天性の細やかさ数値で語る力が必要 経済産業省の工業統計によると、2018年の日本の金型生産額は1兆4752億円。生産量こそ中国に抜かれて久しいが、新素材の登場や部品の複合化、微細化が進み、依然として日本の高度な金型技術…
日本金型工業会 学術顧問
横田 悦二郎 氏(日本工業大学客員教授)
〜鳥瞰蟻瞰〜

コロナを好機にするには営業など中間層の変革を
ICTの活用が絶対条件
ICTの活用が絶対条件
コロナで金型業界は難しい状況にありますが、大変だと騒いだり、パラダイムシフトを心配したりしても何も生まれません。むしろ、やり方次第では、ピンチをチャンスに変えることができるのではないかと考えています。それには冷静になって、変わるもの、変わらないものを考える必要があります。
まず、変わらないものは何でしょうか。コロナでも、金型を「作る」部分は変わりません。新技術が登場し、作り方は変化しますが、本質的に鉄を削って任意の形を「作る」ことは不変です。また、自動車や家電メーカーが製品を作ることも変わらないので、量産の道具として金型を必要とする構造は変わらないでしょう。
一方、変わるのは何でしょうか。人と人の接触が最も多い、金型づくりでは中間層にあたる営業や受注のあり方だと思います。すでにユーザーが訪問制限をかける中、リモートワークが浸透し、コミュニケーションの方法は変化しています。リモートが便利だと分かれば利用が増える可能性が高い。しかし、対応次第では金型メーカーにとってチャンスになるのではないかと思います。
まず、リモートワークが広がれば営業のための事務所を持つ必要がなくなる。リモートで対応できることが増えれば、訪問回数が減り、営業コストが減らせます。マンパワーに限りがある金型メーカーは助かるはずです。
もう一つはユーザーとの関係性です。つながることが常態化すれば、打ち合わせに技術者も加わりやすくなり、顧客との距離は近くなる可能性が高い。技術者同士が直接やり取りしたり、金型図面を見ながら「ああでもない」、「こうして欲しい」とリアルタイムで話をしたりできるかもしれない。伝言ゲームが多い金型づくりでは、技術者同士が会話できるメリットが大きいのは誰もが分かるはずです。
一方で、気を付けなければならないこともあります。距離や時間の障壁がなくなるので、ユーザーとの物理的な距離は強みではなくなります。簡単につながれるので、生産途中の報告が求められたり、納期が短くなったりするかもしれない。
いずれにしても、こうした変化に対応するには「ICT技術の活用」が絶対条件になります。ホームページのようなものではなく、リアルタイムで納期や生産プロセスなどの情報を発信したり、常に技術相談に応じたりできる、ウェブ上の営業所のような仕組みを構築することが必要になるかもしれません。
コロナは金型メーカーに変化を迫りますが、やり方次第でチャンスになりえます。ただ、これまでの延長線上で考えていてはダメです。従来型の金型経営は終焉を迎えたと思ったほうがいい。今までの常識を捨てるのではなく、いったん横に置いて考える必要があると思います。
金型新聞 2020年6月4日
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