金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

AUGUST

17

新聞購読のお申込み

金型取引改善分科会会長 渡辺隆範氏に聞く 金型業界で足並みそろえ、値上げを実現【特集:どうする値上げ】

業界の弱体化は顧客にマイナス

ユーザーと金型メーカーはどちらかが欠けても成り立たない「イコールパートナー」だと訴えてきました。我々の事業を安定させるためにも、値上げは粘り強く要求していくべきで、そのためには足並みをそろえることも大切です。何より金型業界の弱体化はお客様にとってマイナスにしかならないからです。

それは数字を見ても明らかです。国内の金型事業所は90年代のピーク時の1万3000社から21年には5000社を切るまでに減っています。特に10人以下の減少が顕著で、金型の供給能力は低下しています。だから、「次の回復時には金型が供給できなくなります」と訴えています。そうなると困るのはお客様です。

とはいえ、金型の値上げは難しい。定価もなく、需給バランスによって価格が決まるからです。多段構造の取引も難しさに拍車をかけています。それでも取引適正化を訴えてきたことと、原料高の影響などから値上げに応じてくれる企業も増えています。

一方で、いまだに値下げ要求する会社や、交渉のテーブルに付いてくれない企業もあります。こうした企業にも粘り強く「利益を無視しては受注できない」と伝えることは大切です。

「予算がある」と言われることもありますが、これも本来はおかしな話。予算は顧客側の問題であって、我々は適正な価格を提示しているわけですから。取引の関係上、受け入れざるを得ないことがありますが、その場合でも主張はすべきです。

また、値上げには価格交渉力を持つことが欠かせません。私は「広げる」ことが重要だと思っています。一つは顧客層を広げること。もう一つは、金型の種類を広げること。当社は鋳造だけでなく、ダイカスト、樹脂にも挑戦しています。最後に金型以外の仕事にも広げること。ユーザーの現場には、治具などの機械加工の仕事も多くあります。金型以外の仕事をしたっていいはずです。

一方で、我々も努力はすべき点はあります。徹底した原価管理はその一つです。右肩上がりの時代は「どんぶり勘定」の企業も多く、紙で管理していたので、原価管理に甘さがあったのは否めません。顧客と交渉するためにも、原価管理の徹底は欠かせません。

最後に、何より重要なのは業界全体で足並みをそろえること。適正な競争は必要ですが、過度な競争は業界を疲弊させるだけ。足元は景気が悪く、価格競争が激化しており、足並みをそろえるのは難しい。けれど、我々の力が弱体化すれば、顧客にとってもマイナスになります。ものづくりを持続可能な産業にするために、足並みそろえて値上げを訴えましょう。

日本金型工業会 経営労務委員会 金型取引改善分科会 会長 渡辺隆範氏(日型工業社長)

金型新聞 2023年6月10日

関連記事

「ガスの知見を武器に金属AMをトータルでサポート」大陽日酸・中田竜課長[この人に聞く]

産業用ガスメーカーの大陽日酸はガスの高い知見を武器に金属AMによる金型づくりを提案している。海外製の金属AM装置販売のほか、粉末の管理、シールドガスによる水分や酸素濃度の管理、造形ノウハウまでトータルでサポートするのが特…

人が集まる場づくりを<br>金型工業会東部支部 鈴木 教義支部長(鈴木 社長)

人が集まる場づくりを
金型工業会東部支部 鈴木 教義支部長(鈴木 社長)

この人に聞く 金型の社会的価値訴え  「日本の金型業界にとって今は変化の時期だが、チャンスでもある」と話すのは、日本金型工業会の東部支部長に就いた鈴木の鈴木教義社長。好機なのは、金型の高度化が進み日本のメーカーしかできな…

金型メーカー座談会
経営者5人が語る、どうなる2015年

活路を創造、混沌に挑む  日本の金型業界にも少しずつ明るさが戻ってきた。とはいえ、受注水準はいまだリーマンショック前の8割程度だ。そんななか、日本金型工業会は「新金型産業ビジョン」を策定した。そこでは、金型業界の向かうべ…

鳥羽工産 甦れ!往年の名車たち【金型の底力】

「コロナ禍で航空機など需要が落ち込み、試作車市場も変化している」と語ったのは鳥羽工産の傍島聖雄社長。同社は金型製作(プレスや射出成形)から量産(少ロット)まで一貫生産体制を強みに、これまで自動車の試作型や試作車の製作、航…

この人に聞く
オークマ 家城 淳社長に聞く

 令和元年に新社長に就任したオークマ・家城淳社長。市場が不透明化している中、「機電情知一体」「日本で作って世界で勝つ」を掲げるオークマの今後について家城社長の思いを聞いた。  家城淳社長愛知県出身。85年大隈鉄工所(現オ…

トピックス

関連サイト