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顧客の一歩先ゆく技術力
焼入れ鋼数ミクロンを安定ーホクト精工
がんばれ!日本の金型産業(連載シリーズ)
ホクト精工 竹森 勝彦 専務
使い勝手考慮し図面も渡す
自動車や光学部品の超精密プラスチック金型を手掛けるホクト精工では図面流出にかかる問題は存在しない。必要なら納品時に全てデータを渡してしまうからだ。「金型は商品で顧客にとっては投資。中身がブラックボックス化しているのはおかしい」(竹森勝彦専務)。同社の金型は海外で使われることも多く「補修などを考えると顧客は図面があったほうがいいに決まっている」とも話す。流出の懸念より「技術は自社で育てる部分もあるが、顧客との擦り合わせの中で揉まれてアップする」と信頼関係による技術向上を重視している。
そんな同社の強みの一つが、HRC60程度の焼入れ鋼でも数ミクロンを安定して出せる切削ノウハウ。例えば光学部品の枠の金型(写真は成形品)。10数枚のレンズを保持し、画像化させるため、同軸度10μ、真円度15μm以下の高い精度が求められる。この金型も切削で仕上げた。しかし「今や国内ではほとんどない」という。技術進化による海外移転はあり得ることで、こうした状況を乗り越えていくためには「常に顧客の一歩先を行く技術力を付けなければならない」。
最近取り組むのは、融点が高いポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂など、成形が難しい素材向けの金型だ。成形しづらい材料でも、高い寸法精度や、正確なガスベントなど高度な技術が要求される。その分、付加価値は高くなる。「金型メーカーは設備負担が大きいので規模ではなく、技術力で付加価値を上げていくことで勝負すべきだと思う」。
多能工とエキスパートのハイブリッド人材を育成
「金型の技術力は人と設備」(竹森専務)との考えから、人材育成を経営の最優先の一つに位置付けている。求める人材は、技術同様にハードルも高く、「多能工でかつマシニングや研削加工など特定分野に強いエキスパート」というハイブリッドな人材だ。育成法もそうなるように工夫している。基本路線は多能工化。入社後は順番に多くの工程を学んでいく。一定のレベルになれば「適正を見極めて、得意な分野や、やりたい分野に特化させる」という。エキスパートには、若手を付けることで、技能継承にもつなげている。
また、育成の一つとして活用しているのが国家技能検定だ。会社を挙げて積極的に取得を後押しているという。「人は自己啓発で成長するしかない。そのための空気づくりが重要だから」だ。学ぶことが当たり前の環境にいればそれが当然になる。
人材の底上げを図る一方、「経験値を高めるだけではダメ」との考えから、解析ソフトも導入し、成形条件などの検証を行うことで、理論的な部分と経験値のすり合わせを進めている。「人の経験値は時間をかければ何とかなる。それを会社の力に変えていくには、暗黙知的なものを形式知に変えていく必要があるからだ」。
竹森専務は言う。「一つ上のレベルに挑戦することはその時は難しい。けれど何度かやればそれが普通になる。ただしそれを継続させるには時間がかかるし、根気も必要。人材育成は常に先行投資だ」。
会社メモ
代表者=竹森松雄社長
資本金=1500万円
創業=1970年
従業員数=60人
本社工場=長野県千曲市大字羽尾1562
電話=026・276・2464
Fax=026・276・5647
主な業務内容=精密プラスチック金型の設計製造及び成形加工販売
設備機械=立形マシニングセンタ(MC)「YBM640」(安田工業)、「V56」(牧野フライス製作所)など4台、ワイヤカット放電加工機「MV1200R」(三菱電機)1台、NC放電加工機「EDGE2S」(牧野フライス製作所)2台、平面、成形研削盤「PSG63DX」(岡本工作機械製作所)など4台、流動解析「MoldFlow」(オートデスク)1台、三次元測定機「Crysta―ApexC」(ミツトヨ)1台、成形機「PS40E」(日精樹脂工業)など18台―など
金型新聞 平成29年(2017年)6月2日号
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