昨今、顧客の課題解決につながるソリューションやサービスなどを提供する金型メーカーが増えている。なぜ、従来の金型づくりだけでなく、自社が保有する技術を生かしたソリューションや、AI・IoTを活用したサービスなどを提供するの…
次世代3次元積層技術の研究会を発足、金型への実装を目指す 吉田 佳典氏(岐阜大学 工学部教授 )【鳥瞰蟻瞰】

4月に本学にある、地域連携スマート金型技術研究センター内に「次世代3次元積層技術研究会」を立ち上げました。活動は金属3Dに関連した研究会と勉強会ですが、岐阜大が目指すのは金属3D積層技術を生かした金型づくりを社会実装することです。活動指針は「いかにものを作るか」を目的としていることが当研究会の特長と言えます。
今回の研究会への期待はセンターの名称にもある「スマート金型」抜きに語れません。2006年に始まったスマート金型の研究ですが、18年に現在の名称になった時、次のコンテンツに主要研究を設定し直しました。それは①スマート金型②AI成形③金属3D積層技術④先端材料の4つです。
そもそもスマート金型の定義とその目的は何か。私が「スマート金型1・0」と呼んでいる初期型の狙いは「不良を出す前に金型を止める」ことでした。現在の「スマート金型2・0」では、「不良が出る前にAIで検知し、成形条件を調整し、良品を生み出し続けること」を目的にしています。
これを実現するには、先の研究要素すべてが必要になります。柔軟に成形条件を変更するには、成形機にAIを実装することが求められますし、材料の特性を把握することも欠かせません。そして、それを支える高機能な金型づくりには、金属3D積層技術の活用が必要だと判断しました。
3D積層技術に限らず、いずれの研究も「社会実装」を強く意識しています。これは私の研究者としての経験にも深く関係しています。名古屋大学入学後、配属された研究室が企業連携に活発で、社会実装を意識するのが当たり前でした。岐阜大と提携しているドルトムント工科大の教授に「研究は企業に使われなければ意味がない」と指摘された時も、私にとって、何ら違和感のないことでした。
とはいえ、一足飛びに何でもできるわけではありません。まず、勉強会と研究会から始めます。勉強会の目的は「日本の3D積層造形の現在地を知る」ことです。残念ながら、欧米に比べ、日本の3D積層造形技術は遅れています。何が遅れていて、キャッチアップするには何が必要なのかなどを明らかにします。また、世界中のどこに、どのような3D積層造形技術があるのかという「マップを作ること」も目的の一つです。
一方、研究会では社会実装に向けた研究を行います。発起人はすでに手を動かし、第一線で活用しているメンバーで構成されています。造形装置のEOSジャパン、材料やコーティング技術のエリコンジャパン、ダイカスト金型で金属3D造形の実績のある豊田自動織機、同じく樹脂金型で実績のあるムトー精工、そして岐阜大です。当面はこのメンバーで研究を始めますが、将来はテーマごとに研究グループを作って拠点化することを考えています。
金属3Dプリンタは一品一様のものづくりに適しているので、当然金型にも向いています。ただ、従来部品への置き換えでは意味がない。金属3Dプリンタでしか造形できない高付加価値な領域にこそ挑むべきだと思います。まだ構想段階ですが、金型の内部に、センサそのものを造形できないかなども考えています。もう一つは時間がかかっていた、金型の補修分野などへの展開も期待できると思っています。
いずれにしても、まだ研究会も発足したばかりで、我々も徒手空拳で、手探り状態です。次回は6月26日に岐阜市内で勉強会を開きます。ご興味ある方はぜひ参加して頂き、3D積層技術の金型への実装を一緒に考えましょう。
金型新聞 2023年6月10日
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