自動車の金型が試練の時を迎えている。半導体不足に端を発する新車開発の相次ぐ延期で受注が減少している。一方、電気自動車(EV)シフトが技術と産業構造に変革を迫る。生き残るカギは変化のうねりを見極め培ったノウハウや強みを生か…
【プレス型特集】
本田技研工業 田岡 秀樹氏に聞く
プレス型メーカーの目指すべき方向性
自分の強み生かす道を
本田技研工業 完成車新機種推進部 主任技師 田岡 秀樹氏に聞く
高級車か、低価格車か、2極化も
金型なくして新車開発ならず
自動運転、ライドシェア、電気自動車(EV)の進化―。自動車業界では急激な変化が起きつつある。これらがプレス型にどう影響を与えるのか。「金型の開発こそが変革を進める第一歩となる」と話す、本田技研工業の完成車新機種推進部の田岡秀樹主任技師に自動車メーカーの動向、プレス型メーカーの強みや目指すべき方向性を聞いた。
―自動車業界の変化は激しく、金型への影響を心配する声も多い。
「確かに自動運転やライドシェアなど破壊的なイノベーションが起きようとしているのは間違いない。しかし、金型技術は今以上に重要になると思う」。
―そう考える理由は。
「自動車づくりは二極化している。自動運転やEVに代表される高付加価値路線と、小型車を主とする低価格路線だ。高付加価値に目が行きがちだが、ある調査によると、2030年の生産台数は約1億2000万台に増え、EVなどを採用した高級車が今の数十万台から約3500万台に増えるといわれている。一方、小型車も約8500万台に増加する。つまり、両路線の自動車づくりが必要になる。自動車メーカーがどちらの路線を志向しても、必ず部品が必要で、それらは型屋が『できる』って言わない限りできないからだ」。
―求められる金型は。
「両者に共通しているが、特に高級化路線では炭素繊維プラスチックやアルミによる軽量化、ホットプレスなどのいわゆる最新技術を採用した金型が必要だ。この分野は各自動車メーカーもしのぎを削っているので競争も厳しい」。
「後者でより必要になるのは低価格化や開発スピードの向上につながる金型だ。安い金型ということではない。複数工程を一体化できる金型など代表だ。自動車生産は1台に約1分かかる。早く打つより1分かかっても複数工程を一回で打てる金型のほうがトータルでは安くなる。そうしたことが低価格化に対応するということだ」。
―プレス型メーカーが目指すべき方向性は。
「リーマンショックを乗り越えたメーカーは必ず、何かを『持っている』。それを明確にして、高級路線向けの金型を追求するのか、低価格向けの自動車づくりをサポートする金型を目指すのか選択すべきだと思う」。
―日本の金型メーカーの強みは。
「これまで述べたような要望を具現化できるアイデアを出せる人が多くいることだと思う。世界的には金型を熟知した人材は減ってきているので、今後専門の金型メーカーさんの知見はより重要になるはずだ」。
金型新聞 平成29年(2017年)7月4日号
関連記事
パンチ工業(東京都品川区、03・6893・8007)は今年、2025年3月期までの中期経営計画を発表し、最重点施策として「国内事業の再整備」を掲げた。販売拠点の統廃合や、連結子会社の解散などによる経営合理化を図り、特注品…
ベテランの勘・コツに頼らない部品工場を目指し、生産現場への型温・湯温の見える化の要求は高まっている。 匠ソリューションズが開発した生産中の型温・湯温見える化システム「TWINDS‐T」は、①作業を邪魔しない温度データワイ…
ベトナム人技術者の採用支援 ワンテラスは、ベトナムを中心にアジア人の機械加工、設計に特化した人材の採用支援を行う。昨年度は、168人のベトナム人らの日本企業への採用をサポートした。 高い実績を誇る理由は豊富な人材のネット…
もっと広義な意味に 緩やかな連携が進む 経営者は思考の変革を 〜M&A・企業連携〜 1959年生まれ、大阪府出身。82年サンスター技研に入社、2005年同社代表取締役、19年2月ツバメックス代表取締役に就任し、…