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黒田機型製作所 金属AMで新事業【金型の底力】
プレス金型やウレタン発泡成形金型を手掛ける黒田機型製作所は今年4月、事業再構築補助金を活用し、金属3Dプリンタを導入した。高い冷却効果が求められるバイオ樹脂向けの金型開発に着手する。主力の自動車業界に加え、新たな事業の柱に育てる考え。かつて木型から金型に事業転換した時と同じく、次世代に向け、新分野の開拓に挑む。
同社は1946年、黒田隆嗣社長の祖父で宮大工だった隆政氏が創業した。木工造形に知識が深かったため、日産自動車向けの木型を手掛ける企業としてスタート。その後、木型だけにとどまらず、パネル検査用のゲージを手掛けるなど事業を拡大。「最盛期は木型メーカーとしては60人を抱えるなど、好調だった」。
とはいえ、木型は機械化やNC化の流れで減少していく。80年代後半にアルバイトとして家業を手伝っていた黒田社長は厳しい経営状況を痛感。当時の幹部社員の薦めもあり、静岡のプラスチック金型メーカーで修行し、CAD/CAMのスキルを習得した。
91年に入社してからは「何か挑戦しなければ会社がなくなる」という危機感から、ユーザーからの支援もあり、自動車パネルのトリム工程金型に参入。その後も、現在も主力の一つである、アルミ材を活用したウレタン発泡成形金型の製作を開始。のちにトリムレス発泡金型の特許も取得。こうした関連性が薄い事業の多角化について「若かったし、やるしかなかった」と笑う。
こうした事業が安定してきた中、「次」を考えざるを得なくなったのは、コロナ禍と主力の自動車業界の変化だ。「このまま引退できるかなと思っていた(苦笑)。しかし、環境変化は激しく、このままでは将来の事業継続は難しく、新たな事業の柱が必要」と判断。事業再構築補助金を活用し、ドイツEOS社の金属3Dプリンタを導入した。
ターゲットはバイオ樹脂向けの金型で、自動車に次ぐ新たな柱の構築を急ぐ。社内にバイオ樹脂に明るい人材がいたことがきっかけだが、技術的にも「バイオ樹脂は成形性が悪く、シビアな型温管理が必要。金属AMなら水管造形に対応できると思った」という。また「金属AMは『導入すれば何でもできる』夢の装置ではない。造形ノウハウが差別化要素になるのも魅力。早く参入し、ノウハウを蓄積できれば競争力の強化につながる」。
さらに、目下のところは、バイオ樹脂向け金型技術の確立が最優先ながら、金属AMを導入したことで、「次の『絵』も描けそうだ」と言う。それは既存事業の検査ゲージへの適用だ。「自動車部品形状の複雑化や難構造化で、検査ゲージの構造は複雑化していて制限も多い。将来はこの分野にも金属AMが適用できるかどうか検討したい」。
黒田社長は自社の強みについて「工程削減・工法転換の提案力」だという。「検査ゲージのユニット化や、トリム工程の切れ刃にあたるセクショナルダイの単品加工などで、お客様のトータルコスト削減を提案してきたことが評価されてきた」。
金属AM導入を契機として、バイオ樹脂向け金型の製作や工法転換を提案するなど、木型から金型に参入した時と同じく、第二の事業再編を急ぐ。
会社の自己評価シート
会社概要
- 本社: 神奈川県横浜市都筑区川和町105
- 電話: 045・931・3811
- 代表者: 黒田隆嗣氏
- 創業: 1946年
- 従業員: 45人
- 事業内容: ウレタン発泡成形金型、プレス金型、検査ゲージ、治工具の設計製作及び部品加工。
金型新聞 2023年6月10日
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