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【鳥瞰蟻瞰】福井精機工業社長・清水一蔵氏「これからの金型の価値は、生産技術支えるプロデュース力」

金型の価値が変わる

これからの価値とは、生産技術支えるプロデュース力

 高度な技能や経験、専門知識がなくても金型が作れる環境になってきました。なぜなら、これまで職人技と言われた金型加工は工作機械や切削工具などの発達によって、代替えできるようになってきたからです。それがロボットやIoT、AIの技術で、自動かつ無人で金型を作ることが可能になるかもしれません。そうなると、これまで加工技術で稼いできた金型メーカーの価値は大きく変わると思います。

 当社も創業して56年が経ちます。昔は現場のベテラン職人が独自で刃物を作るなど技能が問われましたが、今は標準品の刃物で金型を作れます。現在はまだ誰にも真似できない加工技術があり、金型の加工技術で稼ぐことはできますが、工作機械など設備関連がより高度化すれば、資本力のある企業が有利になり、今の加工による価値は失われてきます。

 では将来、金型メーカーの価値はどこにあるのでしょうか。私はプロデュース力と考えています。例えるなら広告代理店。ある企業がテレビCMを作ろうとすると、コンセプト、マーケティング、カメラマン、編集者、日程調整など膨大な作業が自社内で必要になります。コストは安くできますが、負担は大きい。ですから、広告代理店のプロデュース力に価値があります。

 金型メーカーも同じく、製品作りに必要な材料選定から金型製作、量産設備、品質管理までトータルエンジニアリングやプロデュースできれば価値を高めることができます。1社ですべて出来ないため、工程間の調整や管理能力も求められます。

 そうしたプロデュース力を高めるには技術開発と技術者の育成が必須で、開発力とは自社の得意とする技術を確立すること。当社は従来、ベアリングの樹脂保持器(リテーナー)用金型やペン軸用金型といった丸モノを中心に、電動パワーステアリング部品向け金型で実績を残してきましたが、現在は特殊技術(特許申請中)で超高分子量ポリエチレンにグリースを包有させたCIBs(キッブス)という製品を開発しています。金型技術で自由な形状にできるこの製品からはオイルが自動的に染み出すため潤滑の助けになり、無人で動く機器の摺動面などにセットすれば、メンテナンス回数を極端に低減、または無くすことも可能です。CIBsが産業に不可欠な製品になることを期待しています。

 自社の基盤技術を開発しながら、様々な技術的知識や工程間の調整役を担える人材を育成します。まずは製作工程の組立、調整、管理できる人材で、昔ながらの金型職人がITなど最新ツールを使いこなす能力です。当社も若手に現場を任せ、自己判断できる調整力や管理力について指導しています。また、他の技術も理解するため展示会の視察も促しています。エンジニアリングやプロデュース力には開発力と人材の両輪が必要になります。

 今後も金型業界の環境は大きく変わりますが、人の価値はますます高まると思います。なぜなら、知識や調整力といった人でしか出来ない無形資産があるからです。金型メーカーで働く人に求められることも変わります。それは「考える力」と「ネットワーク」。新技術もプロデュースも思考なくして生まれません。新たな分野、市場の開拓には様々な企業、人のつながりも必要です。

 将来どうなるかは誰にも分かりません。けれど私はその変化を楽しんでいます。価値が変わり、取り組むべきことが変わり、磨くべきことが変わる。その変化を恐れず、解決策を見つけ、社員全員を笑顔にするのはどうすればよいか、それを考え、実現することが私の仕事だと思っています。

金型新聞 2020年11月10日

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