金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

08

新聞購読のお申込み

【インタビュー】日本金型工業会会長(小出製作所社長)・小出悟氏「日本の金型の強みは細やかさと対応力」

天性の細やかさ
数値で語る力が必要

 1955年生まれ、静岡県出身。82年小出製作所入社、96年社長。82年に日本金型工業会中部支部の若手部会「イーグル会」入会。中部支部長や総務財務委員長を歴任。2017年に日本金型工業会会長就任。

 経済産業省の工業統計によると、2018年の日本の金型生産額は1兆4752億円。生産量こそ中国に抜かれて久しいが、新素材の登場や部品の複合化、微細化が進み、依然として日本の高度な金型技術へのニーズは強い。しかし、何もせずに今の地位は維持できない。今後も日本の金型が世界で求め続けられるには何が必要なのか。まず現在の立ち位置を知る必要がある。日本金型工業会の小出悟会長に日本の金型業界の強みと弱み、年内に公表する「新金型産業ビジョン」の方向性を聞いた。

日本の金型の強みは。

 型種や企業で異なるが、全体的に言えるのは仕上げや組付け能力だろう。ただ、工作機械の進化や測定技術の高度化などによって、機械で追い込める部分が増え、強みの領域は少なくなっている。当社のダイカスト型では以前は合わせに3日は掛かっていたが、今は(部品精度の向上などで)半日強で出来てしまう。それでも、仕上げや組付けは金型には不可欠だし、細やかな作業は日本人に向いていると思う。

他には。

 臨機応変な対応力だ。日本企業は総じて、顧客に無理難題をお願いされても、何とかやってしまおうとする力がある。日本人は顧客の要求に応えたいという気質が強いので、今後も対応力は強みとして残ると思う。

一方で弱みは。

 強みと表裏かもしれないが、顧客の要求に対し、収益を犠牲にして追求してしまう部分がある。対応力は強みだが、経営力というか数字に弱い。そこは改善すべきだ。

 数字は収益だけではない。暗黙知を形式知化し、数値で伝える力もそうだ。これまで日本はカンコツに頼り、経験を数値化してこなかった。熟練技能者が減っていく中で、新人技術者を数年で10年選手にしなければいけない時代になった。それにはIoT技術を活用し、暗黙知を形式知化し、数値で伝えることが必要だ。

形式知化は標準化につながり、世界中どこでも金型が作れる懸念がある。

 それは否定できない。しかし、新しい素材や技術が登場すれば、金型は変わるので、学ぶべきことや、必要なノウハウも変わる。むしろこれまでの経験を数値化し、それを基に研究すれば、新たな技術や知見が得られるかもしれない。我々はもっと前に進むべきだ。

6年ぶりに金型産業ビジョン改定します。

 大きな方向性としては政府が発表した中小企業施策で「中堅企業への成長を目指そう」と打ち出したように、金型業界もそうあるべきだと思う。それにはまず、単に金型を生産する工場から、顧客に価値を提供する金型企業に変わるべきだ。

そのためには。

 詳細はビジョンに譲るが、一つの戦術としてM&Aや連携が挙げられる。同業種で規模を拡大するだけでなく、他の型種や異業種と連携があってもいい。顧客から資本参加して頂くことがあってもいい。それぐらい劇的に変化し、顧客にとって必要な存在にならなくてはいけない。残念ながら我々はリーマンショックで変わり切れなかった。コロナ禍は我々に厳しい状況をもたらしているが、業界を変える最後の契機かもしれない。

金型新聞 2020年9月10日

関連記事

次代の人材確保するため、地域を巻き込んで金型の魅力感じてもらう 上田幸司氏(明星金属工業 代表取締役社長)【鳥瞰蟻瞰】

日本の金型の未来を担う人材。それは今、危機的状況を迎えています。少子化が進み、就職する学生の数が減り続けている。当社のある大阪府でも特に公立工業高校で定員割れが相次ぎ、数年後にも数校が廃校します。もの作りに興味を持つ高卒…

【インタビュー】京セラ 執行役員 機械工具事業本部長・長島 千里氏「微細加工市場に参入 」

大手切削工具メーカーの京セラは9月、高硬度材加工用(微細加工)のソリッドボールエンドミル「2KMB」を発売し、微細加工市場に参入した。これまで旋削チップなどを強みとしていた同社が焼入れ鋼など高硬度材を使用する微細加工市場…

【この人に聞く】ニチダイ・伊藤直紀社長「技術営業の強化に力 」

今年4月、冷間鍛造金型メーカーのニチダイは伊藤直紀氏が新社長に就任し、新たな体制で臨む。昨年、米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの影響で金型受注が低迷したが、足元の景気は回復傾向にあり、事業の成長に向けて動き始めた。そこで…

冨士ダイス 西嶋守男社長に聞く<br>世界で認知されるブランドに

冨士ダイス 西嶋守男社長に聞く
世界で認知されるブランドに

生産効率向上し、需要増に対応  耐摩耗工具メーカーとして国内トップシェアを誇る冨士ダイス。超硬合金製のダイスやロール、製缶用金型、ガラスレンズ成形用金型など耐摩耗工具に特化した事業を展開し、来年には創業70年を迎える。「…

―スペシャリスト―ミルテック<br>精密加工の何でも屋

―スペシャリスト―ミルテック
精密加工の何でも屋

五感使うものづくり 精密打抜き用プレス金型、非球面レンズ金型、二次電池用金型及び部品、三次元形状部品、精密治具―。超精密金型や部品加工のミルテックがこれまで手掛けてきた品目の一部だ。『金と銀以外何でも加工する』と話す渡邉…

トピックス

関連サイト