金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

08

新聞購読のお申込み

KMC 社長 佐藤 声喜氏
〜鳥瞰蟻瞰〜

IOTの狙いはスピード

現場の正しい情報捉え、瞬時に改善することが重要

 金型メーカーが今より儲けるためには、受注を増やすか、製造原価を下げるかの2つ。では、どうやってそれを実現するか。私は「スピード」だと考えています。早く作ることができれば、より多くの受注が取れるし、安く作ることもできる。「スピード」が全てを解決すると言っても過言ではありません。

 私は1990年、当時の上司と金型ベンチャー企業を立ち上げました。新興の金型メーカーとして、並み居る既存の金型メーカーと同じことをやっていたら、いつまで経っても追いつけない。そこで考えたのが、この「スピード」を追求した金型づくりです。

 我々は、当時の金型メーカーがやらなかった3Dデータだけで金型を作り、金型材には鉄ではなくアルミを使い、金型構造もカセット方式を採用し極限まで生産性を高めることで、通常2カ月かかっていた試作用金型を10日、究極48時間で作りました。当時、携帯電話が開発競争の真っ只中で、この「スピード」は顧客から高く評価されました。最盛期には月150型を生産していました。

 会社は、リーマン・ショックのあおりを受けて、2009年に民事再生法を申請。私も翌年に会社を去りましたが、今でも当時のやり方は間違ってなかったと多くの方から声をいただきます。

 現在は、10年に立ち上げたKMCで「金型IoT」などの製造業向けIoTソリューションとコンサルティングを手掛けています。IoTというと、生産性を向上させるために、設備の稼働率を取るだとか、ペーパーレス化を進めるだとか、色々言われていますが、真の狙いは「スピード」です。生産スピードが上がれば、おのずと生産性も向上します。

 IoTとは、生産現場にある「人(Man)」、「設備(Machine)」、「材料(Material)」、「工程(Method)」という「4M」の情報をつなげて、現場の不具合の原因を探ることです。加工の不良や設備の故障、金型の不具合や不良などは、「スピード」を阻害する無駄な要素。生産スピードを向上させるために、いかにこうした無駄を減らすか。そのための一つの解として、IoTがあります。

 一方で、IoT技術の進化によって、経営者は製造現場に行かなくてもモニタで設備の稼働状況を見られるようになりました。私はこれを「見える化の弊害」と呼んでいます。稼働率の低下や今起きている不具合は現場に行かなければ分かりません。

 IoTを導入するのは、稼働率を把握するためだけではなく、不具合を改善し、利益を上げるため。だからこそ金型経営者には、「もっと現場を見て、不具合原因は勘ではなく、デジタル情報をもとに特定し、改善につなげてください」と言いたい。

 新型コロナウイルスのまん延によって、時代が大きく変化する中、昔と同じやり方ではだめ。IoTで武装し、正しい情報を捉え、瞬時に対応・改善ができる体質に転換しなければ、これからは生き残れない。一緒に“日の丸金型”を再興させようではないか。

金型新聞 2020年9月10日

関連記事

三菱重工工作機械 佐郷昭博氏に聞く<br>高精度金型向けマシン<br>段差ゼロ、誤差ゼロへ

三菱重工工作機械 佐郷昭博氏に聞く
高精度金型向けマシン
段差ゼロ、誤差ゼロへ

三菱重工工作機械が金型加工向け販売を強化している。小型機から5面加工機までラインアップを揃え、より高精度を求められている金型をターゲットに、最適ソリューションを提案する。その背景、今後の展開を佐郷昭博取締役トータルソリュ…

真のグローバル企業に 圷祐治氏(ソディック社長)【この人に聞く】

売上高1,000億円目指す 今年3月、ソディックは、圷祐次副社長が代表取締役CEO社長執行役員に就く人事を発表した。欧米経験が長い圷社長は自身のミッションを「ソディックを真のグルーバル企業にすること」と明言する。売上高は…

マーポス 切削、プレス加工の監視システム<br>金型分野で事業領域拡大

マーポス 切削、プレス加工の監視システム
金型分野で事業領域拡大

 マーポスは1952年にイタリアで設立され、70年に日本に進出。自動車部品の計測装置や研削盤の定寸装置を始め工作機械の制御・計測装置などを手掛ける。特に金型分野ではタッチプローブでの工具やワーク計測によって金型の高精度加…

フタバ産業 超ハイテンを冷間で量産【特集:プレス加工最前線】

自動車のボデー部品や排気系部品など手掛けるフタバ産業は1470MPa超ハイテン材の冷間プレス部品の量産を確立、今年1月に発売した新型プリウスに採用された。先代プリウスはホットスタンプを用いた部品を採用していたが、冷間プレ…

【金型の底力】サムテック 結果や成果を出し切ることが重要

熱間鍛造の一貫生産 社員と共に成長へ 「挑戦は常に行っているが、挑戦すると失敗もある。それを皆で共有し、次へ進むことが重要だ」と話すのはサムテックの阪口直樹専務。熱間鍛造事業を主力に、型設計・製作、鍛造ライン(羽曳野工場…

トピックス

関連サイト