金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JANUARY

11

新聞購読のお申込み

【鳥瞰蟻瞰】碌々産業社長・海藤満氏「優れた人材の発掘と育成が新たな世界の創出につながる」

重要なのは加工技術者

優れた人材の発掘・育成が、新たな世界の創出につながる

 いまや我々の日常生活に不可欠なものとなったスマートフォンや極小な電子機器。これらは微細加工技術があったからこそ生まれました。ミクロンやナノといった精度が求められる微細加工では、機械や工具の進化も重要ですが、何より大事なのは、それらを駆使する加工技術者の存在です。

 当社は微細加工を行うマシニングセンタを製造しています。「微細加工機のリーディングカンパニー」を目指し、高精度かつ高性能な機械を提供して微細金型や微細部品の加工に貢献しています。

 しかし近年は要求精度が高度化し、機械の性能だけでその要求に応えるのが難しくなってきました。「機械」に加え、ワークを削る「工具」、加工プログラムを作る「ソフトウエア」、加工現場の「環境」を適切に組み合わせないと質の高い微細加工はできません。そこで当社は、この4つを合わせた「四位一体(よんみいったい)」での提案に注力するようになりました。

 ただ、この取り組みを進めていくと、今度はこれらを組み合わせて操る加工技術者の重要性に気付きました。微細加工は卓越した技術力と並々ならぬこだわりを持った彼らがいて初めて可能になります。その結果、現在は「四位一体」に加工技術者を加えた「四位一体+One(ワン)」というコンセプトで最先端の微細加工を提案しています。

 製造業の多くが「人材不足」を課題に挙げています。若い人材はITのような華やかな業界に行き、製造業には集まらない。また、加工技術者は表舞台に立つことが少なく、認知度や地位が高くない。もっと若い人たちが注目し、憧れる職業にするにはどうすれば良いか。そこで考えたのが、職業名を変えることでした。

 自らの豊かな感性と創造性を働かせて物を作る加工技術者の姿は、「アーティスト」そのもの。そこに「マシニング」を組み合わせて、「マシニングアーティスト」と呼ぶことにしました。格好いい仕事だというイメージが発信できれば、若い人たちも振り向いてくれるのではないか。そう考えて、ロゴやステッカー、認定制度を作り、普及活動に取り組んでいます。

 「マシニングアーティスト」に求められるものは何か。それは「データを駆使して分析できる力」です。これまでの職人は自らの手で機械や工具を操ることに長けた人でした。しかし、これからは工場のデジタル化が進み、現場に溢れるデータをいかに活用するかが重要になります。このデジタルデータを操り、微細加工を実現できる人、そして自らが得たスキルを後人に伝承できる人。これこそが新しい職人の姿ではないでしょうか。

 今後、ITやAIなどを活用することで、金属加工の生産性は飛躍的に向上します。反面、人の介在する余地が無くなり、イノベーションは起きにくくなります。加工技術でのイノベーションは感性豊かな「マシニングアーティスト」にしか起こせません。こうした人材を発掘し、育てていくことが、また新たな技術や世界を作り出すことにつながるはずです。

金型新聞 2020年8月10日

関連記事

米山金型製作所が「微細成形ラボ」を設立するワケ

微細成形ラボを設立 量産化までの支援サービスを提供 自動車や医療などの精密プラスチック射出成形用金型を手掛ける米山金型製作所は今年9月、微細成形技術が提供可能な「微細成形ラボ」を設立する。既存設備よりも大型の射出成形機を…

「金属AMはプロセスの一つ、目的は顧客の課題解決」日本精機常務・松原雅人氏【鳥瞰蟻瞰】

金型メーカーから技術を発信 粉末やレーザーなど、多くの要素を最適に制御しなければいけないため、金属3Dプリンタによる金型づくりは簡単ではありません。また、何でも作れる魔法の杖でもありません。それでも参入したのは、切削加工…

テラスレーザー 業務 広報チーム・稲葉  えいさん
女性技術者の魅力を発信する

レーザー溶接・金型補修機器メーカーのテラスレーザー(静岡県駿河区)に入社したのは2年前。企業の販路開拓支援などに携わっていた前職時代、製造業とも多く関わる中で「世の中は製造業がなければ成立しないということを肌で感じ、自分…

【新春特別インタビュー⑤】稲垣金型製作所取締役・稲垣 武洋氏「イノベーションを起こし新しい収益モデルを創る」

常識にとらわれない金型 イノベーションを起こし新しい収益モデルを創る 〜新ビジネス〜  1975年生まれ、静岡県出身。98年立命館大学卒業後、富士通に入社し、システム販売などに従事。2004年稲垣金型製作所に入社、18年…

型から成形まで一貫生産<br>コガネイモールド 村田 隆 常務

型から成形まで一貫生産
コガネイモールド 村田 隆 常務

この人に聞く2018  今年4月に樫山金型工業から社名を変更した「コガネイモールド」。携帯電話を中心としたプラスチック金型で一時代を築いた同社だったが、スマートフォンの登場によって需要が激減。しかし、一昨年に空圧機器メー…

トピックス

関連サイト