金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

APRIL

22

新聞購読のお申込み

KMC 社長 佐藤 声喜氏
〜鳥瞰蟻瞰〜

IOTの狙いはスピード

現場の正しい情報捉え、瞬時に改善することが重要

 金型メーカーが今より儲けるためには、受注を増やすか、製造原価を下げるかの2つ。では、どうやってそれを実現するか。私は「スピード」だと考えています。早く作ることができれば、より多くの受注が取れるし、安く作ることもできる。「スピード」が全てを解決すると言っても過言ではありません。

 私は1990年、当時の上司と金型ベンチャー企業を立ち上げました。新興の金型メーカーとして、並み居る既存の金型メーカーと同じことをやっていたら、いつまで経っても追いつけない。そこで考えたのが、この「スピード」を追求した金型づくりです。

 我々は、当時の金型メーカーがやらなかった3Dデータだけで金型を作り、金型材には鉄ではなくアルミを使い、金型構造もカセット方式を採用し極限まで生産性を高めることで、通常2カ月かかっていた試作用金型を10日、究極48時間で作りました。当時、携帯電話が開発競争の真っ只中で、この「スピード」は顧客から高く評価されました。最盛期には月150型を生産していました。

 会社は、リーマン・ショックのあおりを受けて、2009年に民事再生法を申請。私も翌年に会社を去りましたが、今でも当時のやり方は間違ってなかったと多くの方から声をいただきます。

 現在は、10年に立ち上げたKMCで「金型IoT」などの製造業向けIoTソリューションとコンサルティングを手掛けています。IoTというと、生産性を向上させるために、設備の稼働率を取るだとか、ペーパーレス化を進めるだとか、色々言われていますが、真の狙いは「スピード」です。生産スピードが上がれば、おのずと生産性も向上します。

 IoTとは、生産現場にある「人(Man)」、「設備(Machine)」、「材料(Material)」、「工程(Method)」という「4M」の情報をつなげて、現場の不具合の原因を探ることです。加工の不良や設備の故障、金型の不具合や不良などは、「スピード」を阻害する無駄な要素。生産スピードを向上させるために、いかにこうした無駄を減らすか。そのための一つの解として、IoTがあります。

 一方で、IoT技術の進化によって、経営者は製造現場に行かなくてもモニタで設備の稼働状況を見られるようになりました。私はこれを「見える化の弊害」と呼んでいます。稼働率の低下や今起きている不具合は現場に行かなければ分かりません。

 IoTを導入するのは、稼働率を把握するためだけではなく、不具合を改善し、利益を上げるため。だからこそ金型経営者には、「もっと現場を見て、不具合原因は勘ではなく、デジタル情報をもとに特定し、改善につなげてください」と言いたい。

 新型コロナウイルスのまん延によって、時代が大きく変化する中、昔と同じやり方ではだめ。IoTで武装し、正しい情報を捉え、瞬時に対応・改善ができる体質に転換しなければ、これからは生き残れない。一緒に“日の丸金型”を再興させようではないか。

金型新聞 2020年9月10日

関連記事

この人に聞く 2014 C&Gシステムズ 塩田 聖一社長

この人に聞く 2014 C&Gシステムズ 塩田 聖一社長

金型は成長産業 「金型は世界的には成長産業」―。そう話すのはCAD/CAMメーカー、C&Gシステムズの塩田聖一社長。コンピューターエンジニアリング(CE)とグラフィックプロダクツ(GP)の合併から4年半、年平均の成長率1…

【金型応援隊】太陽テクニカ ダメ元でも相談を

一桁ミクロンの加工精度 「マシニングで出せない精度の穴加工は、是非任せてほしい」と語るのは、長年ジグボーラー加工やジグ研削加工に携わってきた、太陽テクニカの大畠正陽社長。同社は、航空・宇宙産業の部品から工作機械の主要精密…

小林工業 佐藤正樹新社長インタビュー、利益向上し夢を持てる会社に

粉末冶金金型メーカーの小林工業(秋田県由利本荘市)は、今年の6月に社長を交代。新社長として、佐藤正樹氏が就任した。佐藤社長に今の意気込みや注力していくこと、今後の目標などを聞いた。 ―これまでの経歴を教えてください 代表…

笹山勝社長に聞く SAIMS247が目指すこと【ササヤマ challenge!Next50】

新中期経営計画「SAIMS247」。その狙い、そして目的は。笹山勝社長に聞いた。 「短納期」を強みに、海外での競争に打ち勝つ SAIMS247の3カ年の目標は金型の製作期間半減。その真の狙いは金型の競争力の再強化です。当…

ケイ・エス・エム 金型技術生かし、医療やロボに参入【金型の底力】

徹底して顧客の声を聞く 高温の射出成形用金型を得意とするケイ・エス・エムは医療機器分野への参入やロボット販売など事業の多角化を進めている。新事業の立ち上げで苦労する企業が多い中、成功しているのは「金型技術をコアにものづく…

トピックス

関連サイト