大型機組立工場新設の理由 牧野フライス製作所は昨年末、山梨県富士吉田市に大型加工機の組み立て工場を新設すると発表した。12年ぶりの新工場で、総額210億円を投資し、大型加工向けを強化する。2026年初めに本格稼働する予定…
【鳥瞰蟻瞰】碌々産業社長・海藤満氏「優れた人材の発掘と育成が新たな世界の創出につながる」

重要なのは加工技術者優れた人材の発掘・育成が、新たな世界の創出につながる
いまや我々の日常生活に不可欠なものとなったスマートフォンや極小な電子機器。これらは微細加工技術があったからこそ生まれました。ミクロンやナノといった精度が求められる微細加工では、機械や工具の進化も重要ですが、何より大事なのは、それらを駆使する加工技術者の存在です。
当社は微細加工を行うマシニングセンタを製造しています。「微細加工機のリーディングカンパニー」を目指し、高精度かつ高性能な機械を提供して微細金型や微細部品の加工に貢献しています。
しかし近年は要求精度が高度化し、機械の性能だけでその要求に応えるのが難しくなってきました。「機械」に加え、ワークを削る「工具」、加工プログラムを作る「ソフトウエア」、加工現場の「環境」を適切に組み合わせないと質の高い微細加工はできません。そこで当社は、この4つを合わせた「四位一体(よんみいったい)」での提案に注力するようになりました。
ただ、この取り組みを進めていくと、今度はこれらを組み合わせて操る加工技術者の重要性に気付きました。微細加工は卓越した技術力と並々ならぬこだわりを持った彼らがいて初めて可能になります。その結果、現在は「四位一体」に加工技術者を加えた「四位一体+One(ワン)」というコンセプトで最先端の微細加工を提案しています。
製造業の多くが「人材不足」を課題に挙げています。若い人材はITのような華やかな業界に行き、製造業には集まらない。また、加工技術者は表舞台に立つことが少なく、認知度や地位が高くない。もっと若い人たちが注目し、憧れる職業にするにはどうすれば良いか。そこで考えたのが、職業名を変えることでした。
自らの豊かな感性と創造性を働かせて物を作る加工技術者の姿は、「アーティスト」そのもの。そこに「マシニング」を組み合わせて、「マシニングアーティスト」と呼ぶことにしました。格好いい仕事だというイメージが発信できれば、若い人たちも振り向いてくれるのではないか。そう考えて、ロゴやステッカー、認定制度を作り、普及活動に取り組んでいます。
「マシニングアーティスト」に求められるものは何か。それは「データを駆使して分析できる力」です。これまでの職人は自らの手で機械や工具を操ることに長けた人でした。しかし、これからは工場のデジタル化が進み、現場に溢れるデータをいかに活用するかが重要になります。このデジタルデータを操り、微細加工を実現できる人、そして自らが得たスキルを後人に伝承できる人。これこそが新しい職人の姿ではないでしょうか。
今後、ITやAIなどを活用することで、金属加工の生産性は飛躍的に向上します。反面、人の介在する余地が無くなり、イノベーションは起きにくくなります。加工技術でのイノベーションは感性豊かな「マシニングアーティスト」にしか起こせません。こうした人材を発掘し、育てていくことが、また新たな技術や世界を作り出すことにつながるはずです。
金型新聞 2020年8月10日
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