利博社長

本社工場=新潟県南魚沼市五日町335―1
創  業=1973年
代表者=笠原利博社長
売上高=3億9200万円(2015年度)
従業員数=50人
主な事業内容=精密プラスチック成形(型締め力20t〜120tクラス)
保有設備=プリプラ式成形機34台(ソディック)など。


金型新聞 平成28年(2016年)6月3日号

関連記事

J‐MAX 山﨑英次社長に聞く 電動化サプライヤーへの道【特集:プレス加工の未来】

自動車の電動化(EV化)に伴い、ものづくりも大きな変革期を迎えている。従来のエンジン車には搭載されなかった電動化部品の需要が高まり、新規需要の取り込みが部品メーカー各社の大きな課題となっている。その中、ハイテン材加工の車…

明輝 岩手・一関工場で挑む金型加工の効率化、高精度化【Innovation〜革新に挑む〜vol.2】

バンパーやグリルなどの自動車部品を中心に、家電製品、一般産業用品といった幅広い産業分野のプラスチック射出成形用金型を手掛ける明輝(神奈川県厚木市、046-224-2251)。同社は20年以上に渡ってMOLDINOの切削工…

三井ハイテック 人事

4月22日付 (敬称略、カッコ内旧職) 常務取締役経営企画本部長兼管理本部長(常務取締役管理本部長)三井宏蔵 取締役常勤監査等委員(常勤監査役)白川裕之 取締役常勤監査等委員(常勤監査役)久保田千秋 社外取締役監査等委員…

日本金型工業会会長・小出悟氏 産業規模の把握、人材教育、協調・協力などに注力

日本金型工業会の3期目会長留任が決まった小出悟会長(小出製作所社長)は6月9日、総会後のあいさつで抱負を語った。 小出会長は、日本の金型産業を持続可能な産業にする条件として、①金型産業ボリュームをどう考えるか②業界インフ…

モールドベース増産<サカモト・ダイテム>

モールドベース増産<サカモト・ダイテム>

MCとロボで自動生産 サカモト・ダイテム(東京都目黒区、03・3711・6570、坂本幸浩社長)はモールドベースを増産する。設備や自動化などに約1億円を投資。金型メーカーが調整不要な全加工仕様のモールドベースを増やし、金…

トピックス

関連サイト