いかにトライ数を減らすか ―アルミ材用金型に取り組んだきっかけは。 「1988年にホンダのNSXに関わったのがきっかけ。オールアルミボディを採用した自動車で、当社では一部の金型を手掛け、量産はほぼ全てのアルミ部品の生産…
この人に聞く
碌々産業 海藤 満社長

加工技術者に新たな呼称
ミクロン台の誤差に収まる精度、鏡のように美しい仕上げ面—。こうした加工は、卓越した技術力と並々ならぬこだわりを持った技術者が高精度な機械を駆使して初めて実現する。この職人と呼ばれる人たちを「マシニングアーティスト」と称するのが、微細加工機メーカー・碌々産業の海藤満社長。「若い人が憧れる職業にしたい」として、今年2月に「マシニングアーティスト」を商標登録申請。独自の認定制度を設立し、加工技術者の地位向上に向けた取り組みを進める。狙いや今後の展開などを聞いた。
認知度・地位向上を目指す
なぜ、「マシニングアーティスト」という言葉を作ったのか。
今、我々の身近にあるスマートフォンや微細な電子機器などは、優れた加工技術者がいたからこそ生まれた。その一方で、こうした技術者は表舞台に出ることが少なく、認知度や地位があまり高くない。こうした人たちにリスペクトを表するとともに、プライドを持ってもらうために、このネーミングを作った。
ネーミングの由来は。
高精度な機械や工具、ソフトウエアを駆使し、自らの豊かな感性と創造性を働かせて微細な加工を手がける技術者は、私の目には「アーティスト」のように映る。そこに「加工」を意味する「マシニング」を組み合わせた。格好いい仕事だというイメージを発信し、若い人たちにも興味を持ってもらいたいという思いを込めて名付けた。
具体的にどんな活動をするのか。
認定制度を設ける。当社で独自に認定委員を作り、全国から毎年50人ほどの加工技術者を選定する。認定者には、認定証と記念品を贈呈する予定だ。
また、当社の静岡工場(静岡県焼津市)にあるショールームは、「MAラボ」に改称した。「マシニングアーティスト」たちが集う研究室という意味で名付け、一角には認定者のネームプレートを飾るつもりだ。
微細加工は、日本の得意分野とされている。
微細加工は、寸法精度だけでなく、面品位も求められる。鏡面性などは、見た目によるところが大きく、技術者の感性が重要。当社でも微細加工を実現する条件として、「機械」「工具」「加工環境」「ソフトウエア」に「技術者」を加えた「四位一体(よんみいったい)+one(ワン)」を提唱し、顧客に提案している。今後、次世代自動車やIoTなどで微細な部品が増え、微細加工技術者の需要は益々高まるはずだ。
今後の展開は。
まずは「マシニングアーティスト」という言葉を広めていく。ロゴやステッカーを作ったりして、認知度の向上に努める。最終的には、技能検定などと同等の価値まで引き上げたい。そして、何よりも加工技術者を志す若い人を1人でも多く増やしたい。
金型新聞2019年3月10日号
関連記事
金型溶接などを手掛ける愛知溶業(愛知県一宮市、0586・75・3112)は今年4月、溶接機メーカーや金型メーカーなどを傘下に収める持株会社「GALAXYホールディングス(HD)」を設立した。金型の溶接や製作だけでなく、レ…
企業見学会に注力 日本金型工業会東部支部の若手経営者らが集まる天青会の会長に今年5月、就任した。現場至上主義を自身のテーマとして掲げ、「今年は、工場見学会など現場に足を運ぶということをメインに活動していきたい」と意気込…
自動車のボデー部品や排気系部品など手掛けるフタバ産業は1470MPa超ハイテン材の冷間プレス部品の量産を確立、今年1月に発売した新型プリウスに採用された。先代プリウスはホットスタンプを用いた部品を採用していたが、冷間プレ…
三井精機工業(埼玉県川島町、049-297-5555)が、金型分野に注力している。今春、新型の微細加工機と、ジグ研削盤を発売。今後需要の拡大が期待される電気自動車(EV)や電子部品関連の金型加工向けを中心に売り込んでいく…


